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「そんなのできるわけないでしょう! 南青山ヒルズのスペースはもう押さえちゃったしウェブ広告もこれから流すテレビCMにも日付が入っているのよ! 今すぐなんとかしてもらえないとどうにもならないでしょう。それにこのスケジュール、倉見企画さん、おたくが持ってきたものなのよ。それなのにチラシもポスターもナシなんてできるわけないでしょう!」
話し言葉の中にお姉ェ言葉が入る入谷は、若い頃から新規事業をいくつも立ち上げてきた、ベテランのベンチャー経営者だった。今回新しく立ち上げたのは化粧品事業で、大々的なお披露目をする商品発表会をする予定だった。
入谷はプロモーションにかなり力を入れており、今まで事業で得た利益の半分以上をこの事業に投資してきた。彼には事業が上手くいく確信もあったが、その条件として大々的なプロモーションが必須であったのだ。
(続く)