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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

かつて『想い』を伝えた君へ

「おっきくなったら結婚しよっ!」


 彼等の住む村のほど近く、青空が広がる草原で、金髪をたなびかせた可愛らしい幼馴染の女の子が言う。僕は躊躇いなく、彼女にこう返した。


「うん! 勿論だよ!」



◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「ふわぁああああ」


 しまった。デカイあくびをしてしまった。あいつが王都に言ってもう五年か……。いやぁ、時が過ぎるのは早いもんだ。

 あの、何年も前にした約束、幼馴染のリアと俺、クリスの小さい頃の夢。今でも鮮明に夢に見る。

 彼女は今、この村に居ない。この世界では十歳になると職種(ジョブ)と言うのを神より授けられる。そこで彼女は『剣聖』を授かった。『剣聖』は『勇者』と共に魔王を倒す存在とされている。丁度その頃、魔王が復活したと言う情報が流れた。リアが『剣聖』と分かった時の騒ぎは凄かった。そのすぐ後ろにいた俺を含め、後の奴等は放置されてた位だ。そして、当然というかなんと言うか、彼女は王都に向かう事になった。

 彼女が王都に向かう日。


「絶対、絶対に魔王を倒して戻って来るから! 待ってて!」


「うん!」


 彼女と約束を交わし、俺は彼女に髪飾りをあげた。子供ながらに精一杯働いて稼いだお金で買った、小さな宝石のついた髪飾り。それをお守りにして欲しいと。


「ありがとう……。一生、大事にするから!」


 そう言って、リアは旅立った。彼女を乗せた馬車が見えなくなるまで俺は手を振り続けた。


 とまあ、昔話はこれくらいっと。


「う〜ん、あの頃の夢見た後はいっつも昔を思い出す」


 とは言え日課は怠らない。朝、近くの森に入って魔物狩り。この森は奥に行けば行くほど魔物が強くなる。俺はいつもの様に行ける限りまで行くことにした。少しでも早く、彼女に、リアに追いつく為に。



 日課を終え、家に帰る途中、リアの両親に呼び止められた。

 何故か酷く憔悴している様だったが立ち話も何なのでと、彼らを家に招き入れる。

 俺の家族は俺が物心つく頃にはいなかった。魔物にやられたらしい。なので小さい頃より面倒を見てくれたこの二人は、親代わり同然だった。


「いきなりですまない……。実はね、娘が……リアが帰って来るらしいんだ」


「え!?」


 驚いた。まだ魔王は倒されていない。確か四天王? と呼ばれる存在の一体は討伐出来たらしいが……。


「え……っと、それは喜ばしい事では?」


「普通ならそうなんだがね……」


「何とあの子ったらね、勇者と」


「ま、待て! お前、クリスを傷付ける気か!?」


「いつまでも黙ってる訳にはいかないでしょう!?」


 あ、あぁ〜二人の口喧嘩が始まってしまった。これじゃ拉致があかん。


「あの、どんな事でも俺は受け止めますので……」


「そ、そうか。でも覚悟して聞いてくれ。あの子は……リアは勇者様と恋仲になったらしいんだ」









 リアの両親と話をした数週間後、リアが帰って来た。勇者やその他パーティメンバー五人と共に。

 何の躊躇いも無く村に入って来る一行。で、真っ直ぐ俺のいる方に向かって来た。が、村人達の媚びる様な妨害、いや、本来は逆なんだろうが彼らにとっては単なる邪魔でしか無い行動に阻害され、こっちに来れない。取り敢えずさっさと家に帰ろうとして、


「待って!」


 一人の女性に腕を掴まれた。煌めく金髪、同じく金色の瞳、以前より磨かれた、美しくなった彼女はしかし、確りと幼馴染の面影を残していて。あの頃の髪飾りは……付けていない。


「久しいな。リア」


 こうして五年ぶりに、俺は幼馴染と向かい合った。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 ああ、変わって無い。彼を見た時、真っ先にそう思った。夜の様な漆黒の髪、そして妖しく輝く紅い瞳は中性的な彼の美貌と合わさり何とも言えない色香を放っている。彼は私が帰って来た事に気付いて居ない様だ。家に帰ろうとしてしまう。

 慌てて追いかけ、「待って」と叫びながら彼を思いっきり掴んでしまった。私の握力は最早大の男の腕でも潰せる位になってしまっている。サッと青褪めたのも束の間、彼は何事も無かったかのように振り返り、


「久しいな。リア」


 そう言って来た。無意識に手加減していたのだろうか?とにかく彼を傷付けずに済んだ。……とは言えこれから彼の心を傷付ける言葉を言わないといけないようだが。

 私は、私が言わなければならない。例え、彼を傷付ける事になっても。


「あのね、私、恋人が出来たの。『勇者』のオリバーよ」


 ああ、彼を直視出来無い。どんな悲しい顔をしているのだろうか。


「ああ! 聞いたよ。おめでとう!」


「………え?」


 予想外の返答に彼を見ると、とても嬉しそうな、満面の笑みを浮かべていた。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 あれ? おかしいな。おめでとうって言ったのに何で信じられないみたいな顔してるんだ?


「……え? え? あの……? あれ……?」


 何だか困惑している様だし。


「君! 仮とは言え婚約者だったのだろう!? その態度は何なんだ!?」


 え……っと。『勇者』様、仮にそうだったとしたら貴方が恋人である事とその態度は何なんだ? と言いたい気持ちをグッと堪える。


「いえ、彼女とは別に婚約者ではありませんが」


「フン! 強がったって無駄だ! あぁ、良い事を思いついた。彼女は戦闘も激しく動くが夜も激しくてね。毎日熱い夜をーーーー」


「あのー、そう言うのは公衆の面前で話さない方が良いのでは?」


 ビシィッと固まる『勇者』一行。あ、ぷるぷる震えてる。どうしたんだろう?

 暫くぷるぷるした後、ギロッとこちらを睨みつけーーー、


「このオレを……侮辱しただと……!?」


「いえ、あれは侮辱でも何でもないんですが」


「貴………様ああああああああ!!」


「わ」


 いきなり『勇者』が突っ込んで来た。びっくりしてうっかり『勇者』の顔思いっきり殴っちゃった。大丈夫かな?

 ぶっ飛んでった『勇者』。壁にめり込み、そのままピクリとも動かない。ヤバい。回復回復。


完全回復(エクストラヒール)


 綺麗な光が『勇者』を包み込み、『勇者』の傷を完全に回復させる。とは言え直ぐには目覚め無い。暫く安静にしていないと。いやホント申し訳無い。


「え、完全回復(エクストラヒール)? な、何故聖女の私でも使えない高位魔法を………?」


「え? だって『教皇』持ってるし」


 『教皇』は高位の神聖魔法、回復魔法、結界魔法を操る職種(ジョブ)だ。攻撃力は低いが防御力は高め。


「……は? 『教皇』? あり得ん、ではこの『拳聖』のワタシですら辛うじて見る事しか出来無い『勇者』様の速度にどうやって対応出来たと?」


「え? だって『剣王』持ってるし」


 『剣王』はリアの『剣聖』の様に聖属性を纏う事は出来無いが動体視力、身体能力、剣術が『剣聖』よりも大幅に強化される。


「二つも………職種(ジョブ)を持っているだと……?」


「いや、二つだけじゃ無いが」


 他にも『愚賢者』『怪盗』『殺戮者』『暗鬼』『冥龍騎士』『獣王』『精霊術士』『屍皇』『魔導帝』『城主』を持っている。


「いやぁ自分が『教皇』じゃ無かったら自分の職種(ジョブ)一生分かんなかったとこだよ」


「「「「…………は?」」」」


 いやぁ大変だった。何せ俺の後ろの人達誰も自分の職種(ジョブ)聞く事出来なかったし。また来年一つ下の奴等と一緒に、なんて恥ずかしいし。たまたま自分で見れれば良いのに、って思ったら出来ちゃったんだよねー。人生分かんないモンだ。あ、ちゃんと後ろにいた人達のも見たよ。泣いて感謝された。やっぱ来年一つ年下の奴らと一緒に、は嫌だったみたいだ。

 と、そんな事よりも。ふと周りを見回した俺は今、やりたい事、否、やらねばならない事を発見してしまった。くっ、な、何だ……? 今までのどんな魔物討伐よりも緊張する。手が震える。呼吸が乱れる。だが、俺に逃げると言う選択肢は無い! まず『愚賢者』の能力で相手を鑑定、特徴、弱点を見る………な、わからない、だと!? だがそれでも! 『剣王』の能力で一気に加速。目にも止まらぬ速さで相手の前まで行きーーーーー彼女の前で、膝を着いた。


「一目惚れしました! 俺と付き合って下さい!」


 俺は彼女ーーー『勇者』パーティの『荷物持ち(ポーター)』の彼女に告白した。


「…………………………え?」


「「「「ええええ!?」」」」


 周りの反応など知らんとばかりに彼女に話しかける。


「あ、あの! 良ければお名前を教えて頂いても!?」


「え、えと、サラ、です……」


「お名前をお呼びしてもよろしいでしょうか?」


「は、はい」


「サラ様、俺、いえ私は貴方に一目惚れしてしまいました! 凛とした姿、美しい銀色の髪と瞳、柔らかな声色に! また、私は職業の影響か心の色を見る事ができるのですが貴方ほど美しい色を見たことが無いのです!」


「……え? この目と髪が……綺麗?」


「はい! 正直、自分の容姿は黒い髪やら血の様な目やらで不気味な印象だとは思いますがこの想い、抑えきれず。申し訳御座いません」


「い、いえそんな事は! 私なんかの事をそんなに褒めて下さるなんて……う、嬉しいです」


「……あの、その表情は、期待しても?」


「は、はい、あの……ふつつか者ですが、よろしくお願いします!」


 彼女、サラ様が返事をした瞬間村の人達から歓声が上がった。中には今日は宴だと騒ぐ人も……ってリアの両親じゃん。ウチの村人は、何か良い事があると小さな事でも祝い出す。この前はお隣のヤンチャ坊主、ヤンくんの身長がお母さんを超えたって祝ってたっけ。

 そんな村の明るいムードを、


「ふざけないで!」


 ぶった斬る少女がいた。『剣聖』だけに。違うか。


「ふざけないでよクリス、そんな子と付き合う? 私は許さない!」


 俺は彼女を背中に庇いつつ言う。


「何故? 俺の人生だ。君の許可は必要無いと思うが」


「貴方は私の事が好きなんでしょう!? 何でそんな女に!」


「……確かに、君が好きだった時期もあった。君に会えないからと王都にいる君に毎日手紙を書いた時期も。一度も返事は来なかったが」


「…………う」


「それに時は流れる物、季節は移り変わる物。君への好意は、恋情は家族への親愛へと変わった。サラ様への感情がどうなるかは分からんが……きっと、愛へと変化してくれると信じている。だからリア、君もそんな風に思える相手を見つけるべきだ」


 うむ、説教臭い。リアはなんか泣き崩れてるし、他の『勇者』パーティのメンバー(『勇者』を除く)も何やら考え込んでるし。


「よし、ではサラ様。我々の新居を創りませんか?」


「し、新居って……。い、いくらかかるか……」


「あ、ご心配なく。『城主』で簡単な城くらいなら創れます」


「ええ!?」


 ……その後、『勇者』パーティから脱退したサラとクリスは末永く、幸せに暮らしたと言う。





 余談だが、サラを性処理に使おうとした挙げ句、断られた腹いせに薄汚い小娘、灰色で不気味と罵っていた『勇者』オリバーはそれを知り激怒したクリスと決闘。当然あっさり敗北した。

 『勇者』パーティはその後解散、クリスの言葉に当初『勇者』の愛人だった『拳聖』『大賢者』『聖女』も思う所があったのか同時に脱退。今は三人で活動中の様だ。

 リアは失ってから思い出したクリスとの大事な約束に涙したが少しずつ前を向く事が出来る様になって来た様だ。オリバーとは別れた。

 オリバーはかつての栄光が忘れられず夜な夜な色街に行っては稼いだお金を浪費する生活を送っていたが国によって最前線へ。その後、戦死した。





「あ……魔王、どうしましょう」


「あ、俺倒してきましょうか?」


「そんな無茶……じゃ無さそうですね」






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

『愚賢者』最上位の鑑定能力を持つ。見るだけで特徴や弱点だけでなく心もある程度読める。


『怪盗』盗賊系最上位。神の武具すら奪い、扱える。スキルを奪う事も可能。


『殺戮者』格闘系最上位。自身の肉体を強靭な武器に変え、触れた位置に魔力による衝撃波を放てる。対人特化。


『暗鬼』隠者系最上位。姿、気配、音、魔力。一切を表に出さず行動出来る。


『冥龍騎士』騎士系最上位。暗黒魔法や近接戦闘、竜を召喚、操作するなど多彩。


『獣王』テイマー系最上位。自身に神獣の力を纏わせる事が出来る。クリスは4体まで可能。


『精霊術士』支援術士系最上位。精霊王まで召喚、使役出来る。


『屍皇』死霊術師系最上位。大量のアンデットを使役出来る。軍団並みの数になる。


『魔導帝』魔術師系最上位。全属性の高位魔法を扱える。日常生活にも便利。


『城主』非戦闘系最上位。その場で一瞬で城を制作可能。一夜城ならぬ一瞬城。城の周辺の土地を比較的自由に改良出来る。

家具等もパパッと作れてしまう。作れない物は、あまりない。





読んでいただきありがとうございました!

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