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八十一話 エピローグ~四周目の結果



 ウェスターでは勇者と言えば恐れられるものと成り果てていた。マギたちが町に入っても喜んで迎える者は無く、みんな遠巻きにしてチラリと見る程度だった。


 思わず宿屋に引き籠もりたくなるがポーション屋には寄った。やはり品不足なのは変わらずで、たくさんのポーションを卸してあげたこともあり、ポーション屋の店主には存外に感謝されて話も聞くことができた。


「勇者様が金を無心しているので徴収するとチンピラ共は言っていますが、勇者様がそのようなことをする訳がない。大方、チンピラ共の方から取り入ろうとして資金を集めているのか、さもなければ()()にされているのでしょうね。私は勇者様を信じます」


 外では邪険にされた中で、こんな風に真っ直ぐな瞳で訴えてくれるのは嬉しいが、真実はそんなに綺麗じゃない。


「勇者と一括りに言っても、俺以外にも四人もいるんだ。それぞれ一筋縄ではいかない者たちだから、勇者の名だけであまり信じ過ぎても良くないぞ」


「そうなんですか!? 私は他の勇者様とは面識がないので……。そう言えば、以前に町長が見慣れぬ黒尽くめの男をえらく丁寧に門まで見送っていましたが。もしかしたら、あの人が……?」


「ああ、多分それだな。他には見かけてないか?」


「すみません。私にはちょっとわかりませんね」


 盗賊は前の世界でもマフィアの組織の一員っぽかったので、こちらも何か関わりがあるのではとも考えたが、今回すれ違う前にもウェスターを素通りしていたし奴は関係していないのかもしれない。領主たちはわからない。金くらい無心していても不思議じゃないと思ったが……。


 マギには無関心なあの町長がわざわざ門まで送っていたと言うのなら、やはり奴隷商の奴が何やら良からぬことをしているのだろう。


 マギは不安に駆られるが、何をしているのかわからないので動きようもない。この町の町長にはマギが注意を呼びかけたところで相手にされないし、それどころかすでに向こうの手の内にいる可能性が高い。


 心配ではあるが何もできないまま旅を続けるしかなかった。


 エンタの町も相変わらず狂ったように騒がしく、尚更にマギの無力感を煽ってくる。


「結局、町長や町の人の協力がなければ、俺ひとりじゃ何もできないんだよな……」


『他の町ではご主人様がんばってるにゃ』


『何もかも上手くはいきませんよ。やれることを少しずつやっていくしかないのでは?』


『そうよ。この町でもたくさんのポーションを売ってあげたんだし、ご主人様はやれることはやっているわ。じゅうぶんよ』


『主殿ひとりでできなくても良いのだ。東側の町で相談してみればいいのではないか?』


 仲間たちが落ち込むマギを慰めてくれる。ドンクまでまともなアドバイスをくれていた。


「そうだな……。みんなありがとう。ひとりでうじうじ悩んでいてもどうにもならないんだし、アレクシスさんやセバスさん、アマデウスさんやパンタルのおやじさんに頼ってみるよ。……その前に王城だな」




 そうして、いよいよ四回目のゴールとなる王城にやって来た。城下町に入るとすぐに教会に向かい、仲間たちはシスター・アンナに預けてきた。


「今回は何を言われるのかな……。嫌味か、馬鹿にされるか。はああ、王様もそんな場合じゃないだろうに。偉い人って暇なのかな?」


 行きがけに立ち寄ったポーション屋では、またまた不穏なニュースを耳にしてしまった。


「薬師様……!! 良いところに来てくださいました! ポーションが大量に必要なんです。何とか都合をつけていただけないでしょうか。できれば二百本……!」


「二百本!? そんなにたくさん、まさか大きな事故でもあったの!?」


 聞けば、あちこちで魔物が活発化しているとかで、ボス級のモンスターが現れているのだとか。大規模な討伐隊が組まれているのだがポーションの準備が追い着いていないと言う。


「ボス級……。大蛇の主もそういう奴だったのかな? あんなのがあちこちに……、いや、もっと強いのかも。それは、城エリアの他の町でも同じ状態なのかな?」


「他の町にも要請は出ているでしょうが、王城の抱える兵士が最も多いですから。ここほどではないと思いますが……。何しろほとんどの兵士を討伐隊に回しているらしくて、町の衛兵の数まで減らされています。町中の騒ぎは相変わらずなので治安もさらに悪くなってきています。早く魔物を片付けて帰ってきてもらわなくては……」


「わかった。アイパレスとイースタルの分はまた作ればどうにかなるか。二百本だな、なんとか足りるよ」


 マギはポーション二百本の他にもハイポーションや毒消し、魔力ポーションも大量に売って、コツコツ貯めていた在庫もずいぶん減らしてしまった。アイパレスやイースタルまでの道すがら薬草を集めて作り足さなければいけない。そちらでも必要とされているだろうからがんばらなければ。


「本当に俺なんかにかまってる場合じゃないだろうに。わかってるのかな? 国のトップは……」


 ポーション屋の話だけじゃない。実は、教会には幼い子供が何人かいた。しばらくいなかったと言う孤児が出てきていると言うのだ。


 とにかく先に用事を済ませてしまえとシスター・アンナに言われたので詳しい話はまだ聞けてないが、親が子供を置いて帰らないとか。いったいどういうことなのか。討伐隊で亡くなった兵士の家族だろうか。


 早くシスターに話を聞きたいし、帰りに美味しいものをいっぱい買ってくると仲間たちとも子供たちとも約束をしている。憂鬱な仕事だけどさっさと謁見を済ませてしまうべく王城の中へと進み入る。




 謁見の間にはいつも通りすぐに通されたが、玉座に王様が現れない。


「国王陛下のおなりである!」


 という兵士の言葉に跪いて頭を垂れてからもその姿勢のまましばらく待たされた。結構時間が経ってやっと玉座の後方にある入り口から大臣に連れられて、渋々といった雰囲気丸出しの王様が登場した。


 面倒で仕方ないといった風に、視界の端では短い足がプラプラと揺れている。大臣の方はもう流れ作業のように淡々とマギの資産を述べて褒賞金を用意させ、右手のマークをお座なりに消すと金貨の入った袋を押し付けられた。


「やっと終わったか」


 との呟きと、フンッと鳴らす鼻息をひとつ残して、王様は大臣を引き連れて後ろのドアからさっさと出て行った。


 呆然とするマギは兵士に促されて謁見の間を出て、城からも急かされるように追い出された。


「……国が大変だから、忙しくて俺と謁見している時間も惜しいってことなら仕方ないと思えるんだけど。そうであって欲しいもんだ」


 はあっと大きくため息を吐く。


「ここで愚痴っててもそれこそ仕方ないか。早く買い物して教会に戻ろう。みんなが待ってる」


 仲間たちの、シスターの顔が頭に浮かび、不安そうな幼い子供たちの瞳もちらついた。


 何か悪いことが起きている――――。

 何かが動き始めている――――――。


 見え隠れしているのは黒尽くめの男、奴隷商の影。国を導くはずの王様たちの様子もおかしく、とても当てにできそうもない。


 いよいよ守りと逃げだけではいられないのかもしれない。守るにしても本気を出す時が来たのだ。


 近づいてきている対決の予感にぶるりと震えを覚えるが、


「武者震いだ。もう、やられっぱなしの俺じゃあないぞ。俺が……、みんなの平穏な幸せを守るんだよな、師匠……」


 *=== ステータス ===*

 ∥             ∥

 ∥ プレイヤー五:マギ(黄)∥

 ∥             ∥

 ∥  購入した町:二〇   ∥

 ∥  資産 金貨:二六八二 ∥

 ∥      町:七七〇〇 ∥

 ∥     合計:一〇三八二∥

 ∥             ∥

 ∥ 次回褒賞予定:一〇三八 ∥

 ∥             ∥

 *=============*


 自分のステータスと他の勇者たちの位置を一瞥だけして、不安を取り去るように左右に頭を振ったマギは、天を仰ぎ、昼間の白い月の存在を見つけると少しだけ目を閉じひとつ大きく頷いた。


 再び見開いたその瞳に揺らぎは既に無く、市場へ向かって力強い足取りで走り出していった。





 第二章 ~完~








      納金 +50枚

 ポーション買取 +133枚(高100、ハイ20、毒10、魔20)

      納金 +30枚

 ポーション買取 +133枚(高100、ハイ20、毒10、魔20)

 ポーション買取 +296枚(高200、ハイ50、毒20、魔40)

     褒賞金 +943枚


 現在の所持金貨 2682枚

     町資産 7700枚分





第二章終了です。何とかここまで書けました。もう一話、外伝を挟んで第三章に続きます。


きな臭くなってきた第三章からエンディングへと頭の中でお話はできているのですが体調が伴わずなかなか筆が進みません。現在、語彙力低下で執筆がとても大変です。時間がかかっても完結まで書きたいという気持ちはあるのですが、思う世界が描けません。このまま続けるのは自己満足になりますが、できるだけやってみようと思います。


ブックマーク、評価をしてくださった皆々様に感謝します。挫けそうなとき支えてくださるのは皆様です。拙い作品を読んでくださってありがとうございます。




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