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 七十一話 百本だって大丈夫



 イースタルでは真っ先にパンタル商店に向かった。


 やっぱり町長たちに任せるとは言っても町の様子が気になってしまって、あれからの様子をおやじに聞いておきたかった。後で町長のアマデウスからも報告はあるだろうけど、おやじからならポーションの動きや息子経由で聞こえてくる兵士たちの様子も、町の人々の目線で見る普段の様子も知ることができる。パンタルからの情報は大切だ。


「おやじさん! ……っと、マギだ。戻ったぞ」


 マギはパンタルに怒られないようにほどほどの声量で声を掛ける。


「おう、おかえり。今回も無事に戻ってきたな。よしよし」


 パンタルからの子供扱いは相変わらずで、ガシガシと乱暴に頭を撫でくり回された。


「痛いって、やめろよ。ただいま、おやじさん」


 だが、マギにはもうわかっていた。パンタルの()()は自分をガキとして扱っている訳ではない。商売の話や町の話をする時には一人前として接してくれる。だからこれは荒っぽい愛情表現のようなものなのだ。あの立派ながたいの兵士である息子のマウリをいつも怒鳴っているのも同じだ。そしてマウリに対してもマギに対しても、この態度はいくつになっても変わらないのだろうと思える。その証拠に、


「おやじさん、ポーションはいるかい? 今なら品揃えバツグンだよ?」


 と、マギがわざとおどけて言ってみせると、一瞬で真剣な目になり姿勢を正した。


「おう、見せてみろ。半端な物ならウチじゃ買えないぜ?」


 そんな軽口を返す時にはいつものようにニヤリと笑っていたが、眼光は鋭いままだ。怯まず真っ直ぐ見返して、マギはカウンターにポーションを並べていく。パンタルはひとつひとつ丁寧に確認してはうんうんと頷いていた。


「変わらず良い出来だな。光魔法でも籠めてんのかってくらいに効果が高いから、お前さんのポーションは常に好評だ。特に命懸けで町を守ってる兵士たちには優先で回してやりてえ。数はあるか? できれば多めに買い取らせてもらいてえんだ」


 光魔法の(くだり)では「企業秘密だ」とニヤリと笑い返して濁したが、長年数々のポーションを見続けてきたおやじには何かわかるものがあるのかもしれない。それ以上つっこまれることはなかったがお見通しな雰囲気を感じさせられた。


「……まだポーションは品薄なのか?」


「そうだな。町の様子に変わりはねえ。出て行く奴は跡を絶たないし町の薬師も減っているが、町の人たちが普段使いにできるような安価なポーションならまだ出回っているから、普通に町に暮らしている者たちには不安は無いだろうな。荒っぽい騒ぎは増えちゃいるが、急に活気が戻ったから仕方ないで済ませられてる。兵士たちががんばってくれてるおかげだ。

 問題はその兵士たちだな。魔物討伐の遠征が増えてポーションの消費量が上がっている。兵士たちが遠征に出払っているから町の警備に回す手が足りてない。そのせいで居残り組も生傷が絶えない。そんな中でもがんばってくれてるんだぜ? せめて良いポーションを用意してやりてえじゃねえか」


 今回の注文は高品質ポーションをなんと百本に、その他のポーションを各十本ずつ。


 それでも対応できるだけの在庫をマギはしっかり用意していた。今回の旅の最中、せっせと作り貯めておいたのだ。


 普通の薬草に関しては旅の間ずっと採取を続けていた。特にたくさん採取ができる草原ではがんばった。

 東西の神殿周辺はもちろん、城エリアの街道脇でも仲間たちに無理してもらって薬草を集め続けた。そうして作った高品質ポーションはあちこちで買い取ってもらってなお、三百本ほども貯まっていた。


 農業エリアではハイポーションも、鉱山エリアでは新しく群生地が見つかったことで毒消しポーションもたくさん作れたし、森林エリアでは今回もネルの村人たちが魔力草集めに協力してくれて魔力ポーションも作ってある。それぞれが百本前後の在庫を持っていた。


 前回用意してもらったポーション瓶二千本はさすがに全部は使い切っていないが、千本以上をすでに使っているのだ。


 きっちり注文通りの納品を終えたマギに、パンタルは新たに千本のポーション瓶を用意していた。


「今回はかき集めてもこれだけだったが、次に来る時までにはまた二千本を揃えておく。また良いポーションを作っておいてくれよ」


 そこでふとイタズラ小僧のような笑みを浮かべ、


「今後ともごひいきに! 薬師のだんな!」


 わざと揉み手をして商人ぶった仕草をした。それがあまりにも似合わなくて二人して大笑いした。


「さて、少しは明るい話も聞かせてくれ。旅はどうだった? 何か面白いものでもあったか?」


 そうして日が暮れるまで旅の思い出を語って過ごした。国中に活気が溢れていて、新しいことにも挑戦していると聞いたパンタルは心底嬉しそうだった。


「まだまだ捨てたもんじゃないな。そんな話を聞いちまったら、俺だって萎れちゃあいられねえや。イースタルも城エリアもきっと何とかなる。町長も兵士たちもがんばってんだ」


 そう言って笑ったパンタルと別れ宿に入ったマギたちは、夜にはアマデウスから同様の報告を受けたが、アマデウスからも心配無用と言われた。


「マギ様が気に病まずに済むように我々もがんばります。すでにアイパレスとは連携を図っておりますので。そう言えば、アイパレスのアレクシスがマギ様のお帰りを心待ちにしておりました。何でもポーションの予約をしているとか。足りていなかった分はこちらからも融通しておりましたが、お立ち寄りの際にはどうかよろしくお願いいたします」


「大丈夫。今回はアイパレスで卸す分もちゃんと用意してあるよ」


 やはり、余計な心配をし過ぎるよりも、せっせとポーションを作っている方がみんなの役に立てるらしい。




 アマデウスから鳥便で連絡でも受けていたのか、アイパレスの東門では町長のアレクシスが待ち構えていて、町長自ら宿屋まで案内してくれた。その上、着いて早々に納金と報告、ポーションの買取りとあいなった。前回、在庫切れで卸せなかったこともあって相当切羽詰まっていたのかもしれない。


 部屋には宿屋の支配人のセバスも控えていてアレクシスと相談している。


「予約していた五十本では足りないのでは?」


「しかし、急に言って増やせるものかどうか。ポーションはどこも品薄状態なのだ。あまり無理は言えまい……」


「せめて六十本、……八十本は無理ですかね?」


「むむむ、どうだろうか」


「今回はイースタルでポーション瓶を確保してもらえたので在庫はたっぷり用意できています。予約では五十本でしたが追加も大丈夫。百本だって納品できます」


 丸聞こえだったので、マギが先手を打って教えてあげるとホッとしたように二人して胸をなで下ろしていた。


「お気遣いありがとうございます! 助かります。それでは高品質ポーションを百本と……」


 がっつりお買い上げいただいた。


 やはり、この町でも人の流入、流出に伴い兵士たちの負担が増えているのが問題なようで、ポーションが有ると無いとでは兵士たちの士気も違ってくる。町長はもちろん、仲が良いのかいつも相談と言う名の愚痴を聞かされているらしいセバスとしても、今回大量のポーションを仕入れられたことで少しは肩の荷が下りたようだ。


「マギ様のポーションがあれば兵士たちを安心して送り出せます。ありがとうございました」


 アレクシスの感謝の言葉も力強いものだった。マギとしては、前回品切れを起こしてしまったことを改めて申し訳なく感じたとともに、これからもしっかりポーション作りを続けようと再確認したのだった。






      納金 +60枚

    収入利益 +60枚

 ポーション買取 +93枚

  ポーション瓶 -1枚

      納金 +40枚

    収入利益 +40枚

 ポーション買取 +93枚


 現在の所持金貨 2051枚

     町資産 4750枚分




 申し訳ありませんが更新頻度を落とさせていただきます。一応毎週土曜日の更新を目指します。



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