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 六十四話 増資の報告



 順調にポーションを作りまくりながら農業エリアを通り過ぎ、幾分キリリとした態度が柔らかくなったシスター・スコラのいる南神殿で印も増やして、今、マギたちは商業エリアに入っていた。


 二周目の旅ではずっと後ろをついてきていた鬱陶しい二人組も、今回は北から回っているようで遠く離れているし、農業エリアですれ違った奴隷商と盗賊はともにゴールしたところのようで城エリアにいる。少しの間は他の奴らの動きを心配せずに旅を続けられそうだ。


 商業エリアでは商いに精を出す商人たちの様子などを視察しながら久々にのんびり進んでいけそうだ。マギも程好く力が抜けて、物珍しい街の景色や仲間たちとの時間も楽しめていた。




 サウザーの町でもポーションは良く売れた。


 だが、それは真っ当な理由で、商人たちが国中を忙しく行き来しているためだ。ポーションは旅の必需品なので行商に出るならみんなが購入する。


 町の薬師たちもがんばってくれていて、ここでは在庫が足りずに困るようなことはなさそうだが、復興のために森林エリアまで足を運んでくれている商人たちは危機管理のためにも品質の高いポーションを欲しがる者も多いらしく、そんな商人たちにマギのポーションは人気があるらしい。


「高品質ポーションはあるかね?」


「タイミング良いねぇ。ちょうど入荷したところだよ」


「よっしゃ、これがあれば今回も森林エリアまで足を延ばせる。まだまだがんばるぜ!」


 ちょうど店で旅仕度を揃えていた商人も、嬉しそうにそんなことを言っていた。どうやら本当に必要とされているようだ。目の前で笑顔でそんな風に言ってもらえてるのを見ると嬉しいものだ。マギたちはホクホク顔で店を後にした。良い仕事したって気分だ。


「ふふっ。俺のポーションも復興の役に立っていると思うと作り甲斐があるよな」


『ご主人様のポーションは人気って言ってたにゃ!』


 ルビーも自分のことのように自慢気だ。


『ずいぶんたくさん売れていましたね。この先の町でもたくさん売れそうですよね!』


『在庫は大丈夫なのかしら? このエリアではあまりたくさん採取もできてないでしょ?』


「それでも道を外れて採取するのにみんなが付き合ってくれているからね。少しは増やせるし、農業エリアでガッツリ作った分があるから大丈夫だよ」


 やはり嬉しそうなクロウと心配もしてくれるフェレ。ドンクはスイーツ屋台から漂ってくる甘い匂いに鼻をヒクヒクさせている。


 ポーション屋の帰り道、サウザーの町をぶらつくマギたちは上機嫌だった。


 町の人々の様子も、忙しなく動き回る中にも活力と笑顔が溢れていた。それらを肌で感じられて、マギたちは初めて旅をのんびり楽しめていることを実感していたのだ。目に映る景色も、漂う匂いも、頬を撫でる風の感触さえも、全てを素直に楽しめていた。




 その晩、遊び疲れてお腹いっぱいでのんびり寛いでいたマギたちに町長が会いに来た。宿屋の部屋を訪れたフランチェスコから納金と収入利益を受け取り、その後は少し話もしなければいけない。のんびり旅の最中だけど、ここからは仕事の時間だ。


 町の活気や料理の味を誉めたりと世間話もしたけど、メインは北側の増資の話など経済にも関わってくる部分だ。商業エリアの人の意見も聞いておきたかった。マギもしっかりスイッチを切り替えていた。


「鉱山エリアでは岩山の街道の整備に併せて、荷運びの仕事をしてくれる者を募っている。商人たちは利用してくれるかな?」


「ありがたいことです。こちらの町から運び屋を連れて行くとなると、運び賃の他に食事代や宿泊代などもかかります。荷が売れて運ぶ物がなくなっても、キャラバンを組んでいる以上そこで勝手に帰れという訳にもいかないですからね。土地の者を雇えればその分経費も浮きますし、予想以上に仕入れが増えた時にも対応してもらえますし。その上、難所の多い岩山が歩きやすくなれば大助かりですよ」


 フランチェスコは笑顔で賛同してくれたが、マギは少し引っかかった。


「もしかして、商業エリアの運び屋の仕事を奪っちゃうことになるのかな……?」


「ご心配には及びません。この好景気に乗り遅れまいと商人たちは皆大忙しですからね。商業エリア内の仕事だけでも運び屋の手が足りていない程なんです。大きな馬車を持っている商人ばかりじゃありませんから。今だけのために馬を飼い、新たに馬車を持つには金がかかり過ぎます。そこまでの余裕の無い商人たちが使うのが運び屋で、今は引く手数多なのですよ」


「よかった……。思い付きで歪みを作っちゃうかと思ったけど……」


「お気遣いありがとうございます。増資景気で盛り上がっている今なら、逆にありがたい発想ですよ。さすがマギ様です!」


 マギのちょっとした思い付きから始まったこの計画は、商人たちにも受け入れられそう……どころか、ちょうど良いタイミングで助け合える良いアイデアだったようだ。


「マギ様? 他にも何やら面白そうなことを考えておられるようで……?」


 ホッと胸を撫で下ろして油断していたマギと対照的に、フランチェスコは臨戦態勢だ。瞳をキラリと光らせニヤリと笑う。獲物を狙う鷹の目、商人の顔になっている。


 その迫力に一瞬たじろぐマギにぐぐっと詰め寄り、それから今度はガクリと悔しそうにして見せた。


「~~~ッ!! 町長という職務があるので私自身はめったに現地に出掛けられないのが歯痒くてならない! ぜひとも、この目で見て体感してみたいものです! なんでも湯治宿という疲れの取れる湯浴み場を作っているとか……?」


 さすがの情報収集能力!

 商人の町の町長は耳が早い!


 マギ自身もツチの町長に計画を丸投げしてきてるので、今どんな状態なのかもわかっていないのに。そんな噂になる程、ツチの町のみんなは手をつけてくれているのだろうか。


「湧き湯は良いですよ! 温まるし疲れも取れるんだ! 俺の趣味丸出しの無理なお願いをツチのみんなに頼んじゃったんだけど。出来上がったら、きっと商人さんたちにも喜んでもらえると思うんだ。上手くいくかどうか楽しみにしててよ」


「ゆっくり休んで疲れを取れれば、商人たちのやる気も上がるでしょうね。いやあ、羨ましい! 儲けの匂いがプンプンしている。みんな飛びつきます! 私も年甲斐もなく立場も忘れて駆け出したい気持ちですよ!」


 どうやら風呂に入りたいのではなく、商売の方で興味があるみたいでマギは苦笑してしまう。惹かれる部分は人それぞれだ。


「宿と言えば、森林エリアでも宿泊所を作ってくれるように各村にお願いしてあります。街道の方も少し木々を間引いて日の光が入るようにできればと思っているんだ。それに特産品についても考えている。すぐに形になるものではないだろうけど、商人さんたちが森林エリアに来たいと思ってくれるようにしたいんだ」


 これにもフランチェスコは大きく頷いた。


「安心して休める場所は大事ですし、仕入れたいと思うものがあれば商人たちは無理してでも足を向けるでしょう。それに街道の方も、城エリアの兵士たちも魔物の間引きや害獣駆除に赴いてくれているようですからね。森林エリアとの商いが活発になれば、我々にとっても嬉しいことです」


 マギ様のおかげで新たな商機が手に入れられそうだとホクホクしているフランチェスコに対して、マギの顔には翳りが出ていた。


「どうかされましたか……?」


 浮かないマギの様子にいち早く気付いたフランチェスコが不思議そうに問う。


「……城エリアの動きが少しおかしいんだ。人の出入りが激しくなっているし、御触れのために鬱憤を溜めていた人々が荒っぽくなってる」


 フランチェスコはなるほど、と頷いてから神妙に顔を取り繕って受け答えた。


「その話も聞いております。……誉められたことではありませんが、しばらくは歯止めのきかない者は出続けるでしょうな。商業エリアにもそういった者はおります。自分は勇者様の知り合いだという連中が不穏な動きを見せたりもしていますが、こういう浮かれた時期には怪しい者も出るものです。それぞれの町で対応する案件ですので、マギ様がお心を痛めずとも大丈夫ですよ?」


「商業エリアでも……! そうか……、俺の出る幕じゃないのかな……」


「心配していただけるのは嬉しいです。けれど、こういう治安の問題は各町長の仕事です。マギ様が全てを背負わずとも良いのですよ。我々にも働かせて下さいな?」


 恭しくポーズを取って頭を下げるフランチェスコの姿が妙に芝居じみていて思わずマギから笑いが漏れる。それを見てフランチェスコもクスリと笑った。


「プッふふっ。ありがとう。心配しすぎても仕方ないよね。町長に任せるよ。頼んだ!」


「はい、マギ様は恙なく巡礼の旅をお過ごし下さい。それが我々の幸せにもつながるものと思います」


 フランチェスコが自分の肩の荷を減らそうとしてくれているのを感じられた。自分ひとりで何もかも解決できる訳がない。みんなを信じて任せればいいんだ。


「うん、俺は楽しみながら旅をがんばるよ!」


 今の自分には頼れる人がたくさんいることに気が付いたマギだった。






      納金 +5枚

    収入利益 +10枚

      納金 +20枚

 ポーション買取 +30枚(良50本、ハイ5本)

      寄付 -3枚

      納金 +30枚

    収入利益 +30枚

 ポーション買取 +61.5枚(高50、ハイ10、毒5、魔5) 


 現在の所持金貨 2070.5枚

     町資産 3850枚分



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