表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

62/116

 五十三話 変わるということ



 ここまで順調に増資してきたマギだったが、次のニアでは少し勝手が違った。村人たちがあまり乗り気になってくれないのだ。村長のトマスを筆頭に誰もが頑なだった。


「商人たちの行商ルートに森林エリアも入れたいんだ。もう少し頻繁に訪れてくれた方がみんなの生活も便利になるし、町の発展にも関係してくる」


「はあ……。急にそう言われましても、我々も代々こうして暮らしておりますので……」


 最初はナワの村人と同じくピンと来ないのかと思ったのだが、


「我らは変化することを望んでおりません。変わるというのは怖いのです。知らないことを受け入れるのも同様に。余所から見知らぬ者が入り込んでくるのも、森に手を加えるというのも、今までの暮らしを壊すことになる。これまで何も問題なかったのです。わざわざ知らないことに手を出さなければなりませんか?」


 どうやら、戸惑いの方向性が違うようだ。これまでほぼ自分たちだけで完結していた世界を壊したくないのだ。新たなものを受け入れることは今までの自分を否定されているようにも感じられる。マギもそういう気持ちはわからなくもなかった。


 自分の村も森の奥でひっそりと暮らしていた。親交のあったエルフの村や、たまには村の代表者が町へ赴いて取り引きをする商人もわずかながらいたが、村の暮らしはほぼ村の中だけで回っていた。外を知らないから、その暮らしに疑問も持たなかったし問題なく幸せだった。


 その幸せを壊したのは外からやって来た者たちだ。だから、わかる。わかってしまう。


 攫われたことによって外の町の暮らしを知った。マギはその便利さや豊かさに驚いたものだったが、それでも、幾分いびつであったとしても、村での暮らしを否定する気にはならなかった。戻れるものなら戻りたかった。不便でも、物が溢れることはなくても、そこに住む者たちはそののんびりとした毎日を、ゆっくり流れる時間を受け入れて、楽しんで、幸せに暮らしているのだ。


「わかった。増資はするから村のために上手く使ってくれ。ただ、柵の強化は悪いことじゃないだろ? 柵を作り直す際に少しだけ範囲を広げて、商人たちが休めるスペースを確保してくれないか? 村に入って欲しくないのなら村外れでもいい。安全な柵の中でゆっくり休める宿泊場所用意してあげて欲しいんだ。それだけで旅はずっと楽になるはずだから」


 本人たちが望んでいない町の発展を無理強いしても仕方ない。直接関係してくれなくても力を貸してもらえれば、それだけでじゅうぶん助かるのでお願いしてみた。


「……マギ様のお願いなら、そのくらいは仕方ないですね。わかりました」


 無理して関わりを持たなくても良いなら、せめてそのくらいは協力しましょうと、なんとか許容してもらえたようだ。だがやはり大きく環境を変えるのは憚られるようで、森を切り拓くのも街道の木を間引くのも忌避感があるみたいだった。深く危険な森であっても彼らにとっては、自分たちを守り恵みを与え育んでくれる神聖なものなのだ。


 村の中や周囲だけでも手を加えてみようと思ってくれただけでもじゅうぶんな成果だった。




 翻って、ノースの町の人たちは増資計画にすこぶる協力的だった。マギが驚くほどに、変化に対して柔軟な考え方をしている。


 元々が職人たちの町なので、新たに挑戦すること、工夫して改良することが楽しいと思える人々なのだ。より良いものを作り出すためなら既存の常識などぶち壊しても構わないとおくびもなく言える。

 増資も限度額いっぱいの金貨百枚したので、新しい試みにも手を出せると町長も喜んでくれた。


「森を切り拓く許可がいただけるのでしたら木材も増やせますし、職人たちの腕の見せ所ですな!」


 ノースの町の町長シモンが言うには、最近では若手家具職人の育成に力を入れていて、そのためにも木材の調達の当てができたことは嬉しいニュースなのだそうだ。


「町を広げる分は良いとしても、丸裸にするような伐り方はしないように気をつけてくれよ。陽が差し込み森が育つように間引いて、植樹することも忘れないで」


「もちろんです。我々もまた森に生きて生かされてきた者ですから、その辺は心得てますよ。この町には森に詳しく風魔法にも通じた者もおりますから、上手くやってくれると思います」


「風魔法の使い手がいるんだ! それは良いね! 伐り倒すにも乾燥させるにも活躍してくれるだろう。良い木材が作れそうだね!」


 マギの言葉をシモンは理解できず、不思議そうに、そして興味深そうに身を乗り出した。


「はて……? 伐り倒す、はわかりますが……、乾燥とは?」


 トガリの薬師との話でもそうだったが、この国では前の世界ほど魔法に頼った生活をしていないみたいだ。魔法は攻撃に使うものばかりが重要視されていて、生活に根付いた、言うなれば便利に利用することには疎いらしい。魔法で楽をしようという頭はないみたいだ。

 木を伐るのも、マギが使う風の刃のような攻撃系の魔法を数当てて伐り倒すという方法でのみ使われている。肉体的には楽かもしれないが、それでは斧で伐るのと変わりない。


「俺の故郷も森の中だったんだ。森の民の作る木材はピカイチだって聞いてたけど」


「森の民……ですか?」


「ああ、俺の生まれた村は風魔法の使い手が多くてね。森に愛され森と共に生きる者って……、そこじゃなくて魔法の話だったな」


 マギは村にいた頃まだ小さかったので木を伐る仕事を手伝ってはいなかった。詳しくは知らなかったが、それでも知る限りを教えてあげた。風魔法に回転を掛けて伐る工夫。倒れる前に風のクッションで受け止めて状態良く運ぶ方法。ドライの魔法で満遍なく乾燥させることで、歪みやひび割れの無い上質な木材を作れるという話。


「良くわからないけど、水魔法で水分を抜く方法や火魔法で熱を加える方法よりも良い木材に仕上がるって聞いた。時間も短縮できるしね。俺の村ではそうやっていたけど……」


「なるほど……、すごいぞ! 良い話を聞かせていただいてありがとうございます! これは、ぜひ工夫して取り入れてみたいと思います」


 シモンはワクワクした少年のように瞳を輝かせていた。家具類は他の村で準備を始めようとしている宿屋にも必要なのでぜひがんばって欲しい。


「できたら家具を他の村にも融通してあげてね」


 マギはちゃっかりお願いもしておいた。






      納金 +5枚

    収入利益 +5枚

 ポーション買取 +3枚(良10本)

      増資 -50枚

      納金 +10枚

    収入利益 +10枚

 ポーション買取 +15枚(良25、ハイ2、毒5)

      増資 -100枚


 現在の所持金貨  679枚

     町資産 3600枚分



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ