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 外伝 ワイズ④



 西神殿でワイズは、元領主と兵士の二人組に出会ったが、二人はなんともギスギスした雰囲気を醸し出していた。


 不機嫌な領主には「人足はまだか!」とせっつかれてしまった。相棒に不満タラタラなようだ。


「すでに種はまいてございますが、何事も熟して実るには時が必要というもの。今少しお時間をいただきたく思います。

 見れば、兵士殿もがんばっているご様子。彼を大切に使ってやって、しばらくお待ちくださいませ。領主様ほどの方ならば、上に立つ者の器量も、人を上手く扱う手腕も、群を抜いて高いでしょうから。ようは飴と鞭です。優しくしてやれば領主様のためならば実力以上の力も発揮するでしょう。さすが領主様ですね」


 二人の様子を見れば、あの兵士がこのひと月、どれだけ苦労してきたのか手に取るように察せられた。兵士には可哀想だが、この馬鹿な元領主が美味しいカモに育ってくれるまで、まだ見放されては困る。少しでも兵士の環境が改善されるようにと領主をチヤホヤと持ち上げて上手いこと指南してやった。高く高く木に登った豚はご機嫌も良くなり、さっそく兵士に優しい言葉を掛けてやったりもしていた。兵士の方はうんざりした顔をしていたが。


「今はあなたに任せますが、決して悪いようにはしません。非常に大変でしょうが、もう少しだけ耐えていてください。時が満ちれば私がなんとかしますから」


 もちろん、兵士の方にも内容をぼかして甘い夢が見れるように、優しく労いの言葉を掛けてやった。兵士は絶望の中に一筋の光明を見つけたような顔をして笑顔さえ見せていた。


「お任せください! ですから、その時には上手く取り計らってくださいね」


 必死すぎて笑えてくる。即答する兵士にワイズはニヒルに笑い返してやったけど、何をどうするかについては一切触れはしなかった。




 その後訪れたウェスターでは、以前取り入っていた、暴力だけで人を手懐けているような男たちと縁を持った。


 この手の男たちの取り扱いはすでに慣れている。小さい頃から接してきたワイズの得意中の得意の上客たちだ。手を組めばいくらでも儲けられるし、儲けさせてやれる。まあ、最後にはそちらの儲けも全ていただく腹づもりではあるのだが。


「裏の世界は儲かるからな。楽しくなりそうだ」


「長いお付き合いをよろしくお願いしますよ。俺たちの勇者様」


 マフィアのような貫禄のあるその男は、ワイズに負けないようなニヒルな笑顔、口の端を斜めに引き攣らせた笑みを溢していた。




 ウェスターのトップ、ゴロツキどもをまとめ上げるその男と固く握手を交わし、ワイズが次に訪れたのはエンタの町。旅の最初にも見ていたが、こここそが欲望渦巻くワイズの狩り場となる町だ。


 以前に通り過ぎた時よりもさらに人も増えて、狂った人間のるつぼのようになっていた。話を聞けば、何やら王様によって抑制された生活をしばらくの間強いられていたとかで、溜まりに溜まった鬱憤を晴らすべく、この欲望の渦巻く町、キラキラと煌びやかなネオンに飾り立てられた歓楽街エンタへと人が集まっているのだと言う。


 そうやって欲望への自制を忘れタガが外れた人々は、酒と女と博打に溺れ遊ぶ金を求めた。ワイズには強欲な魚たちが口をパクパク開けて泳いでいるように見えた。釣り糸を垂らせば貪るように食いついてくる。


 ここぞとばかりにワイズは金をばらまいた。くれてやった訳じゃない。貸してやっただけだ。最初は小さく、ちょっと博打で勝てば簡単に返せるような額から始めるそれは、だんだんと大きくなっていく。釣られた魚たちは、一度は博打で返済できた経験から不思議と気が大きくなり、結構な額の借金を抱えても、


「デカく当てればすぐに返せる」


 とのワイズの言葉にも疑問を持たなくなる。結局そう簡単にデカい当たりなんて来るもんじゃなく、次の勝負を仕掛けるために、この負債を返すためにと、さらなる借金に手を出していくのだ。


 ワイズは一晩中、あちこちの魚たちを入れ食い状態で釣り上げ、金貨にして百枚以上の金を貸し付けて歩いた。翌日にはこの町を立つ予定だったので返済期限は明朝だったが、もちろん返せる者などいなかった。

 そこで、今度はしっかり利子を付けた契約を交わし、ひと月後に自分が再びこの町に戻ってくるまでに金を作って返すように言った。欲に浮かされた馬鹿者どもは、ワイズを優しい勇者様だと、自分たちを助けてくれたと褒めたたえた。


 ここでもたっぷり種をまけたと気を良くして、ワイズは王城へと進んでいった。




 そうして訪れた王城。実に三十五日もの時間を掛けて、再度足を踏み入れた謁見の間。


 あちらこちらでの種まきに結構な金を使ったワイズだったが、商人たちから掠め取った実入りもあったので、まだ二千八百枚ほどの金貨を所持していた。褒美の金を合わせれば三千百枚と少しの金貨が手元にある。なかなかの出だしと言えた。そんなワイズに王様から声が掛かる。


「ワイズよ。ずいぶんと時間を掛けた割には、たいして資産を増やしておらぬな」


「私めの資産は今は目に見えぬもの。作物と同じく育てております最中でございますれば……」


「ふふんっ。賢しき言い様をする。何やら面白きことをしているとは、我には全てわかっておるのだぞ」


 さすが王様ともなれば自分たちの行動など筒抜けなのか、とワイズは驚いた。だが、そう口にする王様の様子は心から愉しんでいるように見える。


「……お褒めの言葉と受け取らせていただいて、よろしいのでしょうか?」


「もちろんである。お主の言う作物が育った先が楽しみだ。さらに面白きものを見せてくれると期待しておるぞ。励むが善い!」


 こうして、愉快そうな王様との謁見も済ませ、再び旅立つ前のワイズの呟きへとつながる。国盗りの戦いと呼ぶにはあまりに歯応えの無さそうな弱い相手ばかりではあるが、全てのパズルがぴったりとはまった時にはそれなりの満足は得られそうだ。


「さてさて、まいた種には水を与えに行かなければね」


 口の端を斜めに上げたワイズは、今度は東へ向かう。この国に住まう人々も、旅の途中で見かけた国盗りのライバルたちも、仕掛け人である王様ですらも、自分の前に立ち塞がる壁とはなり得そうもない。何ひとつ心配のないゲームなど手応えが無くて面白味に欠けるが、しばらくはこの遊びに興じてみるかとワイズは足を踏み出した。






 ◇◆◇ 一周目リザルト ◇◆◇


   プレイヤー2:ワイズ(紫)


    購入した町:0

    資産 金貨:3105枚

        町:0

       合計:3105枚分


   次回褒賞予定:310枚



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