表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

55/116

 四十九話 クロウの知り合い



 サウザー。商業エリア随一の大きな商業都市である。前回の訪問の際には他のプレイヤーとの初の接触という状況にもあって、マギにとっては残念なことにルビーとケンカしそうになった思い出の町との印象が強い。そして、クロウと出会えた思い出の場所でもある。この町も息を吹き返したかのように明るい喧騒を取り戻していた。


 マギたちは今、その町中にいる。久々に戻ってきたサウザーで町を見て回るにあたり、一応クロウに確認の意味で聞いてみたのだが。


「久しぶりのサウザーだけど、会っておきたい奴とかはいないのか?」


『別にここは私の故郷ではありません。群れにいた訳でもありませんし、ご主人様と出会うまでは私は一人でしたから』


 とクロウは首を振る。


「そうなのか。じゃあ寄るところも特に無いか」


『ふふっ、クロウはぼっちにゃ……』


 ルビーの余計な一言で、またルビーとクロウはやり合っている。ルビーだってぼっちだったんじゃ……という言葉は飲み込んだ。思い起こせば、ここにいる全員がぼっちだったんだから。ブーメランはわざわざ投げない。




 目的はなくても大きい町を歩くのはワクワクするものだ。全く目的がなかった訳ではなく、今はポーション屋にポーションを売りに行った帰りだ。サウザーでも宿屋に入った直後に町長が納金を届けに訪れてくれて、その時にこの町でのポーションの取引きの窓口となってくれるポーション屋を紹介してもらった。前回の店とは別のところだ。さすが町長の口利きだけあって良心的な店で、足下を見るような真似もされなかった。


 そして今は、せっかく町に出たのだからと少しブラブラしてみてるところだった。魚の串焼きに目を輝かせるルビー。フェレは変な道具を売っている店に興味を持っている。うちの女性陣は綺麗なものや可愛いものに目がいかないのだろうか。意外にもドンクはキラキラしたものや甘い物に惹かれている。おっさんっぽいロバの女子力ってどうだろう。


 クロウは……。勝手知ったる、といった風でもなく、口数も少なくなっている気がする。たまにキョロキョロする時も、何かに目をひかれているのではなく、周囲を窺っている様子だ。


「クロウ、平気か? 調子悪いのか?」


 そんなんじゃなさそうだとは思っても、そんな風に声をかけてしまった。


『ご主人様……。私は黒い悪魔と呼ばれた不吉な鳥です。一緒にいたら、ご主人様に迷惑をかけてしまうのでは……』


 やはり、そんなくだらないことに思い患っていたようだ。


「そんなこと言うな! 俺の大切な仲間だし、ずっと一緒にいて欲しいって知ってるだろう?」


『そうよ。クロウは賢くて可愛い自慢の子よ』


『で、あるな』


『クロウは黒くてツヤツヤでかっこいいにゃ。夜に紛れて偵察もできてすごいにゃ』


 珍しく素直にルビーにまで褒められて、クロウの瞳がウルウルしている。


「クロウの良さがわからない奴の方がどうかしてんだ。そんな奴ら気にすんな」


 マギは優しくクロウの艶やかな羽を撫でると、


「さあ、お前も楽しいもの見つけようぜ!」


 再び町の散策に歩き出した。




 そうしてなんとか気を持ち直したクロウとともに、今度こそ楽しく人混みの中を彷徨いていたマギたち一行だったが、


「キャッ、ごめんなさい!」


「ッヒ!?」


「啼くなよ! ドンク!」


 危うく町中でドンクが鳴き出しそうになるというアクシデントに見まわれた。


『お、驚いただけである。大丈夫である……』


 目の前には少女が転がっている。ドンクにぶつかってきて逆に跳ね飛ばされたようだ。申し訳ないことをした。混雑した夕方の大通りをロバを連れて歩いている方がおかしいのだ。


「ごめんな。ケガしてないか?」


 マギはドンクにぶつかって尻もちをついてしまった少女に謝りながら手を貸して起こしてやる。


「ありがとう。大丈夫よ。私が余所見してたからなの。あれ? あなた……」


 立ち上がった少女は、パンパンと服の汚れを叩いて落とし、顔を上げると視線をマギに、そして肩の上のクロウに向けた。遠慮のない真っ直ぐな視線に晒されてクロウは目を逸らし、マギも少しばかり身構えた。


「うちのクロウに……何か?」


 険しい言い方をしてしまったかもしれない。でも、その少女は気を悪くするどころか花が咲くような笑顔を見せた。


「やっぱり! あなたよね? クロウくんって言うの? 私はドロテア、あの時はありがとう!」


 マギには話が読めない。他の使い魔たちも同様なようでキョトンとしている。


「……ドロテアはクロウを知ってるの?」


 当のクロウも知らん振りなので、マギは少女に聞いてみた。


「ひと月前くらいかしら……? 朝方、変な男に絡まれそうになったところを助けてくれたのよ。ね、あなたでしょ? 優しいカラスさん。あなたのおかげで逃げられたのよ」


 朝も早くまだ人もまばらな時間に、その日たまたま早く目が覚めてしまった彼女は、白々とした夜明けの町を一人っきりで散歩していたのだと言う。清々しい空気と静かな町のいつもと違った雰囲気につい冒険心がくすぐられ、大通りを逸れて脇道に入ってしまった。そこに見知らぬ男が近付いてきて声を掛けてきた。


「黒尽くめでサングラスをした怖い男の人にいきなり声を掛けられて、でも近くには人もいなくて……。すごく怖かったわ。その時、カラスさんが飛んできて男を追い払ってくれたの。おかげでその隙に大通りまで逃げられたわ。本当にありがとう」


 お礼を告げると少女はクロウを優しくひと撫でして去って行った。


「どういうことさ……? クロウ」


『クロウのくせに、な、ナンパしてたにゃ……?』


『うむ、やるな……』


『あら、やりますわねぇ……』


『ち、違います! そんなんじゃ! ご主人様に拾われた日のことです。ご主人様に言われて偵察していたあの男が、帰り際にあの少女に近付いて行って。彼女が困っていらしたようなので、ちょっと邪魔してやっただけで……。その、それだけです!』


 あの子、ドロテアは奴隷商の奴に目をつけられたってことか。下手したら危なかったのかもしれない。


「やったな、クロウ! お手柄じゃないか!」


『やったにゃ?』


『うむ、やりおる』


『ふふ、男の子ね。かっこいいじゃない!』


 思いがけなく出会ったクロウの知り合いから、クロウのかっこいい武勇伝を聞かせてもらえたのだった。






      納金 +30枚

    収入利益 +30枚

 ポーション買取+36.5枚(良50、ハイ5、毒5、魔5)


 現在の所持金貨  682枚

     町資産 3400枚分



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ