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 四十三話 プロローグ~マギの秘密



 小さなイングランデ王国のトップ、国王ヨキアム=イングランデ。短い足をプラプラさせながら玉座に威厳たっぷり? に腰掛け、自分たちにとんでもない役割を命じた。“みんなの愛すべき王様”だった人。


 そのお膝元である城下町は、本当に流通が止まっていたのかと不思議に思うほどに賑わっている。人々はガヤガヤと騒がしく通りを行き交い、そこには数多くの商店がしのぎを削り合う。


 さすがは王のいる街と言うべきか、まだまだたくさんの物資を抱え込んでいるようで、経済に滞りを感じさせる兆しも見せない。町の解放が順調になされている今となっても、商人は農業エリアからのルートでしか入ってこれない状況なのにもかかわらずだ。




 あちらこちらから立ち上る屋台の美味そうな香りや、強気にやり合う商売人たちの掛け合いの喧騒。活気に溢れる大通りの一角で、マギはふと足を止めていた。


 市場で適当に目に付いた肉串やサンドイッチ、思わず匂いに釣られた揚げ物やスープなどの食料と、こちらも忘れてはいけない、ジュースや甘いお菓子に果物などを買い込んでいたマギの目に止まったのはポーション屋だった。冒険初日に場当たり的に入ったよろず屋でぼったくられそうになった経験のあるマギは、城下町の商店での買い物に多少の忌避感はあったものの、ここでもポーションを必要としているかもしれないので一応訪ねてみたのだが。


「……なんだい、お使いか? ボウズ」


 チラリと一瞬だけ向けられた視線で相手する価値無しと判断されたのか、掛けられた言葉もなんだか感じが悪い気がする。やっぱりやめておけば良かったかと少し後悔した。


「いや、ポーションを売りに来たんだが、必要無いならやめとくよ」


 邪魔したな、と取り出していた高品質ポーションとハイポーションをしまおうとするマギの手首を、素早く掴まれて押さえられた。


「こ、これは……、なんと高品質なポーション。それにハイポーションも。ボウズ……いや、坊ちゃんは名のある薬師様でしたか? 失礼しました。ぜひとも売っていただきたい!」


 店主は手首を掴む力はそのままに頭を下げて、急に態度を改めた。


「いたた! わかった、わかったから! 売りに来たんだから売るよ。この手を離してくれ!」


 どうやら、一見問題なさそうに見えても流通が滞ってはいるらしい。品質の良いポーション類ともなると品薄で困っていたようだ。


 どうでもいいけど城エリアの奴は、最初は偉そうでコロッと態度を変える奴が多いなと少し辟易していた。兵士たちのようにフランクに話してくれるのなら良いのだが、威丈高に値踏みされるようなのは面白くない。それでも、


「本当に助かりました! また城下町にお寄りの際には、ぜひ当店にもお立ち寄りください!」


 なんて嬉しそうにペコペコしている姿を見ると、悪い奴じゃなさそうに見える。大きな街だからこそ舐められないように弱気は見せず、強気の鎧を纏わなければいけないものなのかもしれない。そういえば、町中でもけんか腰のやり取りも多く見かけた。もっと気持ち良く商売できないものかとマギはため息を漏らした。




 そんな感じでまた少し金貨を増やしたマギは、早く気の良い仲間たちに会いたくなって足早に教会に戻った。


「おーい、みんな大丈夫か? おとなしくしてたか?」


『ご主人様! ごはん買ってきたにゃ? お使いご苦労さまにゃ! 良い匂いがするにゃ!』


『ルビー、ご主人様はお使いに行っていた訳では……良い匂いですね!』


『甘い物はあったか、の!?』ズビシッ!


『ここに来てからはみんな調子が戻ったから大丈夫よ。お仕事お疲れさまでした、ご主人様』


 ドンクの顔を尻尾でビンタしながらのフェレだけが労ってくれた。ルビーもクロウも食欲が出てきたなら何よりだ。


「うん、すっかり調子も戻ったようで良かったよ。旅の一周目のゴールのお祝いだからね。いろいろと買ってきたよ。シスターも呼んで、ささやかだけどパーティーしよう。シスター・アンナは……?」


『シスターならお掃除してるにゃ』


「……そうか。じゃあ、パーティーは掃除を終わらせてからだな!」


 後で神殿の方に……と言われたとはいえ、快く泊めてもらえるというのに寄付もしていない。せめて力仕事でもあれば何か手伝いたいと、マギは買ってきたものの包みを解くのは後にしてシスターの元へ向かった。


「シスター・アンナ、戻りました。何か手伝えることはありませんか?」


「あら、お帰りなさい。みんな良い子で静かにお留守番していましたよ」


 そう言ってニコニコ笑うシスターは、ほっぺに人さし指を当てて上目遣いで考える。こういう仕草が本当に可愛らしい。


「お手伝いね……。高いところに手が届かないので天井の煤払いか、庭の草刈りでもお願いしようかしら。腰にくるのよね。でも、お疲れなんじゃない?」


 言われて見上げると確かにキレイに見えた教会だが、天井付近にはクモの巣が張ったり、煤が付いたりしている。このぐらいの汚れなら、とマギは生活魔法のクリーンを使ってあっという間にキレイにしてしまった。


「あらあら、すごい!」


「後は草刈りですね」


 薬草の採取と違って雑草を刈るだけなら、こちらも風魔法を使えばあっという間に終わってしまう。後は刈った草を集めるだけなので簡単だ。


「なんて手早い……。驚いたわ、マギさんは優秀な魔法使いなのね!」


 優秀なんて言われると顔が火照ってしまう。


「風魔法と光魔法を少し使えます」


 そこでマギはハッとした。シスターが話しやすい雰囲気なのもあるが、あれほど頑なに秘密を守っていた魔法のことをあっさり話してしまっている自分に驚いた。そういえば、この世界に来てからはポーション作りに普通に魔法を使っていたし、ネルの村でも魔法使いだと名乗ってしまっていた。マギの表情の変化に気付いたシスターが心配そうに問い掛ける。


「何か心配なことがあるの? 急に不安げに見えるわ……」


「……魔法が使えることは、あまり知られないようにと師匠に教えられました。なのに、普通に喋っちゃった。できれば、このことは秘密にしてもらえませんか?」


「まあ。……そうねぇ、マギさんの年でこれだけ魔法が使えるとなると、要らぬ面倒に巻き込まれることも考えてお師匠様はそう言ったのでしょうね。わかったわ、安心して。それにほら、……ヒール!」


 シスター・アンナは集めた草をまとめている時にできてしまっていたマギの手の切り傷を見つけ、魔法で治してくれた。


「私だって光魔法なら使えるのよ。これでも聖職者ですからね!」


 エッヘンと胸を張るシスターがなんだか可愛らしくて、マギはホッと安心できた。


 その後は、シスター・アンナも交えて買ってきたもので楽しく食事をし、シスターにお強請りされて旅の話もたくさんした。マギの方からもシスターに魔法の使い方を指南してもらえないかお願いしてみた。苦手としている人に対して行う魔法のコツなんかを教えてもらうことができたのだった。




 マギたちは温かな笑顔と清澄な空気に守られた優しい一夜を過ごすことができた。いよいよ明日からは二周目の旅が始まる。






 ポーション買取 +40枚(高品質50本、ハイ5本)


 現在の所持金貨 1134枚

     町資産 2600枚分



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