助けたいだろ!!
「なあハルキ、お前には夢ってあるか?」
「ん? どうしたよ急に? う~む、夢ね~?」
ベットに寝る痩せ細った少年、猪川 昴が弱々しいか細い声で聞く。
その声を投げ掛けられ戸惑ったような顔で顎に手を当て悩むのは島津 春樹、中肉中背の顔立ちの良い男だ。
「天下の王様にでもなってみたいかな~ なんか楽しそうだろ?」
「王家とかってのの血を引いてなきゃ成れないんだろ王様って? 前途多難な夢だな」
「ははは、冗談だよ冗談! 本当のところは楽しく生きれれば何でも良いんだよな~」
「そうなのか、僕は有るぞ? 天下の王より余程に多難な夢がね」
「そんなもん有るのかよ?」
「ああ、僕は神様になりたいんだ。 天変地異を好きなように操って万病を息吹だけで直しちゃうようなさ、そんな凄い神様に成りたいんだよ」
その答えに春樹は苦い顔を浮かべ苦虫を噛み砕いたような表情になる。
それを見た昴は不思議そうな顔をしてからフッと悟ったような顔を浮かべて目を瞑り「気にすんなよ」と呟いた。
「死んだら神様になれたりしないかな~? そしたら僕の夢も残り1年で叶うのにさ」
「そんなこと言うなよ! 確かに親も居なけりゃ金も無いけどさ! それでも俺だって色々頑張ってんだぜ? 1年しか生きれねぇなんてフラッと来てフラッと消えたような男の言葉なんざ信じるなよ! 生きれるって絶対に俺が生かすからさ!」
「ありがとなハルキ、でも良いんだよ僕は。 親友のお前が僕のせいで苦労する姿なんかもう見たくないんだ、だから見捨ててくれよ。 楽しく生きたいって言ってたじゃん? お前の剣術なら国最強だって夢じゃないんだからさ」
その言葉を聞いた春樹は目を充血させ激昂したように自分の足をブン殴った。
『パアァァァァァン!』とゆう音が部屋に響き突然の行為に昴は呆けてしまった。
「スバルよぉ、次そんな下らねぇ事言ったら許さねぇぞ? 俺はまだ恩の1割も返せてねぇんだ! それに剣だってお前が居たから好きになったんだぜ? なのにスバルが居ない場所で剣とか降っても何にもならねぇじゃん! それに見捨てるってなんだよ、そんなのスバルが言えることじゃねぇよ! だったら飢え死にしそうな俺も見捨てりゃ良かったんだろ!」
昴も春樹も幼いとき親に捨てられている。
春樹は兄弟が多くて家計が回らないからと捨てられ昴は生まれつきの病気の治療に回せる金が底をついたから。
半年はまともに食えず捨てられた春樹に手を差し伸べたのが昴であった。
その当時はまだ活発にとは言えないまでも普通に動けて食料を猪に見せかけてグチャグチャに荒らしながら畑を漁ったり川を泳いで魚をとり生き長らえていた。
それに反して当時の春樹は半月分の殆ど何も食えない期間を経て捨てられた事から既に動ける状態ではなかった。
そんな春樹を助けて食料を分け与え盗みかたを教え一緒に気分転換と我流の剣術を教えたのが昴だ。
その無理が祟って今の状態にまで急激に状態が悪化したのは言うまでもないだろう。
「お前に渡したい物があるんだ、売ったら相当な金になると思うんだよ。 ほら、前に絶対開けるなって言った箱あったろ? あの中に入れといたんだ綺麗な真ん丸の石」
その言葉に春樹はボロボロの我が家である物置小屋を見渡す。
そして目に留まったのは草を編んだ小さな箱。
「先生が言ってただろダンジョンコアの話、小さな半透明の石で売ったら何万にもなるって石。 その中に入ってるからさ、俺が死んだら生活の足しにしてくれよ」
「な、何言ってんだよスバル! 死んじまったらとか軽々しく言ってんじゃねぇぞ!!」
涙目で叫んだ春樹に嬉しそうな悲しそうな目を向けたスバルは・・・
「もう、痛くて辛くて何の役にも立てないのは嫌なんだよ」
と言って疲れたと言うように布団にくるまり寝る体制に入った。
春樹はまだ話したいようだが体に障るかもと我慢して小屋を出た。
春樹が帰ると部屋ではどうやって移動したのか昴が首を吊っているとも知らずに。