表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

神様に会いました

俺は(なかば)修一(おさむ)。どこにでもいるサラリーマンだ。会社では残業は当たり前、休憩なんてないに等しい。それでも日曜日が休みなので、俺がこの会社をブラック企業呼ばわりすることはない。――俺の昔勤めていた会社なんて、年末しか休みがなかった。今日は、俺の彼女に伝えたい大切な話があるので、レストランで彼女と待ち合わせをしている――


「おさむ~!待った~?」


横を通り過ぎれば、誰もが振り返るような美貌を持つ女性――そう、それが俺の彼女だ。俺には勿体ない程の相手だと自覚している。


「待ってないよ。姫乃(ひめの)。」


神崎(かんざき)姫乃(ひめの)。これが彼女の名。――ということはさておき、


俺は今日、姫乃を呼び出した本題に入る。


「姫乃。」

「なーに?」

「別れよう。」


姫乃は目を白黒させている。当たり前の反応だ。当然恋人からそんなことを言われれば、誰だって姫乃と同じ反応をするだろう。


「ど、どうして?私、何か悪いことをした?それとも私の顔がタイプじゃない?性格がタイプじゃないの?性格なら直すし、顔なら整形だって――」

「違うんだ姫乃。俺は君のことが心から好きだ。だから君には幸せになって欲しい。俺は君と釣り合っていない。これから先、ひとつ屋根の下で暮らしていこうにも、俺には収入がほとんどない。姫乃に苦労しか掛けない。だから――」

「何も違わねェよッ!!」


姫乃の豹変(ひょうへん)ぶりに驚く。


「ぁ、ごめんなさい……取り乱しちゃった。」

「姫乃、納得できるまで…何時(いつ)まででも待つから……」

「おさむ。私ね、おさむがいないとダメなの。」

「俺もだ。だけど――」

「毎日おさむの声を聴いて、毎日おさむの顔写真を見つめて、毎日おさむを想像する……それ以外をどおやって楽しみにすればいいのかな?」

「ひ、姫乃?」

「おさむはどうしても別れるつもりなんだね?分かった。じゃあ――」


姫乃はおもむろにカバンに手を突っ込む。

次の瞬間――


「……ッ」


胸が焼けるかのように熱い。気が遠くなりそうだ。

胸を見る。


(ほ、包丁!?)


血が溢れ流れ出る。


(ここで終わりなのか……。姫乃は優しくていい子だった……。俺が変えてしまったのか……?ごめんな、姫乃……。)


「――じゃあ、死んで?私も後を追うから。」


最後に聞こえたのは――姫乃の声だった。



♦♦♦


「――さん、お――さん、修一(おさむ)さん!!」


目を開ける。


(生きてる……助かったのか……?)


「おめでとうございます!!」


横を見る。白いドレス――そう、まるでウエディングドレスのような服を着た少女が立って――いや、浮いている……!?少女の頭には、()っか、背中には翼が……


(て、天使!?!?)


「ぴんぽーん!正解!」


(読んだのか……!?こ、心を……)


「はい!」


天使だという少女は続ける。


「では改めて……!おめでとうございます。修一(おさむ)さん。あなたは見事、この〈愛の天使〉ハニエルのお眼鏡に叶いました!よって転生権が与えられます!!」

「ちょ、ちょっと待ってくれ。」

「待ちません。」


ブゥンという音を立て、修一(おさむ)の前にディスプレイが浮かび上がる。


「転生者には特典として、能力(アビリティ)が1つ贈与(ギフト)されます。このスキルは、譲渡や破棄ができないので注意してください。」

「おい、能力(アビリティ)ってなんだ!?」

「答えません。」

「……」


修一(おさむ)の前には膨大な能力(アビリティ)が表示されている。

取り敢えず全て目を通してみよう、と修一(おさむ)はページの最後までスクロールする。


(百発百中!?即時回復!?攻撃力100倍!?強そうな能力(アビリティ)ばかりだ……)


すると、一番最後の項におかしなスキルが。


「……この、〈???〉ってのはなんだ?」

「それは、今だに取得した者がいないため詳細が不明なスキルです。」

「……これには答えてくれるんだな」

「それぞれの能力(アビリティ)の詳細については答えてもいい決まりになっています。」


(〈???〉か……どんな能力(アビリティ)なのか気になってきたぞ。)


そう、さながら中身のわからない福袋が気になるように。


「決めたよハニエル。俺はこの〈???〉の能力(アビリティ)にする。」

「……転生者とは会話をしてはならないという決まりなので、これは独り言ですが――〈???〉などという未知のものに手を出すのはあまりお勧めしません。これから第二の人生を歩むというのに、その能力(アビリティ)が村人――その中でも畑作をする者などが持つ、〈農業効率上昇(小)〉などのほとんど役に立たない能力(アビリティ)である可能性があります。」


(ええ……そんなのあるの……?? ――でも)


「忠告ありがとうハニエル。でも俺はこれにする。」

「……忠告ではありません。独り言です。――後悔はないんですね?」

「ああ。」

「……では転生者修一(おさむ)、素晴らしい第二の人生を。」


修一(おさむ)の身体が透ける。


「なあ、最後に一つだけ。……どこに転生するんだ?」

「……」


消える直前、修一(おさむ)の耳に聞こえたハニエルの声。


「…これは独り言ですが、元居た世界とは別の世界に転生します。」


―――修一(おさむ)の意識は、そこで途絶えた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ