表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追悼のオルゴール  作者: 青山空洞
1/1

 夕日に染まったブロンドの髪。動くたび繊細にたなびくそのロングヘアを、ロウラン・ヴィハインドは衝動的に切り落としたくなった。たまたま鏡の前を通り過ぎただけの時分に。

 適当に持ち上げた髪の束を、すぐそこにあったハサミで一気に切り落としていく。次から次へ足元に散乱していく髪の束。そして目の前には、まばらな長さで不自然な程横一線に揃えられた毛先。どう見ても不格好に映るその姿を、ロウランは少し誇らしげな表情で見ていた。真新しい自分がそこには覗いている。

「いいのか、自慢だったんだろ」

後ろから飛んできた声の方に目をやると、そこにはカルロス・ウィンズベルトの姿があった。腕を組みながら壁にもたれているカルロス。その口ぶりから、ロウランは事の端末を見られていたのだと推測する。

「……いいの。私なりの決意だから」

そう言った彼女の瞳は何処か寂し気だった。それはノスタルジックな気持ちにさせるこの夕焼けのせいか、夜に控えた決戦のせいか。カルロスは身体を起こすと、ロウランの背後へと回った。

「ハサミを貸せ、自分じゃ後ろは上手く切れないだろ」

「……あ、ありがとう」

ちら、と見上げるロウラン

「どうした?」

「変にしないでね」

カルロスは自信に満ちたようにその口角を持ち上げた。任せとけ、彼の表情からそう受け取れたロウランは素直に前を向く。そして次第に髪を切る音が聞こえ始めた。ロウランの毛先に優しく触れるカルロスの手が、感触として温度として伝わってくる。

 ロウランは突如下を向き、勝手に流れる涙を腕で拭い始めた。

「ごめん……切りにくいよね」

「いや、……。」

 少し驚いたカルロスだったが、すぐにまたその手を動かし始める。お互い特に何かを話す訳でもなく、濃厚なオレンジの、静かな時間だけが経過していった。

 そこに言葉などいらなかった。彼女の涙の訳をカルロスは知っている。それは今宵の決戦において、父を殺しに行かねばならない娘としての葛藤の涙だ。



続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ