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02 鬼ごっこ

突然現れた草原。

理解できずに呆然としていると左頬に痛みが走る。

「いてぇ!」

「夢じゃないみたいだよ兄ちゃん…」

頬をつねった手を腰に当て、奈津は思案顔をしている。

「そういうのは自分で痛みを感じないと分からないんだぞ。」

そう言って両頬をつねり返してやると奈津は痛い酷い離してと手をぶんぶん振り回す。

「あれ、お兄ちゃんそんな指輪してたっけ?」

つねられる指に違和感を覚えたのかそんな疑問が飛んでくる。

それを言われて人差し指にキラリと光る物体に初めて気が付く。

「なんだこれ」

特に飾り気のない銀色の指輪。

本当になんだこれ。着けた覚えのない指輪に気持ち悪さを感じる。

こういうものはつけないし、趣味でもない。

「けっこうカッコいいじゃん!」

「いや気持ち悪いから外すわ。」

そう言って指輪を取ろうとした瞬間生ぬるい空気が首の裏を撫ぜる。

「ひゃへっ。」

変な声出ちゃったじゃん…変な悪戯やめろよな…と奈津へ恨みがましい視線を向けると背後に大きな影が覗く。

2メートルを超える巨体で鼻息を荒くしている真っ黒な猪。

奈津も後ろのソレに気付いたようで顔を青くしている。

「に、兄ちゃん。こういうのって逃げたら襲ってくるんだっけ?」

「言ってる場合かっ!」

既に大きな頭を振りかぶっている猪を見て奈津の手を引き横に回避する。

猪が頭を振り下ろすと土埃が舞い地面が大きく抉れる。

当たったら死ぬ。奈津の手を引き一直線に逃げ出す。

こうして俺達と猪の鬼ごっこが始まった。



ーーーーーーーーーー


「まだ来てるのかな…」

「多分な…匂いかなんかでついてきてるんだろ…」

瓦礫の影から顔を覗かせ追跡者を探る。

草原の鬼ごっこはすぐに終わりが来た。草原の先には遺跡の残骸ようなものがあり、上の開けた迷路のようになっていたからだ。

分かったことが二つ。あの巨大な猪は思ったほど足が早くないことと、遺跡の中にも何やら生物がいることだ。

先ほど肌が緑色をした醜悪な小人を見つけた。

所謂、ゴブリンというやつだろう。

ゲームとかでは雑魚だが、武器を持っているというだけで恐ろしい。

気付かれなかったが気付かれていたら、殺されていただろう。

「ゴブリンまでいるとかファンタジーっぽくなってきたね!」

「トラックの方がましだったかもな。」

軽口を言えるのもそろそろ限界だ。

先に進もうにも慎重にならざるを得ないし、後ろからは猪が来ている。

喉も乾いてきたし、奈津の顔にも疲れが見える。

詰んだ、かもしれない。

「ひとまずこの遺跡を抜けよう。きっと人がいるさ。」

だが、奈津の前で弱気は見せられない。

諦めたら何とかってどこかの先生も言ってたしな。

「カランカラン」

足が糸を突っ張るような感覚の後乾いた音が反響する。

「鳴子!?こんなものまで…」

長い逃走劇で疲れきった脳と体で足元にまで注意が回らなかった。

そもそもゴブリンたちがこんなものを仕掛けるなんて知らないし、そこまでの知恵があるようには見えなかった。

考えが甘かった。

「くそったれ」

きっとゴブリンたちも近くまで寄って来ていることだろう。

来た道を引き返すしかない。

振り返り角を曲がると、そこには絶望が立っていた。

大きく鼻息を漏らし突撃の体制をとる猪。

真っ直ぐに突進してくる猪を奈津を後ろに回らせて横に回避しようとする。

だが、猪も学習しているらしく頭を横に薙ぎ俺は吹き飛ばされる。

石に叩きつけられ意識が朦朧とする。

立ち上がろうとすると痛みが全身を打った。

ぶれる視界に奈津に向けて大きな牙を剥こうとする猪が映る。

また失うのか。

指先に熱さを感じる。

両親を失って、今目の前でたった一人の家族さえ奪われるのか。

熱さが指先から腕にまでじんじんと広がっていく。

もう失うのはたくさんだ。

もう奪われたくない。離したくない。この手でーーーーー

指輪が光となり両腕を包み込む。

ふらふらと立ち上がり熱さを感じる両腕を見ると白銀のガントレットが覆っていた。

微かに腕が重い気がする。

少しだけ力が戻ってくるのを感じる。

何が起こったかはわからないがこの現状を打破できるかもしれない。

涎を垂らして奈津を見ている間抜けな顔。

今すぐその横っ面吹き飛ばしてやる。

「ウォオオオオオオオオ!」

助走をつけ思いっきり殴り付けると猪の牙は砕け散り音をたて横に転がり、倒れる。

「やったか?」

急に力が抜け膝をつく。ガントレットが消えていく。

「兄ちゃん!」

奈津が駆け寄ってくるのが見え、安堵したのは一瞬だった。

その背後にゆっくり起き上がる猪が見えたのだから。

足りなかった。

守れなかった。

もう一人で立つ力さえ残っていない。

「兄ちゃん…」

奈津に抱きしめられると覚悟を決める。

「先陣激槍。危ない所だったな。」

一瞬のことだった。

男の声が聞こえたかと思うと猪は悲鳴を上げるまもなく頭を貫かれ絶命し、いつの間にか立っていた男に槍を引き抜かれ血飛沫を上げる。

ああ、助かったんだな。

そうした安堵からか俺は意識を手放した。

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