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転生勇姫  作者: 万十朗
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スイーツ・リボン 2

 例のイベントの話を聞いてから改めて城下町を見渡すと、なるほど確かに菓子、とりわけチョコレート売り場が増えている。

 甘味が嫌いな訳ではないが、特別目がないというほどでもなく……いや、それにしても見落とすには露骨だった。


「もう少し町の変化を気に留めねばならぬな……」

「おや、マオルーグ殿ではありませんか」


 上等な布地の手触りを連想させるような、穏やかで柔らかな声がかけられる。

 ふと振り返れば、騎士団隊長のスカルグが買い物袋を抱えて微笑んでいた。


「……それは?」

「明日は『スイーツ・リボン』ですから、売り切れる前に準備をと」

「まさか作るのか? 女が男に贈るものだと聞いていたが」


 するとスカルグははにかみながら抱えた袋の中身に視線を落とし、


「ファイが教えてくれたんです。隣国のリオナットでは男性が女性に贈るのだと」

「リオナット……ラグード王子の情報か」

「それからカノドでは日頃の感謝を伝える日、という意味合いが大きいそうです。確か義理とか、友とかつくようで」


 割と節操なく贈り合いそうだな、カノドは……

 情報源は言うまでもなくマージェス王子なのだろうが、リオナットといいカノドといい、双方の王子らしい内容だと思う。


「なので私は姫様に、日頃の感謝をこめて何か作ろうかと思います。ファイに教わりながらですけど」

「ふむ、たしか勇者……姫も貴様の作ったものが食べたいと言っていたな」

「はい。それも兼ねています」


 なるほど、それは勇者も喜びそうだ。

 剣では弟子のファイが、菓子づくりの時には師になるのか……そう考えると、少し可笑しくなる。


 前世の敵同士が、互いに指南しあう仲に……か。


「マオルーグ殿?」

「いや、なんでもない。それより、完成したら我の分もあるのだろうな?」

「ええ、もちろんです。貴方の分は甘さ控えめにしておきますね」


 己の力を信じ、剣の道に生きて散った前世の部下スカルナイト。

 ただひたすらにストイックな武人だった男が、その記憶がないとはいえ、平和な世界ではこうも……こうもっ……!


 優しく細められた勿忘草色の目が、我にはひたすらに眩しい。


「マ、マオルーグ殿……!?」

「なんでもない……貴様は幸せになるのだぞ……!」

「えっ? あ、ありがとうございます……?」


 いかん、目頭が熱くなってきた。


(マオルーグ殿……感激するほどお好きなのだろうか……)


 後日、何か勘違いしたらしいスカルグから結構な量のチョコレートを贈られるのだが、それはまた別の話。

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