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転生勇姫  作者: 万十朗
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マオルーグの休日・4

 やたら顔が整ったキャラの濃い王子どもに遭遇しない場所、となれば自室に引き篭もるか騎士団のもとに行くのが一番良いのではないか。

 そう思った我はさっそく騎士団本部に足を運ぶことにした。


「マオルーグ殿」

「む……スカルグ隊長」


 白藍の髪に色白の肌と全体的に真っ白なこの男は前世では我が部下で白骨の騎士スカルナイト。

 今も騎士団の隊長を務めているスカルグ・ギルツ……濃い連中の後に会うととても癒される、常識人枠だ。


「今度はこちらが来たか……」

「ぬ?」

「あっ、いえ、ちょっとした独り言です。気になさらないで下さい」


 どうせ勇者が剣の相手をせがみに来たのだろうが、それならわざわざ隠す理由もないのでは?

 気になる、といえばもうひとつ。


「……スカルグ殿は誰にでも敬語で?」


 スカルグは確か我より十ほど年長だったはず。

 前世ならともかく、今の我はスカルグから見れば流れてきた新参者の若輩になるのではないだろうか。

 初対面ならともかく、そろそろ慣れた頃合だし、今なら“姫”も傍にいない。


「いいえ、むしろ部下達やファイには……どうしてでしょうね、自分でもわからないのですが」


 言葉を探しているのか、置きどころのない視線を彷徨わせ困ったようにスカルグは笑う。


「何故かマオルーグ殿には威厳や気品のようなものを感じて……自然と敬語になってしまうんです。あ、私のことはどうぞ呼び捨てで砕けてくださって大丈夫ですよ」


 う、う、愛い奴ーーーー!


 マオたんなどと雑な呼び方をするどっかの勇者とは大違い……いや、そもそも奴は我が部下でもないから当然といえばそうなのだが。


「……ならば遠慮なく呼ぶぞ、スカルグ」

「はい、そうしてください」


 そしてこの感じ、とても前世を思い出す……落ち着く。


「ああ、そうだスカルグ、もうひとつ聞きたいことがあった」

「はい」

「勇者……姫に剣を贈ったな。それも飾りでなく実用的で上等な品を。あれは何故だ?」


 強き者との戦いに喜びをおぼえ、特に幾度となく剣を交えた勇者とは互いに認めあう好敵手のような関係となっていったらしいスカルナイト。

 だが平和な世界で穏やかに生きるこいつが、非力な姫に転生した勇者に剣を贈る……その理由が気になっていた。


「彼女は……姫様は、剣士ですから」

「あのか弱い姫がか?」

「確かに少女ですから、力はありません。ですが剣を手にした時の“眼”……それに、時折見せる剣筋や体捌き。姫様にはきっと剣の才能がおありなのでしょう」


 まあ、それはそうだ。

 前世の記憶や感覚は残っているから、あとは体がついてくればあの小娘は歴戦の勇者様だ。


 我も、貴様も、あの剣に打ち倒されたのだからな。


「だから、給料の何ヶ月分もする剣を贈った……大丈夫なのか、金は?」


 切れ味鋭く軽量な魔法金属の剣がいち騎士の給料で容易に買えるとは思えんが……


「大丈夫ですよ。どうせ使い道のないものです」

「は?」

「私は独り身ですし、趣味と言えるものも、これといって欲しいものもありませんから」


 おまっ、お前……勇者と戦っていた頃ならいざ知らず、この平和で穏やかで豊かな時代にっ……!

 ほんとに戦うことしか生き方を知らぬ奴め!


「貴様はもう少し欲と趣味を持て!」

「えっ? は、はぁ……」


 次の休暇はコイツを街に連れ出すぞ、よし決定。

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