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終末の時計 Armageddon Clock  作者: 著:水無月龍那/千歳ちゃんねる 原作・GM:烏山しおん
3:Fact or Fiction
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SCENE5 - 2

 先日送信したメールは、エラーになることなく届いていた。

 その後幾度かのやり取りを繰り返し。

 京都に居るみあが戻ってくるという新幹線の到着を待って、集まることになった。

 

「お待たせしました……あれ、まだみあちゃん来てないんですね」

 駅にある喫茶店でだらだらと時間を潰していた司とリンドが顔を上げると、霧緒が立っていた。

「そろそろ新幹線到着する時間だから、もう少し待てば来るんじゃないかな」

 コーヒーをすすりながら答えると、彼女はそうですか、と頷いて空いた席へと着いた。

「リンドも久しぶりだね」

「ああ。キリもあれから無事だったようだな」

「うん、まあ。ね」

 あはは、と彼女はリンドの言葉に苦笑いで答える。

 そんな二人のやり取りを眺めていると。

「――はあい。元気してた?」

 横から声がかかった。

 来たか、とそちらに視線を向けて。

「……みあ、何それ」

 彼女の持っている包みに視線を奪われた。

 みあの身長ほどもありそうな、細長い布包み。なだらかな曲線を描くそれは一体。

 だが、彼女はその問いに答えず「リンドはこっちに来てから会うのは久しぶりだっけ」と、空いてる椅子へ腰掛けた。

 にこやかに声をかけられたリンドは、みあをどこか警戒した目で見ていた。

 視線が気になったのか、みあはリンドに「何?」と疑問そうな目を向ける。

「いや……」

 少しだけ言いにくそうに視線を逸らし、見上げて口を開く。

「ちょっと、変わったか?」

 みあはその問いに軽く首を傾げる。

 そんなやり取りを見ながら、ああそうか。と司は納得する。

 リンドはまだ、このみあに会っていなかったのだった。

「いや、単に被ってたネコを脱ぎ捨てただけだろ」

「あら酷い言い方ね」

 そう言って笑うみあをリンドはしばらく怪訝な目で見ていたが、どこか諦めたような溜息をついた。

「それでみあちゃん。それは?」

 霧緒もみあの持っていた物が気になったらしい。視線でそれを示しながら、問いかける。

「ん? ああ、コレは葛城の家で貰ったお土産」

「葛城?」

 リンドが首を傾げた。

「うん。桜花さんち」

 その回答にリンドは「ああ」と小さく頷き。

「でも、何をしに?」

 と問いを重ねた。

「そりゃあ――この」

 と、みあは自分の右手をとんとんと示し。

「紅い石。白い異形。そして、この歪んだ今を正す方法を探しに、かな」

 と口元で少しだけ笑う。

「ふむ。――それで、見つかったか?」

 みあはその言葉にはふるりと首を横に振った。

「結局見つからなかったわね。ただ――面白い人に出会ったわよ」

「へえ、どんな?」

 みあはそうね、と少しだけ思い出すような仕草をして。

「紅い石について、知ってる人」

 と紅い石について得た話と、京都で出会った少年についての説明を置いた。

「多分司くらいの年で……白い髪で。怪我だらけで――」

「……ん?」

 司がその情報に疑問そうな声を上げた。

「なんかそいつ、末利んとこに居たぞ?」

「え……末利の所に?」

 きょとんと聞き返すみあに、うんと頷く。

 彼女の説明する人物像は、覚醒技術研究所に居た、末利の古い友人だというあの少年そのままだった。

「うん。そんな特徴的なヤツ、二人居ても困る」

「どういう関係かしら……」

 考え込むような仕草で視線を落としたみあに「さあ」と小さく答える。

「なんでも――あちこちふらふらしてる古い知り合いだそうだが」

 詳しいことは聞いてない、と言うと、みあは「そう」と小さく溜息をついた。

「聞けたら後で末利に聞いてみましょ」

 それで、とその話は打ち切って、みあは他のメンバーをくるりと見回す。

「リンドに司。霧ちゃん。あれから何かあった?」

 軽く近況を尋ねる一言だったが、リンドと霧緒が少しだけ視線を落としたのが見えた。

「それなんだが……」

 と、先に話を切り出したのはリンドだった。

「あれから、ユウキに会った」

「あら。良かったじゃない」

 みあの一言に、リンドはうむ、と頷くもその表情は難しいままだった。

「今は家出をしているがな……」

「あら」

 そうなの? と首を傾げるみあから視線をずらしてうむ、と頷く。

「どうやらこの世界では、オーヴァードになるための覚醒試験というモノがあるらしい……ユウキはそれを受けると――オーヴァードになると、言っていた」

 だが、とリンドは首を振る。

「俺は反対したが、アイツは怒ってな……」

「家を出て行っちゃったんだね。覚醒試験……私はその話を聞いたのは初めてだけど、オーヴァードになるのって試験が必要なの?」

 リンドの言葉を繋いだ霧緒が、そのまま疑問を口にする。

「いや、アレは試験ですら無いよ」

 口にしたカップを置いて、彼女の疑問に首を振った。

「“クイーン・オブ・ブルー”があんまりに無差別且つ広範囲だった事に対する、対策みたいなもんさ」

 と、前置きをして、昨日の末利との話を簡潔に話すと、霧緒は眉をひそめたものの、どこか納得したような顔をした。

「覚醒試験……ね。近々暴走するって言う結晶憑きは、その試験が怪しいのかしら」

 彼の言ってることを信じればだけど、とみあも表情を険しくする。

「悪い予感がするな」

 リンドも渋い顔をして尻尾を揺らす。

「まったくだな。――で、霧ちゃんは何か進展あった?」

 話題を変えるように問いかけると、彼女はいいえ、と小さく首を横に振った。

「あら。霧ちゃんも何かあったの?」

 みあの問いには、こくりと頷く。

「みあちゃんが来た時に出て行ってから……水原さんが帰ってこなくて。探し回ったんだけど……」

 ダメだった事を示すように、首を横に振る。

「あれ、まだ見つからないの?」

 司が挟んだ言葉に、今度は頷く。

 その彼女の仕草に、みあは「そう」と小さく呟きを返した。

「水原さんがね……霧ちゃんを裏切ってどこかに駆け込んだのか、それとも霧ちゃんを匿ってたことがバレて……か」

「ウチの組織は綺麗さっぱり消し去る事に関しては定評があるらしいよ最近」

 軽い調子でそう言うと、霧緒がムッとした顔で視線を上げた。

「河野辺さん。悪い予感を倍増させるようなこと言わないでもらえますか?」

「や、すまない。なんか最近人生について考えることが多くてつい……憑かれてるのかな俺」

「全くツカサは……キリも。ツカサがこうなのは分かっているだろう」

 リンドが鼻を鳴らすと、霧緒は「そうだったね……うん」と諦めたような顔で頷いていた。

 なんか酷い言われようだ。

 だが、猫はそのような事を気にかける様子も無い。兎も角、とリンドは尻尾をぱたりと鳴らす。

「ユウキを待っていたが、探しに行く。受験を止められれば幸いだし、止められないにしても……なにかやれることがあるかもしれない」

「リンドそれさ。研究所で待ち伏せしたら?」

 ふとした提案に、リンドのヒゲがぴくりと動いた。

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