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終末の時計 Armageddon Clock  作者: 著:水無月龍那/千歳ちゃんねる 原作・GM:烏山しおん
3:Fact or Fiction
89/202

SCENE4 - 6

「ところで霧ちゃん」

 霧緒のカップが空になったところで、司は口を開いた。

「はい?」

「改めて聞くけど。これからどうするつもり?」

 ああ、と言葉を繋ぐ。

「勿論、さっきのとは違う意味でね?」

 そう付け足すと、彼女はその意を掴んだようだった。

「これから、ですか」

 そうですね、と霧緒は少しだけ目を伏せる。

「“この世界”に対して、と言う話であれば、私は、元に近い世界へ戻したい。そう考えています」

 今後の行動という意味ならば、と彼女は言葉を続ける。

「まずは、水原さんを探します。もしFHに捕らわれているならば――助けに行くつもりです」

「ふうん……何で?」

「え?」

 霧緒が質問の意を測りかねた顔をする。

「うん。君と彼がどんな関係だったか知らないけどさ。この世界は俺達が居た世界とは別物なんだよ?」

「――それでも、ですよ」

 その声は、静かだった。

「水原さんは、私にとって大切な人の一人です。みあちゃんも河野辺さんと同じ事を言ってました。世界が違ったらそれは違う人かもしれません。ですが――少なくとも。この世界で私を助けてくれたのは、あの人です。放っておく理由はありません」

「そう」

 興味なさげに響いたその返事にも、彼女は「はい」と素直に頷いた。

「河野辺さんは」

 頷いたそのままの声で、今度は霧緒が問いかける。

「河野辺さんは、どうするんですか?」

「俺?」

 こくんと頷いてじっと見つめるように答えるのを待つ。

「俺は、上司から好きにやっていって言われたから、そうさせてもらうつもり」

 ふむ、と霧緒が小さく頷く。

「日常が欲しいって言ったけど――この世界はそんなのほど遠いし、俺達が普段感じてた“非日常”なんて及ばない位に“非日常”の世界だからね。ここじゃあ手に入る気がしないし」

 そうだなあ、と空になったカップから視線上げて、呟く。

「やっぱ世界征服かなあ……」

「え」

「……冗談だよ?」

「ですよね……」

 本気だったらどうしようかと思いました、と彼女は少しだけ笑った。

「冗談はともかくとして、俺も霧ちゃんと一緒だよ。出来るだけ同じ世界に戻したい。――さしずめ、霧ちゃんはそんな非日常に放り込まれた、たった四人しか居ない仲間のうち一人、かな?」

 霧緒はその言葉に少しだけ不思議そうな顔をした。が、それは一瞬だけで、すぐに嬉しそうな表情に変わる。

「そうですね。仲間ですね」

 それにしても、と霧緒の言葉は続いた。

「仲間って単語、最後まで言わなさそうだと思ってました」

「なにそれ酷くない?」

「ふふ……すみません」

 くすくすと笑いながら謝る彼女に、いいけどね、と小さく溜息をついた。

 

 会計を終えて外に出ると、日はすっかり沈んでいた。

 店の前でマフラーと帽子の位置を直して、霧緒が司の方へと向き直り、ぺこりと頭を下げた。

「それでは、今日はありがとうございました」

「どういたしまして。それじゃあ」

 彼女が頭を上げる前に、帰り道へ足を向ける。

「次に会う時は殺し合いじゃない事を祈ってるよ」

「そうですね。それでは、お気をつけて」

 そんなやり取りと二つの足音は、夜が降りた道の奥に消えた。

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