ENDING
■ case:xxx
UGN中央評議会の円卓を囲む影。
その中に霧谷の姿もあった。
「お疲れ様、“リヴァイアサン”。詳しい話を聞きたい所だけど……難しいわね。とりあえず作戦成功おめでとう」
肩にフクロウを乗せた少女が霧谷に労いの言葉をかける。
「ありがとうございます」
言葉ではそう言ったものの、目にはまだ緊張を緩めた色は無かった。
「……まだ、何か懸念点がありそうね」
「はい」
「当てて見せましょうか?」
肩のフクロウを軽く撫でて、少女が椅子に座り直す。
「“あれが最後の敵とは思えない” 違う?」
「その通りです。カオスガーデンからの報告書では“イーター”とも称されているその隕石が、一つだという可能性の方が低い」
しかも、と霧谷は言葉を続ける。
「その次の襲来がいつになるのか――今回の隕石接近をも予測し得なかった我々に、地球上から次の隕石、イーターの襲来を止める手段は殆ど無いと言って良いでしょう」
ですから、と霧谷は手にした書類を示す。
「最悪でも、地表に到達する事だけは避けなければなりません」
「Albatross」と書かれた表紙を捲り、霧谷は言う。
「――例え、何かにぶつけてでも」
■ case:xxx
「“プランナー”、何をしておられるのです?」
不思議そうに問うエージェントに、都築京香はいつものように微笑みを浮かべたまま、キーボードを叩く。
ディスプレイに表示されていくのは、文章のようでいて、プログラムのようでもある。
計算式。文字列。図形。グラフ。それらが次々に打ち込まれ、表示されては流れていく。
「隕石が撃破された瞬間から、情報が光速で伝達されたと仮定し、再襲来の予測時間を計算しています」
エージェントは宇宙を思い浮かべ、その広大さに思い当たった所で困惑した顔をした。
「勿論、宇宙全てを対象にしていては時間がかかります――敵が存在している確率の高そうな惑星位置を数千パターンに絞り込んで計算しています」
「……はあ」
エージェントらしからぬ、雲を掴み損ねたような返事は、カタカタと叩かれていくキーボードの音に紛れて消えた。
部屋に響く打鍵音。しばらくしてそれは鳴り止んだ。
彼女の細い指がマウスに触れると、隣にあったプリンタが数十枚の紙を吐き出し始めた。
数センチの厚さになったその紙束をとんとんとまとめたプランナーは、それをエージェントへ差し出した。
「これを建設部門に回してください。記載の通りにせよ、と」
ずしりと重く、まだ暖かいそれを受け取り、まじまじと見つめる。
「建設へ……、ですか」
敵の予測時間を計算していたはずではなかったのか。一体何を作るつもりなのか。
その疑問を持ったままの瞳でプランナーを見上げると、彼女はその質問を読み取ったのか、微笑んで答えた。
「ええ。建設です。――スペースコロニーを作ってもらいます」
こうして舞台は宇宙に続く。
これにて完結です!