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終末の時計 Armageddon Clock  作者: 著:水無月龍那/千歳ちゃんねる 原作・GM:烏山しおん
5:Temple of the False God
196/202

ENDING1 - 3

「――あ」

 司が唐突に声をあげた。

「ろしたの? 司」

 みあがふらりと首を傾げる。

「みあ、お前ほんとに大丈夫か……? いや、まあ。何でもない」

 ちょっと用事思い出しただけ、と司は霧緒の腕からリンドを抱き上げる。

「と、いう訳でだ。リンド。お前を送り出す前に約束を果たそう」

「お。マグロか」

「うむ。マグロだ。約束通りたらふく食わせてやるから食いに行こうぜ」

 そのままリンドを抱えた司が輪を一歩抜け出すと、リンドは腕をするりと抜けて肩に収まった。

「よし、たらふくだぞ」

「はいはい」

「行ってらっしゃい。……それと、彼女に会うなら一応よろしく伝えといて頂戴」

「……うわお。バレバレかよ」

 司は思わず小声で呟いた。一言も上司に挨拶に行くなんて言ってないのに何故バレたし。背筋になんだか寒い物を感じたのは、気付かなかった事にした。

「それじゃ、またな」

 ひらっと手を軽く振って、司とリンドは歩き出す。

「ええ、またね。あらひ……あたしも、そろそろ行くわ」

 じゃーねー、と手を振って、軽い足取りで司に付いていく。駆け足で司とリンドを追い越し、屋内へ繋がるドアの向こうへと消えていった。

 霧緒は立ち去る人達の背を、霧谷と共に見送る。


「――またな、か」

「うん?」

 薄暗い階段を降りる司の肩でリンドがぽつりと呟いた。

「それは、叶えられる願いだろうか」

「どうだかねえ」

 司は気楽な声で言う。

「人生……お前の場合は猫生だろうけど、何があるかわかんねーからな」

 少なくとも、と言葉が続く。

「俺はこんな目に遭うとは思ってなかった」

「……だろうな」

「おう」

「ツカサは良いな」

 リンドは頬をすり寄せるようにして、笑った。


 そうして、二人は一枚の扉の前に辿り着く。階段からフロアに繋がるドアに手をかけ、重い鉄の扉を押す。

 明るいライトに照らされたフロア。賑やかな人混み。並べられた売り物。館内放送の音楽がそれらを更に明るく演出する。


「よし、それじゃあとりあえず……築地だな」

「馬鹿。マグロなら大間だろう」

「待て。この時期大間はまだ居ないぞ――えーっと」

 端末を弄り、口の端を曲げる。

「この時期ってマグロ少なくね? ……山口とか長崎とかなんだけど」

「じゃあ、そこからだ」

「……はいはい」

 こうして猫と少年は、雑踏に混じっていった。

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