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終末の時計 Armageddon Clock  作者: 著:水無月龍那/千歳ちゃんねる 原作・GM:烏山しおん
4:Riptide Laboratory
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CLIMAX - 7

「さて、弟くん」

 一仕事終えた、と言わんばかりに、司は銃口を向けた“司”ににやりと笑って声をかけた。

「さっきの銃弾と霧ちゃんとの連携攻撃。凄くいい体験だったよ。今後に生かせるものだった。彼女が居そうな任務は全部外してもらうよう懇願しよう。――と、言う訳で。君の要望に応じてこの銃を手放してあげよう」

 言うが早いかその手から銃を手放す。


 “司”はそれに眉をひそめた。挑発だというのはバレている。だが反応はそれだけ。司が作った「隙」に、ありったけの銃弾を撃ち込む。

 が。それも司の計算通り。銃弾を避けるように身体を捻らせて避ける。それでも避けきれない物は、間に居る霧緒が重力で勢いを殺し、地面へと落とす。


 そして肩の後ろから回し込むように構えたのは――研究所で手に入れたグレネードランチャー。

 スコープから見える景色は、エレベーターの中で確認した。覗くまでもない。


 その視界を脳内で展開し、引き金を引く。

 いつもの銃とは異なる反動に、身体を支える足に力が入る。

 それが霧緒の髪を掠め、着弾するより先に、次の弾を充填する。


 もう一発。

 更にもう一発。


 砲撃音に混じって銃が地面に跳ねる音がした。

 その音だけで位置を把握し、浮いた所を軽く蹴り上げる。

 そのグリップを左手でキャッチすると、最初から手元にあったかのように照準を合わせ、引き金を引く。

 大量の銃弾が、目の前の“自分達”を襲う。


 だが、“司”の隣に――自分達の目の前に立ち塞がるのは“霧緒”だ。


 鎌を持つ手に力を込めて、彼女の視線が銃弾を見つめると、彼女の意志に応えるように、黒い鎌に目が見開いた。


 そして次の瞬間。

 そこにあったのは、鎌を振り切った姿の“霧緒”と、落ちた銃弾達。

 一緒に飛んできた水の刃すらも残さず、全て不発のまま斬り落とされ、叩き落とされ、水浸しになって散らばっていた。


「――やっぱりね」

 司の口元が、にやりと吊り上がる。


 バロール特有の「奥の手」。時間を止めてその攻撃を無効化するという、霧緒が覚醒技術研究所で使用したあの能力を、もし目の前の彼女も使えるならば。使ってくるに違いない。


 そう踏んだ予想は、見事に的中した。

 それは、肩で息をする“霧緒”の睨み付けるような目がしっかりと物語っていた。

 そしてあれは、消耗が激しい。そう何度も使える力では無い筈だ。

 ただ浴びせられる銃弾。それに対して、それだけの切り札を使わざるを得なかったこの状況に対する憤り。それとも焦りか。

 そんなの知った事ではない。


 そんな彼女の影から、“司”が霧緒へ駆け寄る。

 司の銃弾を全て避けて放たれた銃弾は、目の前に立つ霧緒の腹部に埋まり、腕を掠める。

 動こうとした霧緒の表情が変わる。霧緒が立つその場所だけ、重力が身体の動きを制限する。

「させません」

 “霧緒”の冷たい瞳が光る。

 霧緒がその重力を相殺するより先に、ギリギリまで近寄った“司”の銃が霧緒のこめかみを殴り飛ばす。

「――っ!」

 霧緒の膝から力が抜ける。

「おっと。膝はつかせてやらねえよ?」

 地面に膝をつくより先に、“司”の銃弾が腹部を撃ち抜き、正面からの蹴りが入る。

 霧緒の身体が飛ばされる、が、彼女は鎌を持たない方の手で地面を受け止めてダメージを殺す。滑るブーツの底が、水飛沫を上げる。

 勢いを殺し、がつ、と鎌を地面について立ち上がる。

 出血は酷く、ぱたぱたと落ちる血が地面を濡らす。蹴られた腹部を押さえ、口内に込み上げる鉄の味に耐える。腹部を押さえる手は、すっかり血の気をなくしていたが、出血の量はみるみるうちに減っていた。

「おー。まだ大丈夫そうだな?」

 司が声をかけると、彼女は肩で呼吸しながらも「ええ」と頷いた。

「まだ……こんな所で倒れるなんて事、いたしません……よ?」

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