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終末の時計 Armageddon Clock  作者: 著:水無月龍那/千歳ちゃんねる 原作・GM:烏山しおん
4:Riptide Laboratory
124/202

SCENE2 - 1

「……外から見ても大きかったけど、随分と広いわね」

 みあはそんな感想を漏らした。


 ガラスを踏み割りながら入った建物の中は薄暗いが、外から入る光である程度の視界は確保できていた。木と石で作られたそこは、古い建物特有の埃っぽさとは違う、何物かが暴れたような、かき回されて荒れた空気と埃を感じる。


 入ってすぐの所にあるのは小さなホール。そこから右にはドア。左には木製の階段。奥へは三つの廊下が延びている。

「なんつーか。外見に比べて中は昔の研究所って感じだな。ここから情報を探せ、って末利もまた無茶を言う……」

 天井を見上げた司も、呆れたような声を上げる。

「でも、最後の意地悪って言ってたし、この位当然か……」

 そうね、と小さく相槌を打って、思案する。

 紅月は急がなければ島も情報もなくなると言っていた。司の言う通りこの建物は広い。外観から少なく見積もっても三階建て。しかも随分荒らされている。

 この中から情報を探すのは大変だろう。


「ここは一度分散した方が良いかしら」

「この建物でか?」

 リンドが司の肩の上から声を上げる。

「この中は嫌な気配がする。単独行動は気が進まない」

「嫌な気配?」

 リンドはああ、と頷いて落ち着かないようにヒゲをはじく。

「ワーディングのような……いや、それとも何か違う。兎角、嫌な気配だ」

「そう。でも、この建物の中だもの危険は承知よ。ジャームや、もしかしたらこの世界のあたし達だって――」

 と、みあは一旦言葉を切る。

「どうした?」

 リンドの問いにみあは「ちょっとね」と考える。


 紅月は「俺達も急ぐ」と言っていた。それが意味する所。

 既に彼らは情報を持っていて、行き先は決まっている。


「彼らも急いでる……尚更、皆で一部屋ずつ調べて回る程、無駄にできる時間はないわ」

 それに、とみあは言葉を繋ぐ。

「ジャーム位なら一人で対処できるでしょ? 無理と判断したら逃げて誰かと合流するなり、ワーディングで救援呼ぶなりすると良いわ」

 そう言うとリンドはぐう、と小さく喉を鳴らした。

「単独って言っても」

 口を開いたのは霧緒。

「このフロアを手分けして、終わったら二階、という風にするんでしょう?」

「もちろんそのつもりよ」

「それなら何かあった時に声とか気配とか届くだろうし、時間がかかってる場所があるならすぐに気付けると思うから、良いんじゃないかな?」

「……それなら、まあ」

 リンドも渋い顔ながらも頷く。

「よし、それなら決まりだ。ほら、リンド」

 と、司がリンドを肩から押し出すようにして下ろす。

 ガラス片を踏まないよう器用に着地したリンドの尻尾は小さく揺れている。警戒しているのか、その顔も渋い。

「それじゃ、まずはこの階からね。あたしは左の廊下の奥から見ていくわ」

「では、私は右を」

「んー……真ん中行くかな」

「それじゃあ、皆。また後でね」

 その一言を合図に、全員の足が研究所の奥へと進んだ。

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