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OPENING
何故だ。と、彼らの眼は常に疑問を発していた。
何故、私はあんなことをしてしまったのだ。
何故、俺に平穏は許されないのだ。
何故、俺では駄目なのだ。
何故、俺には救えないのだ。
何故――――この世界には未来がないのだ。
何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。
老人にとって、一つ一つに答えることは容易だった。
そして同時に、意味のない事だとも知っていた。
それは老人自身が、その原因の一端だからでもあることがひとつ。
何を言ったとしても、最早何の救いにならないのも理由のひとつ。
そして老人にも、彼らを救う為に何かをする時間は残されておらず。
彼らの苦悩が老人にぶつけられることも、ついぞ無かった。