SCENE6 - **
少年は、ベッドから起き上がった。
何気なく体重をかけた手に痛みを感じて、包帯を思い出す。
「あー……。早く治んないかなコレ……」
そんな事言いながら、腕を伸ばしては顔をしかめ、曲げては小さく呻く。
動かさない方がいいというのは分かっているが、それがもどかしい。そんな様子だ。
「そうは言うがな。傷は深かったんだ。仕方ないだろう」
隣で、小さな影がもそりと動いた。
「まあね。大体あんなドデカイなんて聞いてないし……生きてるのが奇跡、ってやつか」
はあー、と少年は盛大な溜息をついてベッドに転がった。
「このままじゃ身体なまりそう」
「後三日もすれば大丈夫だろう。大人しくしてろ」
「――そうですよ。あそこに再度挑むというのなら万全ですら足りないかもしれないんですから。今は療養に専念すべきです」
と、部屋に入ってきた少女が言う。
「いやまあ。そうだけどさ」
「それなら、もう少し安静にしておく事をお勧めします」
はいはい、と少年は枕を抱き寄せて怠そうに答え――彼女の服装にふと、目を留めた。
「あれ、出掛けるの?」
「ええ。少し」
「怪我は?」
その言葉に、彼女は怪訝そうな目を向けた。
「いや。全然治りきってなかったじゃん」
万全を期すべきじゃないの? という口ぶりから、彼女も怪我をしているようだったが、少女はその声を一瞥して。
「問題ありません」
と、だけ告げた。
「そう。手伝いは?」
「要りません」
「そ。――じゃ、アイツが帰ってくるまでには帰ってくるようにな」
「――ええ。言われなくても、それ迄には」