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半年だけの恋
もう鉄の音はしなかった。
最終電車が往けば黙り込む部屋で独り俺は煙草を吸っている。
街灯の光がいつもより明るいのは雨がまだ降り続いているからなのだろう、湿った煙が長い間漂っていた。
『迎えに来てよ』
その言葉を残してまた連絡を取れなくする玲奈は、今どこにいるのだろうか。
三ヶ月前の姿のまま、雨に濡れたまま安いスタジャンを着たまま ドアを開けるのを想像をしてみる。
顎のラインに揃えた髪の毛を後ろに流し、さらけ出された首筋にある青くて透明な血管に口付ける
『帰って来てどうする、まだ迎えに行く季節じゃないだろ』
『そうね、まだ11月だったわね。間違えた』
想像の中でもやっぱり玲奈は笑っていた。