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ヘイサクウカン  作者: シキジ
ヘイサクウカン 2章
7/37

3話:備えあっても憂いあり

前回のあらすじ


城松を探していた木狩たちだったが、金庫をピッキングして開け、息絶えた城松の姿があった。


──────────────────────


木狩「…!」


宝井「き、きゃぁぁぁ!」


複坂「あーあ、だから嫌な予感がするって言ったのに♪」


黒山「…くそ!」


木狩(薄々予感はしていたが、それでもやっぱり…)


それから少しして…


五月雨「どうしたの!?」


愛田「これって…!」


幕明「…なんで。」


梶野「城松さん!」


最上「みんな離れろ!…他殺の可能性が高い。」


木狩「た、他殺!?」


複坂「へぇー、なんでそう言えるの?」


最上「頭蓋骨が陥没してる。これは恐らく即死だ。契約で死んだ直後にやられたとしても、この陥没のしかたは城松が立った状態でやられたような感じだ。」


五月雨「つまりは、《城松さんが立った状態で即死させられた》ってこと?」


黒山「…。」


愛田「…。」


その瞬間、それぞれに疑念の目が宿った。無藤の時とは違って、契約で死んでないとはっきり言われた。


この中の誰かが殺した。


この事実が一人一人の心をえぐった。


木狩(一体誰が…?)


その時、一人の声が響いた。


複坂「ねえ、皆なんでそんな雰囲気なの?」


梶野「当たり前っす!だって、誰かが城松さんを…」


複坂「関係ないじゃーん♪だって、犯人じゃないなら堂々とすればいいんだよ♪」


幕明「…一理あるね。犯人じゃないなら慌てなくていいんだよ。」


愛田「そ、そうだね!」


ゲームマスター「皆様、城松様が召されました。これより三時間は、捜査時間とします。」


宝井「…捜査を始めましょうか。」


最上「そうだな。わたしは、もう少しここで何かないか調べてみる。」


黒山「一度起きたことは仕方ないのう…。だったら、捜査に全力を尽くすだけじゃ!」


そうして俺たちは捜査を始めた。


木狩(まずは現場からだな。)


最上「今思ったらこれはなんだ?」


幕明「見た感じだと、《芳香剤》と…《ドライアイス》?」


木狩「凶器はすぐそこの《血まみれのハンマー》か?」


複坂「あれ、何か見えるよ♪」


幕明「…待って!」


と、幕明は城松の体をずらした。


最上「お、おい、ずらして証拠がなくなったら…」


木狩「これって…《ハト》?」


幕明「なんで?」


複坂「これで城松さんも寂しくないね♪」


木狩「…。」


俺は《立った状態で即死》と《芳香剤》と《ドライアイス》と《血まみれのハンマー》と《ハト》をメモした。


俺は、気になったところへ向かった。


それは、USBメモリのある部屋だ。


木狩(ここにはたしか…。)


そこには《血まみれのテーブル》があった。どうやら他の誰かがスイッチを押したみたいだ。


五月雨「…木狩くん。」


木狩「五月雨?どうした?」


五月雨「…ないんだ。」


木狩「えっ?」


五月雨「《USBメモリがない》んだ。」


木狩「…本当だ。」


梶野「自分たち、テーブルの血に夢中になっててメモリの存在を忘れてたっす。」


木狩「でも誰も死んでな…」


黒山「一が…!」


と、黒山が走って行った。


梶野「自分たちも行くべきっすね…!」


五月雨「…うん!」


木狩「…ああ!」


俺たちは個室の方へ向かった。


黒山「一!返事してくれ!」



一「…何?」


五月雨「生きてたね…。」


木狩「…ああ。」


梶野「話が変わるっすけど、城松さんの個室ってどうして開かなかったんすか?」


木狩「確か、《鍵が掛かってた》はずだ。」


五月雨「でもどうやって鍵を閉めたんだろうね?」


木狩「単純に犯人が城松の鍵を使って掛けたんじゃないか?」


梶野「…ゲームマスター、個室の扉を開けてほしいっす。」


ゲームマスター「承りました。」


五月雨「梶野さん?」


梶野「やるなら徹底的に調査するっすよ。」


木狩「そうだな。」


俺たちは城松の個室に入った。


床には大きな玉のようなものと、箱のようなものがあった。


五月雨「これは?」


梶野「《砲丸》みたいっすね。だいたい3㎏っす。」


木狩「さらにこれ、《糸》が《セロハンテープ》でくっついてるな。」


梶野「こっちは…」


五月雨「《面が2つない箱》だね。」


木狩(サイコロの1と2の面のあたりが無いような感じだ。)


あとは他の部屋と同様、ベッドや家電がある。


俺は、《血まみれのテーブル》と、《なくなったUSB》と、《鍵が掛かっていた個室》と、《砲丸》と、《糸》と、《セロハンテープ》と、《面が2つない箱》をメモした。


俺は他の所へ向かった。


宝井「あっ、木狩さん。」


愛田「木狩くん、ちょっと聞きたいことがあるんだけど…。」


木狩「どうした?」


宝井「木狩さんは基本的に自由行動のとき、何をしていましたか?」


木狩(なるほど、アリバイか。)


木狩「…いや、普通に調査をしていた。」


愛田「そっか、誰か証明できる人は?」


木狩「残念ながら…。」


宝井「そうですか、ありがとうございます。」


木狩「あ、ああ。」


俺は他に何かないか探した。


木狩(…これぐらいか。)


結局、調べても特に収穫がなかった。


ゲームマスター「皆様、三時間が経過しました。モニターに審議の場所を指定しますので、そこに集合してください。必ず、全員くること。」


木狩「…。」


2回も事件が起こってしまった。今回も平和に終わってくれれば…と思いながら審議の場所へ向かった。


木狩が獲得した証拠


《立った状態で即死》

城松は立った状態で殴られた。その時、城松の頭は陥没していたらしい。


《芳香剤》と《ドライアイス》

城松の死体の周りには、大量のアロマの芳香剤と、ドライアイスがあった。


《血まみれのハンマー》と《ハト》

城松の近くには、血まみれのハンマーと死んでいるハトがいた。


《血まみれのテーブル》

USBのある部屋の隠しテーブルには、大量の血が付いていた。


《なくなったUSB》

テーブルにあったはずのUSBメモリが無くなっていた。


《鍵が掛かっていた個室》

城松の個室は鍵が掛かっていた。


《砲丸》と《糸》と《セロハンテープ》

城松の個室の扉の近くには、セロハンテープと糸が付いている3㎏ほどの砲丸があった。


《面が2つない箱》

中が空洞の立方体の隣り合う2つの面を切り取ったような箱が城松の個室の中にあった。


──────────────────────


指定された所の前にはすでに全員集まっていた。…一でさえも。


一「…。」


愛田「これで全員かな?」


複坂「じゃあ、行こっか♪」


俺たちは部屋の中へ入っていった。


ゲームマスター「皆様、お集まりいただきありがとうございます。

これより、第2回の審議を開始します。」


《第2回審議─開始─》


宝井「また、始まってしまいましたね…。」


幕明「…ここまで来たらやるしかないね。」


五月雨「じゃあ、まずは死因について話そうか?」


最上「死因はハンマーで殴られたため、誰かに撲殺されたはずだ。」


愛田「本当に居るんだね。城松ちゃんを殺しちゃった人が…。」


最上「だが、一つ不可解なことが判明した。」


黒山「不可解なことじゃと?」


最上「…《殴られた痕が2つある》ことだ。」


複坂「へぇ、2つね♪」


木狩「…なるほどな。」


五月雨「何か分かったの?」


木狩「血が付着してた物が2つあったはずだ。恐らく、それによってついたものだろう。」


証拠4,《血まみれのハンマー》と証拠6,《血まみれのテーブル》を使用


木狩「それは、城松の死体の近くにあったハンマーと、隣の部屋の隠しテーブルだ。」


複坂「ハンマーはともかく、なんで机にも付いてたんだろうね♪」


梶野「…あの、いいっすか?」


幕明「どうしたの?」


と、梶野は俺たちの頭が真っ白になるようなことを発した。


梶野「…今回の事件、城松さんを殺したのは…《自分》っす。」


愛田「…え?」


黒山「何を言って…」


梶野「自分は城松さんを突き飛ばして殺したっす。」


木狩「つまり、城松を突き飛ばしたらたまたま机に頭が当たったってことか?」


梶野「その通りっす。」


愛田「梶野ちゃん…なんで?」


幕明「そこまでして梶野さんはここから出たかったってこと?」


複坂「いや、それはないよ♪」


幕明「え、なんで?」


複坂「ふふっ、なんでだろうね♪」


五月雨「…さっき、たまたま机に頭が当たったって言ってたよね?どちらかというと事故と考えるべきだよ。」


愛田「それ、本当なの?」


梶野「…そうっすね。」


木狩(本当に梶野が…?)


木狩「…いや、梶野は殺してないんじゃないか?」


梶野「…は?」


最上「確かに少しおかしい点もあるな。」


木狩「梶野、お前は本当に殺したのか?」


梶野『読みが外れたっすね。』


【対議開始】


梶野「自分は城松さんを殺したっす。その事実は確実っすよ。」


木狩(どうしてだ?どうしてそこまで自分が犯人という?…梶野は殺してないと俺が思う理由を示そう。)


木狩「自分が犯人という根拠はあるのか?」


梶野「はっ、全く話が噛み合わないっすね。」


と、梶野は冷笑した。


木狩「どういうことだ?」


梶野「じゃあ逆に、自分が犯人じゃないっていう根拠はあるんすか?」


木狩(だめだ、このままじゃ話がねじれるばかりだ。核心を突くには…)


木狩「…じゃあ聞くぞ。お前は、城松をどうやって死なせた?」


梶野「さっきも言ったじゃないっすか。自分は城松さんを突き飛ばしたら、《テーブルに城松さんの頭が当たって死なせたっすよ。》」


証拠1,《立った状態で即死》を使用


木狩『その言葉、俺が解く。』


【対議終了】


木狩「…やっぱりお前は殺してない。」


梶野「なんでそう言えるっすか?」


木狩「城松は立った状態で殴られて殺されたらしい。最上、そうだろ?」


最上「ああ。頭の陥没のしかたからして間違いない。しかも即死だ。」


梶野「…あ、思い出したっす。ハンマーで殺したっす。」


黒山「じゃあなぜ机に血が付いてたんじゃ!?」


梶野「つ、机に頭をぶつけた後、起き上がってきたところをハンマーで…」


最上「いや、それはない。」


梶野「…え?」


最上「すまない。皆には言ってなかったが、机に頭を打ち付けた時の傷も重症な方だった。」


宝井「つ、つまり?」


最上「…《机に頭を打ち付けた時、城松は気絶した可能性が高い》ということだ。」


梶野「じ、じゃあ、気絶した後にしばらく待って…」


複坂「…その辺にしておいたら?」


梶野「な、何言って…」


複坂「さっきから言い直しすぎだよ。もうつまらないから、もうやめたら?」


木狩「…癪だが、複坂の言うとおりだ。」


梶野「…。」


幕明「そうだよ!なんでそこまで自分が犯人だって言うんだよ!?」


愛田「梶野ちゃん…一体何があったの?」


梶野「…少し慌てすぎたっす。申し訳ないっす。」


五月雨「えっとさ、それに…」


と、五月雨のさりげない一言で俺たちは結局ほとんど進展していないと気づかされた。


五月雨「…これって、梶野さん以外でも犯行可能だよね?」


黒山「た、確かにそうじゃのう…。」


木狩「そうか。梶野の言葉だけで犯人扱いしただけだったな。」


五月雨「ということでさ、犯人の話よりも事件の概要を話していこう。」


宝井「良い案ですね。賛成です。」


五月雨「木狩くん、《城松さんの近くにたくさん置いてあったもの》って何だっけ?」


木狩「それは…」


証拠2,《芳香剤》と証拠3,《ドライアイス》を使用


木狩「芳香剤とドライアイスだったな。」


複坂「あれは不思議だったね♪」


最上「犯人はなぜそんなものをたくさん置いたのだろう?」


木狩「…。」


俺は一つの可能性に行き着いた。


木狩「…城松が居なくなったのは3日前だったな?」


愛田「確かにそうだけど…それってなにか関係あるの?」


木狩「城松はすでに…3日前に殺されてたとしたら?」


宝井「え、ええっ!?」


幕明「そっか、確かにあり得ない話じゃないね。」


最上「では芳香剤とドライアイスの役割って…。」


木狩「ああ。…死体の腐敗の抑制と考えられる。」


五月雨「芳香剤は、万が一死体の一部が腐ってしまった場合の臭い消しとして、ドライアイスは、まさに死体の腐敗の抑制として使われたってことだね。」


黒山「しかし、ドライアイスで腐敗の抑制など出来るものなのか?」


愛田「出来るよ。だって物が腐っちゃう原因って酸素でしょ?」


幕明「そっか、ドライアイスは二酸化炭素で出来てるから腐敗を止められるね。」


木狩「そうすることで、金庫内に二酸化炭素を充満させて、腐敗を止めたんだ。」


宝井『素朴な疑問、お許しください。』


【対議開始】


宝井「ドライアイスで二酸化炭素を金庫内に充満させることは出来るのでしょうか?」


木狩「どういうことだ?」


宝井「いえ…木狩さんが金庫に城松さんがいると仰った理由とは、アロマの香りがしたからでしたよね?」


宝井「つまり、アロマの香りが通るということは、金庫のどこかに空気の通り道があるということですよね?」


木狩(今持ってる証拠では反論できない…。)


五月雨『助言するよ。』


木狩「五月雨?」


五月雨「《あの金庫の上の方に少しの隙間》があったんだ。」


木狩『その言葉、使わせてもらう。』


【対議終了】


木狩「…そうか。二酸化炭素は空気よりも重いから、城松のいる下のほうから充満していった。」


木狩「上に空気が通るとしても、二酸化炭素は城松を包み、アロマの香りは上から来たんだ。」


宝井「そういうことでしたか。無駄な時間を作ってしまってごめんなさい。」


木狩「いや、これで俺が話した事の信憑性が更に増したことになる。」


黒山「しかし木狩、それは無理があるんじゃないか?」


木狩(黒山が無理だと思う理由って…)


証拠8,《鍵が掛かっていた個室》を使用


木狩「城松の部屋の鍵のことか?」


黒山「その通りじゃ。内側からかけられる鍵で、外側には鍵穴もない。これはどういうことになるんじゃ?」


木狩「多分、犯人は《密室トリック》を使ったんだ。」


次回に続く…


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