6話:記憶は彼の事を伝え始める。
前回のあらすじ
シュウキたちは最終審議に向かった。
扉を開くと狭い通路があったようだ。少し進み、開けた場所に出た。
ゲームマスター「よくぞここまで…!」
ゲームマスターがそこにはいた。画面越しでもなく、ホログラムでもない、仮面を付けている、1人の人としてそこに立っていた。
シュウキ「おまえが…ゲームマスターか。」
ゲームマスター「いかにも。ちなみに、ここでの暴力行為等は禁止とさせていただきます。」
ヒカリ「…。」
ゲームマスターには、得体の知れない雰囲気があった。…俺も正直緊張している。
ゲームマスター「それでは始めましょう。これより、最終審議を開始します。」
《最終審議─開始─》
ゲームマスター「改めてルールを確認しておきましょう。最終審議では、《ゲームの真相》、《私の正体》、そして《裏切り者の正体》について話してもらいます。3つともクリアしたとき、最もこの審議で優秀だった方には、《新しいゲームマスターとなっていただきます》。ゲームマスターにはこのゲームを終了させる権利もございます。」
ランコ「では…まずは何からにしましょうか?」
トオ「…ゲームマスターの正体からかな。」
シュウキ「俺もそれでいいと思う。」
ゲームマスターの正体を知ることができたら、真相に近づきやすくなる。
まずは…
証拠5,《ゲームの参加者だったゲームマスター》を使用。
シュウキ「ゲームマスター、お前はゲームの参加者だったんだよな?」
ゲームマスター「はい。それは既成事実ですので。」
ヒカリ「じゃあ、どういう理由でゲームマスターになったの?」
トオ「理由はゲームマスターから直接聞きたいけど…答えてくれなさそうだしね。」
ゲームマスターは黙っていた。
シュウキ「…もしかしたら、今回と全く同じなんじゃないのか?」
ヒカリ「今回ってことは…ゲームマスターが参加者だったときのゲームでうまく《直接交渉権》を得たってこと?」
トオ「今回のルールだと、最も優秀な人がゲームマスターになるって言ってたよね。」
シュウキ「でも、だとしたら変なんだ。」
ランコ「…なぜゲームマスターになったにも関わらず、ゲームを止めなかったのか…ということですか?」
シュウキ「そうだ。…ゲームマスターは人が死ぬ姿が見たかった、どうしてもやらなければいけなかった…色々考えられるな。」
ゲームマスター「私がゲームマスターとなったきっかけは関係がございません。私が《誰》なのかを当てれば良いのですから。」
シュウキ(誰なのかを…?)
それってつまり…
シュウキ「…俺達が知っている人物ってことか?」
ゲームマスター「…少なくとも、関係はあるでしょうね。」
シュウキ(ゲームマスターはここで推理するためのピースが揃っていると話していた。…つまり、俺達が知っている人物か、証拠から推理できる人物ってことか。)
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【膨議開始】
ヒカリ「もしかしたら…お兄ちゃん?」
トオ「ゲームの参加者が載っている名簿でおかしな所があったよね。」
ランコ「ここに来た12人の中にゲームマスターが…!?」
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まずはヒカリだ。
ヒカリ「わたしが知ってる関係者といえば…お兄ちゃんだけど、そんなわけ無いよね?」
シュウキ「…確認は難しいが、視野には入れておくべきだろうな。」
ヒカリ「…お兄ちゃん。」
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次にトオだ。
トオ「ゲームマスターがゲームの参加者だったら名簿に載ってるはずだけど…。名簿で塗りつぶされた所があったよね。」
シュウキ「…まさかそれが?」
トオ「うん。ゲームマスターだと思うよ。」
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最後にランコさんだ。
ランコ「デスゲームだと前例のある展開ですが、まさか誰かが死を偽装したりとかは…?」
シュウキ「いや、偽装できる場面があったとは思えない。一応全員分の脈は測ったはずだ。いくらここが不可思議な場所でも、ゲームマスターはそんなことはしないはずだ。」
ランコ「そうですよね。まだ、救われたのかもしれません…。」
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シュウキ『答えはそこだ。』
【膨議終了】
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シュウキ「トオ、恐らくお前の推理で正解だ。」
トオ「…良かった。これからも役に立つように頑張るね。」
シュウキ「確か名簿にはゲームの参加者が全員記されていたと推理していたはずだ。ゲームマスターが参加者だとしたら…」
ランコ「ゲームマスターの名前が載っているということですね!」
シュウキ「しかも、ゲームマスターは基本的に知られたらまずいことを塗りつぶしているはずだ。名簿にもその箇所があった。…多分それがゲームマスターだ。」
ヒカリ「あの名簿は五十音順に並んでいたね。確かシュウキ君とイクタ君の間にいたよね。…お兄ちゃんじゃなくて良かった…。」
シュウキ「ということは、俺の名字は木狩だから《コ》、イクタの名字が五月雨だから《サ》だ。つまり、ゲームマスターの名字が《コ》か、《サ》で始まる…違うか?」
ゲームマスター「…お見事です。私の名字はそのどちらかから始まります。」
トオ「…少し進んだけど結局、それだけの情報だよね。」
シュウキ(推測される名字は、小林、佐藤…考えたら切りがない。)
俺達の推理はここで行き詰まってしまった。…と思ったが、
ヒカリ「ゲームマスター、あなたの名字は、《わたしたちが聞いたことあるよね》?」
シュウキ「…なぜそう言えるんだ?」
ヒカリ「だって、ゲームマスターはわたしたちの手の届く範囲に真実があるって言ってたから…。」
ゲームマスターは「ふっ」と微笑すると、短く、「ええ。」と答えた。
…俺達が全員知っていて、かつ名字が《コ》か、《サ》で始まる?それはもう考えられるのは1つだけだ。
…俺かイクタの《兄弟姉妹》だ。
でも俺には兄弟姉妹なんか…
その瞬間、俺は今日の夢を思い出した。
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???「俺はお前の大事な人だというのに…」
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シュウキ「…。」
ゲームマスター「…ふふっ。木狩様。」
ゲームマスターが何かを言った。
ゲームマスター「…《お前の将来の夢は何だ?》」
俺は…
何かを見つけた気がした。
シュウキ「…くっ。」
それと同時に頭に激痛が走る。
ランコ「シュウキさん?どうしました?」
ランコさんが心配する中、ゲームマスターは続ける。
ゲームマスター「…《俺は変えたいんだ。この世の中を》。」
シュウキ「…がっ!ぐっ…。」
激痛はさらに勢いを増した。
トオ「…おい。シュウキくんに何してる。」
トオの怒りが伝わる中、ゲームマスターは最後にこう言った。
ゲームマスター「…《俺を忘れちまったのか?》」
シュウキ「…がああああっ!」
頭が痛い。
割れる。
砕け散る。
…《思い出す》。
ヒカリ「シュウキくん!?」
ヒカリが困惑する中、俺は倒れそうな体を支えて言った。
シュウキ「分か…ったぞ。お前の…正体…。」
痛みが引くと同時に記憶がうっすらと戻っていく。
あのときも、あのときも…《彼》はいつも居た。
なぜこんな大事な人を忘れていた?
俺は自分で確かめるように言った。
シュウキ「仮面で隠さないで素顔を出せよ、《兄貴》。…いや、木狩 優也。」
ゲームマスターは…いや、黒髪の青年であるユウヤは、うっすらと笑みを浮かべながら仮面を外した。




