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ヘイサクウカン  作者: シキジ
ヘイサクウカン 5章
24/37

6話:その少年はまるで、神をも欺く儚い天使だった。

前回のあらすじ


シュウキたちはこの事件を推理した。


前回で推理したこと


・サイトの契約は《血を出す、流すことの禁止》


・サイトの目的はゲームマスターを自分たちと同等にするため


・停電は遅延型の電子ウイルスで起こったこと


・サイトの死亡時刻は午後1時半くらい


──────────────────────


シュウキが獲得した証拠


《頭の流血》


サイトは頭から血を流していた。


《自殺》


自殺の可能性が高いかもしれない。


《メモの裏》


暗号のようなものが書かれていた。

(てんとさらをやまやます)


《食堂のグラス》


食堂のグラスが割れた状態で見つかった。


《2本の帯》


2本の帯が糸で合わせられていた。


《マイク》


グラスの破片の近くにマイクがあった。


《停電》


事件の前、急に停電が発生した。原因は不明。


《3つの封筒:1つ目》


サイトの個室にあった、3つの封筒のうち、「審議の前に読むこと」という封筒。


──────────────────────



シュウキ「次はルールについて話してみるか。」


ランコ「ゲームマスターさんは何か分かるのでしょうか?」


ゲームマスター「何と言えばよいか分かりかねます…。」


シュウキ(何と言えば…?)


トオ「じゃあ…ゲームマスターはどうして今回の審議の報酬を変えたの?」


シュウキ(確かに。この審議の報酬である、直接交渉権はゲームマスターにとって確実に不利になるものだ。それをなぜ積極的に取り入れたんだ?)


ゲームマスター「…《私の契約上》と言っておきましょう。」


ヒカリ「ゲームマスターの契約って、確かルールを破ることだよね?」


ランコ「普段通りのルールでしたらそのままで良かったはずですが…。」


シュウキ「…!」


トオ「…シュウキは分かったんだね?」


シュウキ「…ああ。なぜわざわざサイトが午前中にルール消去、午後中にルール復元といったような分け方をしたのか、今やっと理解した。」


ヒカリ「…それって一体?」


シュウキ「…サイトは、ルールを消去していない。《ルールを復元しただけ》だ。」


ヒカリ「つまり今はルールが2種類混ざってるってこと!?」


ランコ「それに、いくらなんでもそれは無理じゃないでしょうか?《午前が終わっていないのに、午後にできる作業をする》だなんて。」


トオ「…なるほど!」


ヒカリ「トオくんもわかったの?」


シュウキ「…サイトがルールを復元したタイミングは…《正午》だ!」


ランコ「…正午?」


トオ「正午は、午前12時であり、午後0時…つまり、正午は《午前であり、午後でも》あるんだ。」


シュウキ「サイトは正午にルールを復元してその直後に飛び降りたんだ。」


ヒカリ『それはおかしいよ!』


──────────────────────


【対議開始】


ヒカリ「シュウキくん、わたしがどうしておかしいと思うか分かる?」


シュウキ「…サイトの死亡時刻のことか?」


ヒカリ「うん。確か、サイトくんの死亡時刻はグラスが割れた午後1時半だったよね?もし正午に死んだならどうやってグラスを割ったの?」


トオ『助言、いいかな?』


トオ「サイトくんはとても頭の切れる人だ。…多分、何か《仕掛け》を使ったんじゃないかな?」


シュウキ『その言葉、使わせてもらう。』


【対議終了】


──────────────────────


シュウキ「…多分、サイトは何かの仕掛けを使い、俺達に死亡時刻を誤解させたんだ。」


ランコ「その…仕掛けというのは?」


シュウキ「…。」


ヒカリ「シュウキくん?」


シュウキ「すまない、分からないんだ。」


トオ「シュウキくんにも分からない仕掛け?」


シュウキ「もし今見ることができれば推理のしようが…あっ!」


トオ「どうしたの?」


証拠8,《3つの封筒:1つ目》を使用。


シュウキ(サイトの手紙には出歩きも可能と書いてあった。ということは…。)


シュウキ「ゲームマスター、実際にグラスのあるところに行ってもいいか?」


ゲームマスター「…構いません。」


ヒカリ「やった!じゃあ見に行こうよ!」


俺達はグラスのあるところに向かった。



ランコ「どこかにサイトさんの仕掛けがあるのですか?」


シュウキ「恐らくな。」


グラスは帯のすぐ隣で割れていた。…これが意味することは?


トオ「シュウキくん、棚の上にあるあのミシンが気になるんだ。」


シュウキ「…あれか?」


あのミシンは俺が少し気がかりだったものだ。なぜあんなところにあるのだろうか、と。


ヒカリ「近くの椅子持ってきたよ!」


俺はその椅子を登ってミシンを取ろうとした。


シュウキ「このミシン、《ゆっくり動いている》な。」


ランコ「つまり、どこかのコンセントに接続され続けているということでしょうか?」


後ろの方にコンセントがあり、プラグがささりっぱなしだったようだ。俺は一旦外して下へ持ってきた。


シュウキ「《テープでミシンのペダルが固定されている》な。」


トオ「だからずっと動いていたんだね。…でも、これが仕掛けとどう関係あるんだろう?」


シュウキ「…まさか、この帯が関係しているのかもな。」


ランコ「私には到底知り得ないことですが、考えてみましょうか。」


──────────────────────


【膨議開始】


ランコ[帯が完全に縫われていないですね。自動的に縫われたのでしょうか?]


ヒカリ[ここ、よーく見たらさ…。]


トオ[どうしてミシンがゆっくり動いてたんだろうね。]


シュウキ(まずは、ランコさんの話を聞こう。)


──────────────────────


ランコ「ペダルも固定されていましたし、《サイトさんが直接縫ったわけでは無さそう》ですね。」


シュウキ「確かにそうだな。だが、間接的に縫ったとしてもどうやって仕掛けを…?」


ランコ「すみません。さすがにそこまでは…。」


──────────────────────


シュウキ(次はヒカリだ。)


ヒカリ「このグラスの破片、《帯とくっついて離れない》よ!」


シュウキ「グラスは割れる前、帯にくっついていたということか。」


ヒカリ「多分そうだよ!」


──────────────────────


シュウキ(最後にトオだ。)


トオ「僕たちが見つけるまでずっとゆっくり動いてたね。《速く動いたらダメ》だったのかな?」


シュウキ「ゆっくりか…メリットはなんだろうな。」


トオ「うーん。他の意見とも合わせたら分かるかもね。」


──────────────────────


シュウキ『答えはそこだ。』


【膨議終了】


──────────────────────


シュウキ「…仕掛けの全貌がわかった気がするぞ。」


ヒカリ「ほんとに!?どんな仕掛けなの?」


シュウキ「棚の上のミシンで《グラスをテープでつけた帯》を《自動的に、ゆっくり縫って》、帯とグラスを棚の上から落としたんだ。そして、グラスは落下によって割れて、マイクがその音を拾ったんだ。」


トオ「落とした?でもどうやって?」


シュウキ「衣類をミシンで縫っているときは縫い糸があるため、離れることができない。だが、縫い糸がなくなった瞬間に、ミシンと衣類は離れることができる。」


ランコ「えっと…つまり、縫い糸が無くなるまで仕掛けは作動せず、なくなった瞬間に作動する《時限式の仕掛け》になっていたということですか?」


シュウキ「ああ。ゲームマスターもそれで合っていると思うか?」


ゲームマスター「私はその一部始終を見ていましたので。…合っています。」


トオ「ゆっくり縫った理由は、《なるべく僕たちに時間的な混乱を招くため》だったんだね。」


グラスの音があったから、そのときまでサイトは生きていたと錯覚させられていた。…死亡時刻を隠したかったからか。


シュウキ「…ん?これはなんだ?」


俺はミシンに挟まっているメモを見つけた。


──────────────────────


僕の願いは《4人》でゲームマスターに勝って欲しいこと。


…僕の意思は固いからね♪


──────────────────────


ヒカリ「4人でゲームマスターに勝つ…か。」


俺達はメモを持って現場へと戻った。



シュウキ「次に死因についてだが…ここが一番の難点だな。」


ヒカリ「結局、わたしたちはサイトくんの死因を特定しないといけないんだね…。」


ゲームマスター「私も今回の事件の中で唯一分からなかったことです。」


シュウキ「サイトの頭が打ち付けられて死んだのが先か、頭が打ち付けられて血が流れて契約が破られたのが先か…。」


トオ「僕たちはこういうのには長けてないし、長けてたとしてもどっちか決めるのは無理だと思う…。」


ランコ「一体どうやって証明すれば…?」


シュウキ「そういえば、このメモには4人でって…俺達が生きている前提だが、《俺達にも確実に分かるような死因の特定方法がある》ってことか?」


ヒカリ「しかも、ゲームマスターにも分からないようにだよ!?」


トオ「そんなことが可能なのかな?」


シュウキ「…。」


俺はサイトの死体を少し調べた。


シュウキ「誰か、サイトの死体を調べたか?」


…。


誰も調べてないみたいだ。


シュウキ「何か手がかりがあるはず…ゲームマスターに隠れるところが…。」


トオ「…そういえば、サイトくんはいつも《手袋をしている》よね。もしかしたら…。」


俺はふとサイトの手袋の中を見た。そのとき、俺は少し笑みをこぼした。…失笑ではなく、《勝ちを確信した笑み》だ。


シュウキ「ゲームマスター…俺達の勝ちだ。」


俺は、サイトの手袋から、《手縫い針》を見せて言った。


ゲームマスター「…それは!」


ヒカリ「針…?」


シュウキ「サイトは、《手袋の中で、針を使って血を流した》んだ!」


ゲームマスター『その推理、リセットです。』


──────────────────────


【対議開始】


ゲームマスター「本当に針が入っていたのですか?」


シュウキ「どういう意味だ?」


ゲームマスター「私を騙すために、木狩様が持ってきたものでは?」


シュウキ「なぜそう言える?」


ゲームマスター「私は皆様の行動を一つ一つ監視していました。複坂様が針を入れる行動など見ていません。」


証拠7,《停電》を使用。


シュウキ『その言葉、俺が解く。』


【対議終了】


──────────────────────


シュウキ「停電のときに監視カメラも、何もかも一時的にストップしたんじゃないのか?」


ゲームマスター「…。」


シュウキ「サイトは停電中に手袋に針を仕込んでいたとしたら?」


ランコ「それでしたら、ゲームマスターさんに気づかれることなどなかったのでしょうね。」


ヒカリ「そして停電が終わっても、手袋の中を透かして見ない限り、針なんて入れてるとは思わないよね。」


トオ「そして、ゲームマスターに悟られないように飛び降りて、落ちてる途中で針を刺したんだ。」


シュウキ「…どうだ?何か反論はあるか?」


ゲームマスター「…いえ。」


シュウキ「それじゃあこの事件を、改めてまとめてみよう。」


次回に続く…


(次回で5章完結)

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