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ヘイサクウカン  作者: シキジ
ヘイサクウカン 5章
20/37

2話:その少年はまるで、人の苦しみを嘲笑うピエロだった。

前回のあらすじ


豹変したサイトがゲームを変更し、シュウキたちはサイトの対策をしようと武器庫に向かった。



俺達は武器庫に着いたのだが…


ランコ「そうでした…武器庫のスイッチはあの人に…。」


武器庫の隠し扉のスイッチはサイトが持っているため開けることができなかった。


シュウキ「いや。種類はないが、ここにあるものを持ったほうがまだましだ。」


ヒカリ「そうだね!丸腰のままじゃダメだからね!」


俺達はそこの物を取っていった。


トオ「これくらいあれば十分かな?」


ランコ「どうでしょうか…。まだ私たちはサイトさんの身体能力の全てを知らないですから…。」


不安を胸にしたまま俺達は武器庫を出た。そして俺達は再び食堂に向かった。


トオ「サイトくん…いない?」


そこにはサイトの姿がなかった。


シュウキ「今のうちに食べ物を取ろう。」


ランコ「一応持っておいた袋を使ってください。」


トオ「ランコさん、ありがとう。」


ヒカリ「なるべく傷みにくい野菜がいいから…。」


ヒカリが袋に野菜などを詰め込んでいく。


…とその時、


サイト「あれー?なーにしちゃってんのさ♪」


シュウキ「サ、サイト…!」


サイト「僕が目を離した隙にすーぐそーゆーことするんだから♪」


少しの沈黙の後、


トオ「…皆、闘おう。僕たちは、《前に進むしかない》んだ。」


サイト「ふーん♪…ってあれ?それ武器?」


ランコ「今、私たちはあなたの対抗策があります!」


サイト「…そっか。じゃあ襲い方を考えないとね♪とりあえず今は何もしないよ♪」


ヒカリ「…今は?」


サイト「そうだ♪皆に1つ言いたいことがあるんだ♪」


ランコ「何ですか…?」


サイト「カオルさんの審議、覚えてる?」


カオルの審議…。幕明カオルが城松マナを殺してしまった際の審議のことか。


サイト「あの時にどうして《面が4つの箱》が使われたか分かる?」


ヒカリ「それは…わたしも気にはなってたけどさ。」


トオ「まさか、君の差し金なんて言わないよね?」


サイト「そう!僕の差し金なんだ♪実はその時、カオルさんのことを見つけちゃってさ、僕はとっさにその箱を作ったんだ♪」


シュウキ「一体、何のために?」


サイト「カオルさんは《箱そのものがトラウマ》だったんだ♪」


ランコ「トラウマ?」


サイト「詳しいことは分かんないけどね。僕はカオルさんのためにその箱を作ったんだ♪」


シュウキ「要は…カオルに、より完璧な事件を起こせるためにしたってことか?」


サイト「だいたい正解だよ♪もっと正確に言えば、《より長く審議が続くように》したんだ♪そのほうがカオルさんがより長く罪悪感に…」


ヒカリ「ふざけないで!カオルちゃんは苦しむべき人じゃないんだよ!?…君は、そんな人を…。」


サイト「トオくん、君にも言いたいことがあるんだ♪」


トオ「…何?」


サイト「トオくんさ、今までの中でずっと1人の時あったでしょ?」


1人の時…。このゲームが始まってからチュウゾウさんが死ぬ前までの間か。


トオ「…まさか。」


トオの顔がが急に青ざめた。


サイト「トオくんに扉越しにずーっとトオくんの家族の話してたの、僕なんだ♪」


シュウキ「そ、そんなことがあったのか?」


だからトオはあの時、家族の話になったとき急に取り乱したのか?…結果としてチュウゾウさんが死んでしまった訳か。


トオ「…大丈夫、あれは僕のせいじゃないんだ。僕のせいじゃ…。」


トオは独り言を呟いていた。


シュウキ「お前は何が目的なんだ!どうして俺達をここまで取り乱させるんだ!?」


俺はいつになく感情的になった。


サイト「ふふっ♪それが楽しいんじゃん♪」


ランコ「そもそも、どうして皆さんの過去まで知っているのでしょうか…?」


サイト「だーかーら!僕は裏切り者なの!皆の個人情報なんて当たり前のように知ってるんだから!」


サイトは不気味な笑みを浮かべて続けた。


サイト「シュウキくんは《小学校卒業後からの記憶がなくて》、ヒカリさんは《両親を失って》、トオくんは《全ての人に裏切られて》、ランコさんは《家族の誰からも認められない》っていう過去、ぜーんぶ知ってるんだ♪」


シュウキ「そ、それは…。」


ヒカリ「わたしには…お兄ちゃんがいるもん…。」


トオ「…。」


ランコ「私は…!」


サイト「君たちはまだ、《お互いを知らない》ってことだよ♪」


と言ってサイトは去った。


しばらくたっても口を開けたのは俺だけだった。


シュウキ「…とりあえず、あいつがどこに行ったか分からない。警戒は解かないようにしよう。」


それ以上の会話は無く、ヒカリが食材を詰めたのを確認して、俺達は安全な場所を求めて歩き回った。


たどり着いた所は結局ロビーだった。理由としては、密閉されない空間で、逃げ道も多い所だからだった。


そこは沈黙で包まれていた。やはり俺が口を開いた。


シュウキ「…1つ全員に聞いてもいいか?」


トオ「…うん。」


シュウキ「さっきのは、本当か?」


ヒカリ「…そうだよ。」


ランコ「ええ、そうです…。」


トオ「う、うん。」


シュウキ「俺も本当だった。…正直自分の記憶がないことの怖さを初めて知った。」


俺は、全員をなだめるように言った。


シュウキ「どんな怖くて辛い過去だったか俺には想像なんて出来ない。…だけど、今はこの4人で協力しないといけないんだ。」


トオ「協力…?」


シュウキ「だから、少しでもいい。過去じゃなくて、今を見て欲しい。…もし、できるならその過去を話してくれないか?」


ヒカリ「過去を話してどうするの?」


シュウキ「…どうもしない。だけど、もし話して気が楽になるなら…。」


ランコ「本当に気が楽になるのでしょうか…?」


シュウキ「やってみないと分からないさ。…ぶっきらぼうかもしれないけど、辛い過去は皆で共有してみよう。そしたら、案外楽になるかもしれないぞ。」


トオ「そんな事…出来ないよ…。」


シュウキ「じゃあ、実験だ。…さっきも言ったが、俺は小学校卒業の後の記憶がない。だから小学校で起きた笑い話や、悲しい話を沢山話そう。」


下らない話ばっかりだった。だが、俺はなるべく明るく、自然な笑顔で話した。俺はただ皆を落ち着かせて、いつかのように、笑って過ごしていた頃のように戻って欲しい一心だった。


全員、最初は暗い表情だったが、徐々に明るくなっていき、そして、まるで友達同士で話している感覚だった。


シュウキ「…どうだ?少しは楽になったか?」


ヒカリ「…うん!」


トオ「楽になったよ。ありがとう。」


ランコ「不思議ですね。今、私の心が温まっています。」


シュウキ「そうか、良かった。」


ヒカリ「…わたしはね、さっき言われた通り、お父さんとお母さんを事故で亡くしちゃったの。わたしは凄いショックを受けて、家を出そうにもなった。だってお父さんとお母さんは、結構凄い農家だったから、わたしに残ったのは、広大な土地と、動物たちだった。…わたしとお兄ちゃんの2人だけじゃ管理出来ないと思った。」


ランコ「…やはり、ヒカリさんのお兄様はヒカリさんの心の拠り所だったのですか?」


ヒカリ「うん。お兄ちゃんはいつも優しくて、わたしのことをいつも考えてくれたの。わたしが家を出そうになっても、お兄ちゃんは、「そりゃ辛いからね。ここを出て幸せになってね」って言ってくれたの。」


トオ「…で、結局出たの?」


ヒカリ「出てないよ!じゃあこの服なんなのさ!」


と、ヒカリは自分の緑の農作業着を指差して言った。


ヒカリ「最初はダメだと思ったんだけど、気がついたら管理に慣れたんだよね。…家出しなくて良かったって思ってる。」


シュウキ「諦めなければ出来るってことだな。」


ヒカリ「わたしは以上!次どうぞ!」


ランコ「…私の父は《ボヌーライン》という会社の社長です。しかし、父は不治の病を持っていまして、次の社長が必要なのですが、社長になるにはある決まりがあり、会社からの人望が厚い人であり、《男性》ではないといけないのです。」


トオ「ボヌーライン…聞いたことある。ゲームだけじゃなくて、衣服類から食料品まで、幅広く商品を開発している、今、一番有名な会社だね。」


ヒカリ「でも、社長は絶対男性なんだ…。」


ランコ「ええ。さらに、私と父は血が繋がっていません。そして父は、私が娘だと知らないのです。私はそこの従業員で、仕事はかなりうまく出来てたほうなのですが、その成績は、他の従業員に頼まれて譲ってしまうので、私はいつも最下位でした。…私が父の意思を継ぎたいのに、人望は成績のせいで薄く、女性なので、もう諦めてしまいました。」


シュウキ「まだ諦めないほうがいいんじゃないか?…どこかに打開策はあるものだぞ。ここから出たら頑張って皆を驚かせてやれ。」


ランコ「はい、そうします!」


トオ「最後は僕だね。…僕は最初に家族から見放されたんだ。お父さんもお母さんも望んで産んだ子じゃなかったみたい。最初は暴言、そこからエスカレートしてって暴力、終いには死にかけたこともあった。孤児院に預けられたんだけど、そこでも見放されたんだ。何でも人数オーバーだったらしいんだ。そこから追い出されて、本当に死にかけた所で気がついたらここにいたんだ。」


ヒカリ「…えっと…。」


…想像以上だった。俺も何か言葉をかけようとしていた。


トオ「無理しなくてもいいよ。…こういう反応になることくらい分かってたから。…それに、もう捨てた過去だ。…でも、さすがにサイトくんから言われたことは言えない。」


シュウキ「…そ、そうだ。皆、ここに来たときの記憶ってあるか?ちなみに、俺は記憶がないんだが。」


ヒカリ「うーん…。寝てたら拐われたって感じじゃないのかな?」


トオ「あっ、僕もだ。」


ランコ「私は誰かに襲われた気がします。」


シュウキ「誘拐方法は様々…か。」


トオ「そうだ!みんな、契約を言ってみない?」


シュウキ「いいアイデアだな。」


ヒカリ「…!」


トオ「僕は《階段の昇降の禁止》だよ。」


ランコ「ああ!だからシュウキさんに背負って貰っていたんですね!」


シュウキ「俺は《他人の携帯へ肌で接触禁止》だ。」


ランコ「私は《殺人の禁止》でした!」


トオ「それはずいぶんトリッキーな契約だね…。」


シュウキ「ヒカリ?」


ヒカリ「あっ、わたしは…《言えない》よ…。」


ランコ「まさか、イクタさんのような?」


ヒカリ「ま、まあ言っちゃダメ系だよ。」


そうして気がついたら…


ゲームマスター「皆様、就寝時間となりますので個室にお戻りください。」


トオ「も、もう!?」


シュウキ「ふっ、楽しい時間はすぐって本当だな。」


ゲームマスター「それと、複坂様の提案で、《ルールは2日後に元に戻す》らしいです。詳しくは複坂様に…。」


ヒカリ「…え?」


ランコ「どういうことでしょうか?」


シュウキ「…ゲームマスターの言った通り、次会ったら詳しく聞いてみよう。」


とりあえず俺達はそこで解散した。

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