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ヘイサクウカン  作者: シキジ
ヘイサクウカン 4章
16/37

3話:古き良き思い出の中

前回のあらすじ


シュウキたちはサイトの意見で地下室へと向かった。



地下室に向かう途中で、俺はトオに気になることを言った。


シュウキ「トオ、食堂にどうやって来たんだ?」


トオ「ああ、メイカさんに頼んだよ。」


声が聞こえたのか、メイカも話に加わった。


メイカ「そういえば朝、トオさんにおぶってって言われたんすけど、なにかあったんすか?」


トオ「僕の契約だよ。《階段の昇降の禁止》って。」


シュウキ「そんな話しても良いのか?」


トオ「前も言ったけど、僕は皆を信用してるからね。」


メイカ「ふふっ、信用してくれて嬉しいっす。」


話しているうちに、地下室のワープゲートに到着した。


トオ「探索したときも気になってたんだけど、地下室の前にあるこれは?」


ヒカリ「なんでも、クリアしてない試練の場所までワープできるんだって。」


トオ「ワープ…そんなことまで。」


ランコ「それでは、向かいましょう。」


次の試練までワープした。


イクタ「ここは…前にやった動物園のところだね。でも、《動物がいない》?」


トオ「ここはもうクリアしたの?」


サイト「うん。マナさんが殺される前にね。」


メイカ「動物…試練が終わったから、ゲームマスターが…?」


ゲームマスター「その通りです。そもそも、あれは動物ではないので、まとめて削除しました。」


ヒカリ「そうなんだ…。」


イクタ「…あっ、そうだ。みんな、昼過ぎちゃうかもしれないから、非常食として、クッキー持ってきたよ。」


イクタはみんなにクッキーを4枚ほど配った。


シュウキ「よし…じゃあ行こう。」


俺達は目の前の扉の先へと向かった。


そこは薄暗く、そして積み木やベッドメリーなど、玩具がたくさんあった。だが…


ヒカリ「な、なにこれ!」


それらは極端に大きかった。積み木が俺の身長ぐらいだ。


トオ「すごい大きいね。ここで何が行われるんだろう…。」


イクタ「そうだ、ヒカリさんとランコさんはお互いに離れちゃいけないんだよね。」


ランコ「そうですね。報道ゲームがある限りは。」


ヒカリ「そうだね。気を引き締めないと!」


ゲームマスター「皆様、次の試練の説明を致します。」


気がついたらモニターがついていた。俺達はそのモニターを真剣に見ていた。


ゲームマスター「ここには《化け物》が2体居ます。」


シュウキ「化け物…?」


メイカ「動物の次は化け物っすか。動物園より非現実的っすね。」


ゲームマスター「見た目はそれぞれ犬と猫です。捕まるとその時点で殺されます。」


サイト「命懸けの鬼ごっこってやつだね。」


ゲームマスター「クリア条件は、ここのエリアに散らばる赤い玉を4つ手に入れて、出口にある箱に入れることです。なお、クリアした時点で化け物は消滅します。」


イクタ「質問するよ。その化け物の足の速さは?」


ゲームマスター「恐らく皆様の全力と同じか、それ以上かと。」


メイカ「じゃあ、自分も質問するっす。化け物に捕まるのは本当に《殺された》に入るっすか?」


俺はその質問の意図を瞬時に理解した。


シュウキ「おまえが《被害者》だからその質問をしたのか?」


しかし…


ゲームマスター「報道ゲームの役職である《被害者》は、化け物に殺されても発動しないことになっています。」


メイカ「そうっすか。」


イクタ「発動してもそんなことしたらダメだからね、メイカさん。」


メイカ「…ふふっ、冗談っすよ。」


ゲームマスター「他に質問がないようなので、これよりゲームを始めます。10カウントで化け物を解放します。10,9,…」


トオ「とりあえず2つのグループで行こう。」


ゲームマスター「8,7,…」


サイト「グループを分けてる時間は…無さそうだね。」


ゲームマスター「6,5,…」


ランコ「4人と3人に分かれれば良いのですが…。」


ゲームマスター「4,…」


メイカ「これからはメールでやりとりするっすよ!」


ゲームマスター「3,…」


ヒカリ「わたしはランコさんと行かないと!」


ゲームマスター「2,…」


イクタ「よし、グループは大体決まったね。」


ゲームマスター「1,…」


シュウキ「皆の健闘を祈ってる!無事にここから帰るぞ!」


ゲームマスター「0。化け物が放出されます。それでは。」


俺達は一斉に走り出した。



俺の他に来たのはサイト、ヒカリ、ランコさんだった。


シュウキ(つまり、もう1つの班はイクタとメイカとトオか。)


サイト「ここは障害物があるから気を付けてね!」


ヒカリ「う、うん!」


ランコ「赤い玉も見つけていきましょう!」


シュウキ「見つけるのが難しいな。」


ドシドシ…


ランコ「えっ、この音って…!」


サイト「みんな、どこかに隠れよう!」


そういって大きな積み木や車のおもちゃの後ろに隠れた。


そこには…


犬型化け物「グルルルル…」


大きな、紫色の犬の形をしたなにかがいた。


ヒカリ「で、でかい…!」


サイト「と、とりあえずこのままやり過ごそう!」


シュウキ「確かに。むやみに動いたら気づかれるからな。…ん?」


俺の足元におもちゃでは無さそうなものがあった。


シュウキ「これは…赤い玉?」


ランコ「早速1つめですね!幸先いいです!」


サイト「すごい偶然だね。ラッキーだよ!」


俺達は静かに喜びあった。だが…


犬型化け物「グルルルル…ワンワン!!」


ヒカリ「えっ、見つかったの!?」


誰も目立った行動をしていないはずなのに、なぜか化け物に気づかれたらしい。


シュウキ「とりあえず逃げるぞ!」


俺達は必死に逃げた。しかし、化け物はそれ以上に速かった。俺達が撒こうとしても、犬は必ず追いかけてくる。


サイト「やばい、このままじゃ…!」


シュウキ(何か…何かないか!!)


俺は必死に探した。


シュウキ(一か八か…!)


シュウキ「みんな!この大きな人形に体をつけてくれ!!」


ランコ「シュウキさん?…分かりました!」


ヒカリ「任せたよ!」


全員人形に体をつけた。


シュウキ「なるべく頭をつけろ!」


サイト「分かった!」


化け物はゆっくりと近づいてきた。どうやら狙いすましたようだった。そして、化け物は跳ぶ姿勢になった。


シュウキ「今だ!人形の後ろの方向に逃げろ!」


俺の言葉を合図に、一斉に走り出した。


化け物は俺達の後ろにあった人形に跳びかかり、その後も人形を襲っていた。


ランコ「ハァ、ハァ、し、シュウキさん。今のは一体?」


シュウキ「あの化け物は犬の形をしていた。俺達の居場所が分かった理由も、執拗に追いかけることができた理由もそこにある。」


サイト「犬にあるものは嗅覚…ってことは、《匂い》?」


シュウキ「俺はそう予想して、人形に匂いをつけるように言った。ちなみに、頭をつけろと言ったのは、頭の汗をつけるためだ。」


ヒカリ「そしてうまくいったんだね。シュウキくんが居なかったら…いや、本当に助かったよ!」


ランコ「…では、猫型のほうにも猫の特徴が?」


シュウキ「ああ。そういうことになるな。」


サイト「このことをあっちにも伝えよう!」


サイトは、なれた手つきでメールを送信した。


サイト「よし。イクタくんにその話と赤い玉を1つ手にいれたことを伝えたよ。」


ヒカリ「じゃあ続けよっか。赤い玉探し。」


サイト「でも、返信が来たみたい。えっと《情報ありがとう、赤い玉こっちも見つけた》だって!」


ランコ「では、あと2つですか?」


シュウキ「じゃあ、残りも手にいれるぞ。」


俺達は再び探し始めた。



僕達はどうやら、僕と、トオくんと、メイカさんのグループみたいだ。


イクタ「さて、どうしようか?」


トオ「僕に任せて。暗いところでの探し物は得意なんだ。」


メイカ「自分も大体の方角を予想してみるっす。」


イクタ「じゃあ、僕は周りを警戒しておくよ。」


3人で必死に探し回った。化け物に会わなかったのが幸いだった。そして、


トオ「あっ、ここ!」


イクタ「…赤い玉があるの!?」


積み木の隙間を指差して言っていたけど、全く見えなかった。…そんなに違うものなのかな?


トオ「うん!ちょっと待ってて…」


トオが手を入れると…


トオ「これかな?」


メイカ「おそらくそれっすよ!1つめっすね!」


イクタ「やったね!」


トオ「うん!」


僕達が赤い玉を見つけたそのとき、


イクタ「あれ、サイトくんからメールが来たよ。えっと、《化け物はその形の動物と同じ特徴を持ってる。あと玉1つ入手。》だって!」


メイカ「じゃあ、あと2つっすね!」


トオ「同じ特徴ってことは、犬型は犬の、猫型は猫の特徴を持ってるってことだね。」


イクタ「そうみたいだね。そうだ、この機会に赤い玉を手に入れたことの情報をいれるよ。」


僕はなるべく簡潔に送った。


イクタ「よし、送信完了。この調子で頑張ろ…」


僕はある気配を読み取った。他の2人も同様に、辺りを警戒した。


トオ「…あれ!」


恐れていたことが起きた。


猫型の化け物「ミャアオ…!!」


メイカ「に、逃げるっすよ!」


僕達は必死に逃げた。しかし、化け物のほうはさらに速かった。


トオ「は、速い!このままじゃ…!」


イクタ(猫に効くものはどこだ…!)


僕は1つの物に目がとまった。


イクタ「そうだ!あの車のおもちゃだ!」


メイカ「なるほど、猫じゃらしみたいに…。」


トオ「でも…いや、やってみるしかないね!」


僕達は3人がかりでおもちゃを前後させた後に猫の方向に押した。猫はそれを追うように僕達と反対方向に走ってった。


イクタ「今のうちに!」


僕達は逃げた。


トオ「ハァ、ハァ、化け物はもう来ないね。」


イクタ「フゥ、危なかったね…。」


メイカ「でも、油断はできないっすよね。まだ頑張るっすよ。」


僕達はまた赤い玉探しを始めた。



シュウキ「なかなか見つからないな。どこにあるんだ?」


このエリアは広くはないのだが、物が多いため、探し物が見つからなかった。


次の瞬間、


犬型化け物「ワンワン!!」


目の前で化け物と鉢合わせになってしまった。


ヒカリ「嘘でしょ…!」


ランコ「に、逃げましょう!」


俺達は逃げるために横へと走った。


サイト「シュウキくん、さっきの手段は!?」


シュウキ「ああ。あそこの人形がある。使えるはず…」


ドッ!


ヒカリ「キャッ!」


ランコ「ひ、ヒカリさん!!」


ヒカリはつまずいて転んでしまった。…皮肉にも、赤い玉に。


シュウキ(や、ヤバい!人形は使えないし、ランコさんはヒカリと離れられない!このままじゃ2人とも…!)


その瞬間…


サイト「てぇぇりゃぁぁ!!」


バキッ!!


サイトが積み木を登ってそこから跳んで犬の鼻にパンチした。化け物は余程痛かったのか、襲うのを止めて去っていった。だが、空中で体勢が崩れたサイトは右足を痛めてしまった。


ヒカリ「サイトくん!わたし…ごめん。ありがとう。」


ヒカリは言葉にならないといった表情だった。


シュウキ「サイト!!」


ランコ「サイトさん!」


サイト「ははっ、歩けないや…。けど、ここで死ぬ、わけにはいかない!」


サイトは立ち上がりながら、自分を鼓舞するように言った。


サイト「僕にはまだ!皆を守る《義務》があるんだ!!それまでは死んで、たまるか!」


シュウキ「サイト…。」


ランコ「と、とりあえず出口まで運びましょう!」


ヒカリ「わ、わたし、イクタくんに、連絡取るよ。」


俺達は、赤い玉を回収して、出口へと向かった。



イクタ「…見つからないね。」


トオ「うん…どうしよう。」


メイカ「予想だとこの辺なんすけど…。」


僕達は探しに探し回って…


メイカ「あっ!ここにあったっすよ!」


ようやく、人形の下に赤い玉を見つけた。


イクタ「よし、あと…あれ、メールがヒカリさんから?えっと、《赤い玉1つ見つけた。だけど事情があって出口まで向かった。あと1つお願い。》だって。」


トオ「じゃあこれを出口に届ければクリ…」


猫型化け物「ミャアオ…!!」


メイカ「!」


イクタ「このまま出口に向かおう!!」


幸いここから出口まで距離はない。大丈夫なはず。僕達は全速力で出口に向かった。



シュウキ「イクタ!」


俺達が出口で待っているとイクタが来た。


イクタ「箱に赤い玉入れて!早く!!」


その後ろには化け物が追ってきていた。


ランコ「そんな!このままじゃ…!」


シュウキ「入れておく!だから早く来い!!」


サイト「皆!あれ…。」


気がつくとイクタと反対方向にもう1体の化け物が来ていた。…挟み撃ちだ。しかし、


イクタ「間に合えぇー!!」


イクタは間一髪で箱に2つの玉を入れた。その瞬間、フワッと化け物2体は消えていった。


ゲームマスター「おめでとうございます。ゲームクリアとなります。」


ゲームマスターの声が聞こえないほど、俺達の周りの雰囲気は、安心に包まれていた。

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