2話:平穏はゆっくりと流れて落ちる。
前回のあらすじ
シュウキたちは探索をした後、ゲームマスターに報道ゲームを強いられる。
ゲームマスター「それでは、皆様に役職をメールで提示します。」
直後、全員にメールが送られた。
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To:木狩 秀輝
From:ゲームマスター
木狩様の役職は《野次馬》です。
(この画面を他人に見せてはいけません。)
送.17:20
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シュウキ(野次馬は効果がない役職だな。俺はいつも通りか。…それより、画面を見せてはいけないって?)
イクタ「ねえ、ゲームマスター。この画面を見せてはいけないって何?」
ゲームマスター「言葉の通りです。つまりは、役職が確実に分かるような行為は禁止します。」
メイカ「自分たちの役職を伝えて信じさせるには《自分の言葉で》ってことっすね。」
ゲームマスター「では、ゲームをお楽しみください。失礼します。」
と言ってモニターが消えた。
ヒカリ「はい!わたし、《カメラマン》だよ!リポーターさんいない?」
ヒカリは手を挙げて言った。
シュウキ(そうか、リポーターと離れると…。)
ランコ「あっ!私です、ヒカリさん。」
ヒカリ「よかったぁー、女性で。」
ランコ「少しだけほっとしましたね。」
トオ「えっと、一応口頭で役職を言い合ってみようよ。」
シュウキ「そうだな。ちなみに俺は《野次馬》だ。」
サイト「…え?」
イクタ「サイトくん、どうしたの?」
サイト「いや、僕も《野次馬》なんだ…。」
シュウキ「それは本当か…!?」
サイト「うん、見る?…って、見せちゃダメだったね。」
イクタ「それは後で話すとして、とりあえず言うね。僕は《警察》だよ。」
トオ「あっ、僕も《警察》だよ。」
ヒカリ「な、何だか色々変になってるね…。」
ランコ「えっと、私は《リポーター》ですよ。」
ヒカリ「わたしは《カメラマン》!」
トオ「…メイカさんは?」
メイカ「あはは、どうやら《被害者》みたいっす。」
イクタ「じゃあ…!」
メイカ「大丈夫っすよ。カオルさんと約束したっすから。《この運を皆のために》って。だから、むしろ幸運っすよ。」
サイト「だけど、誰かがメイカさんを殺さないといけないってこと…?」
メイカ「それよりも、ゲームマスターに聞くことがあるんじゃないっすか?」
シュウキ「…そうだな。ゲームマスター、1つの役職が2人いるってあるのか?」
俺が聞いたとき、モニターがついてゲームマスターが言った。
ゲームマスター「なるべく違う役職となるようにしたのですが…おそらく手違いがあったと思われます。」
サイト「…じゃあ、僕とシュウキくんが《野次馬》で、トオくんとイクタくんが《警察》、メイカさんが《被害者》で、ヒカリさんとランコさんが《リポーター&カメラマン》ってことだね。」
シュウキ「《殺人鬼》と《第一発見者》がいないのか。」
ヒカリ「じゃあさ!わたしとランコさんが気を付ければ、誰も死なないってことだよね?」
ランコ「でしたら、メイカさんが殺される心配もないですね。」
メイカ「…そういうことになるっすかね?」
トオ「よかった。誰かが犠牲になる心配はないんだね。」
シュウキ(…なんか腑に落ちないが、犠牲がいなくなるのはいいことだな。)
イクタ「そうだ、武器庫の見張りはどうしようか?」
サイト「器具室は良いとして、武器庫は新しく班を決めたほうが良いよね?」
トオ「…今さらだけどさ、何で武器庫の見張りをするの?」
ヒカリ「それは、誰かが危険な物を取ろうとしないかを見張るためだよ。」
トオ「それって、《皆を信用してない》ってことじゃないの?」
サイト「と、言うと?」
トオ「その話ってさ、誰かが武器を取ろうとしてるって前提でしょ?」
その瞬間、俺は何かの衝撃を受けた気がした。どうやらそれは全員同じだったみたいだ。
ランコ「それは…。」
メイカ「…だからって見張りを外すことはリスクが高いっすよ。このゲームもあることっすし。」
トオ「…そうだね、ごめん。聞き流して。」
イクタ「まあ、班は一応考えてくるよ。」
サイト「じゃあ、次は僕から。」
シュウキ「どうした?」
サイト「こんな状況だけどさ、地下室に行ってみない?」
メイカ「それはどうして?」
サイト「一応、地下室には出れるかもっていう希望がある。…可能性は捨てきれないよ。」
ランコ「でも、少し怖いですよね…。」
サイト「僕は希望を捨てちゃいけないと思うんだ。だから、明日までに考えておいて。」
シュウキ(地下室か…。)
その後は自由行動になった。俺は、エマの審議の場所へと向かった。
やはり、扉は前回同様開くことはなかった。
シュウキ(開かないか…。)
次に武器庫へ向かった。
イクタ「シュウキくん、どうしたの?」
武器庫ではイクタとサイトが見張りとして居た。
シュウキ「見張りが居るのかどうか見に来ただけだ。」
サイト「そっか、大丈夫だよ。」
シュウキ(前のサイトなら、「武器でも取りに来たの?誰か殺すんだね♪」って言ってたはずだ。…改心したのは本当だったな。)
シュウキ「一応中を確認していいか?武器の種類は少ないしな。」
イクタ「うん、いいよ。」
サイト「そうだ、僕たちも中に入ろう。」
俺達3人は武器庫の中に入った。
シュウキ「やっぱり死体が無くなってるな。」
サイト「みたいだね。それどころか、棚も薬剤も全部元に戻ってるよ。」
シュウキ「でも、本当に種類がないな。隠し扉っていうのもないな。」
イクタ「みたいだね。…そうだ!ここの物を処分するっていうのは?」
サイト「でも武器はできないとして、毒薬はどこに捨てる?流しは何か危険そうだし…。」
シュウキ「処分はしない形にしよう。最終的に見張りが居ると安心だからな。」
イクタ「まあ、そうだね。」
俺は武器庫を離れ、他の人を探しに行った。
ついたのは階段を降りて、1階の図書室だった。残りの全員がそこにいた。
メイカ「シュウキさん。どうしたんすか?」
シュウキ「暇だから来た。そっちこそ、何で全員集まっているんだ?」
トオ「僕は1階の探索に来てるだけだよ。」
ヒカリ「わたしは単純にここが好きだから来たよ!」
ランコ「私はヒカリさんにお付き添いしないといけないので…。」
ヒカリ「何その保護者感!?」
メイカ「まあ自分もここが好きだからっすよ。」
シュウキ「そうだったのか。あと1つ気になったんだが…ヒカリとランコさん、距離近くないか?」
肩スレスレの距離だ。
ランコ「えーと、どのくらい離れたらいけないのかが少し怖くて。」
ヒカリ「うんうん。それに何か離れたくないというか…」
シュウキ「ヒカリは無視するが、確かにどのくらいの距離か分からないな。」
ヒカリ「無視された!」
ランコ「なので、こうして距離を近づけているんですよ。」
シュウキ「なるほどな。」
シュウキ(本来、殺しが起きやすそうな2つの役職だが、この2人だと大丈夫な気もするな。)
トオ「シュウキくん。この後どこか行く予定はある?」
シュウキ「予定はないが、ここに長居もしないな。どうした?」
トオ「えっと、一緒に探索手伝ってくれないかなって思って…。」
シュウキ「俺は全然いいぞ。」
俺とトオは探索に行くことにした。
そんな中、ロビーで…
トオ「そういえば、ここで最初に皆と会ったんだよね。」
シュウキ「そうだな。あのときは俺を含め12人居た。」
トオ「今は7人…5人も減っちゃったんだね。」
シュウキ「そういえば、トオは1回目と2回目の審議はどんな心構えだったんだ?」
トオ「あのときは、最後には皆死ぬんだからどうでも良いやって思ってた。」
シュウキ「…そうか。」
シュウキ(トオも今はいかにして生きるかを考えてる。…トオも変わったみたいだ。)
トオ「じゃあ、他のところに行こうか。」
シュウキ「そうだな。」
俺とトオはしばらく探索をしていた。そのとき、メールが届いた。
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To:全員
From:イクタ
夜ご飯食べよう。だから1度食堂に集合だね。
送,18:20
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トオ「…確かに少しお腹減ったね。」
シュウキ「まあ、とりあえず食堂に行こうか。」
俺達は食堂に向かった。
イクタ「よし、全員集まったね。」
テーブルには7個のカップ麺があった。
シュウキ「…こんなものまであったのか。」
シュウキ(そうか、料理が上手な人たちはもう…。)
メイカ「とりあえず冷めないうちに食べるとするっすか?」
サイト「そうだね。じゃあ、いただきます。」
各自でカップ麺を食べ始めた。
ヒカリ「ランコさん。今日はどっちの個室使って寝る?」
ランコ「そうですね。じゃあ私の個室にしましょうか。」
メイカ「ヒカリさん。ランコさんにいたずらしちゃダメっすよ?」
ヒカリ「しないよ!た、多分…。」
ランコ「多分!?」
シュウキ「イクタ、サイト、俺が来たあとに何かあったか?」
イクタ「いや、特に何もなかったよ。」
サイト「うん。異常はなかった。」
トオ「シュウキくん、1階には調べたとこ以外にどこかある?」
シュウキ「いや、ないはずだ。」
トオ「じゃあ、2階だね。そこで…」
シュウキ「言わなくてもいいぞ。分かってる。」
夕食を食べ終わった俺達はまた自由行動になった。俺は階段前でトオをおぶった。
シュウキ「おいしょっと…。」
トオ「シュウキくん、僕って重いかな?」
シュウキ「そんな気にする必要ないぞ。重くはないしな。」
俺達はそのあとゲームマスターのアナウンスが入るまで探索をした。そして、
ゲームマスター「皆様、就寝時間15分前となりました。個室にお戻りください。」
トオ「時間か。シュウキくんありがとうね。」
シュウキ「いや、大丈夫だぞ。」
俺はトオと別れて個室に戻った。
俺は疲れていたのか、そのまま寝てしまった…。
朝起きて、俺は食堂に向かった。
食堂に全員集まった頃、
イクタ「じゃあ、今日は久々に会議を始めよう。」
とイクタは、カップ麺を片手に言った。
《9日目─会議開始─》
メイカ「まず、新しく解放された部屋についてっすね。」
シュウキ「何もない部屋と、3階が解放されて、3階には暗いだけの部屋と、1階と繋がるはしごがあったはずだ。」
ヒカリ「確か、何もない部屋には防音性能があったね。」
ランコ「そして、はしごはトレーニングルームと繋がっていましたね。」
トオ「あれはなんのための部屋なんだろう?」
サイト「部屋もそうだけど…地下室のこと考えてくれた?」
イクタ「うん、考えたよ。」
サイト「みんなの意見が聞きたいんだけど、地下室に行きたくない人は?」
…。
メイカ「誰も手を挙げないっすね。」
サイト「ということは…皆行くってことでいいの?」
トオ「僕は、サイトくんの言う希望を見たいからね。」
サイト「じゃあ、早速ご飯が終わったら行こうか。」
イクタ「他には…無さそうだね。」
《9日目─会議終了─》
そして俺達はご飯を食べ終えて、地下室に向かった。




