1話:人のため、前向きになり、覚悟持て
ついに4章を迎えました。
ありがとうございます。
これからもシキジを宜しくお願いします。
3章のあらすじ
シュウキたちはモニターの部屋でDVDを観た。その映像には正体不明の黒く塗りつぶされた人が映っていた。
武器庫には危険な道具がたくさんあったため、見張りをつけることにした。シュウキとチュウゾウが見張ってたとき、トオがチュウゾウに呼ばれた。そしてトオは武器庫の中に入り、チュウゾウも中に入って閉じこもってしまった。しばらくして扉が開いたが、そこでチュウゾウが死んでいた。
審議では、トオが殺したか否かで話し合ったがチュウゾウの契約、
「物を手のひらで掴むことの禁止」
で、契約を発動できず死んでしまった《事故》と判明する。
そして、ルール上犠牲者を選ぶのだが、トオを庇ってエマは
《人を傷つけることの禁止》
という契約を破って犠牲者として死んだ。
辺りには不穏な空気が漂っていた。最初に口を開いたのは、意外な人物だった。
トオ「…今までごめんなさい。僕、迷惑をかけた。」
トオはエマに切られた手の甲をおさえて言った。
ランコ「い、いえ、決してそんなことは…。」
トオ「僕は、エマさんに気づかされた。いくら自分を低く見たって、現状は何にも変わらないってこと。」
シュウキ「トオ…。」
トオ「僕は決めた。僕は、皆の役に立ちたい。僕はもう死にたくないし、死なない。チュウゾウさんやエマさんのためにも…ね。」
と、トオはまっすぐな目をして、笑っていた。
サイト「…僕だって同じさ。エマさんのあんな姿見たら、もうふざけてなんていられないよ。」
ヒカリ「サイトくん、君…」
サイト「…ごめん!」
と、サイトは頭を下げて言った。
サイト「僕があんな態度をしてたのはゲームマスターを撹乱させるためだったんだ。だけど、今回ので全部吹っ切れたんだ。…僕にも協力させてよ。」
イクタ「サイトくん…。」
メイカ「とりあえずここから出るっすよ。トオさんの手当てをするっす。」
今日は解散という形になった。
シュウキ(そういえば、食事は誰が作れるのか分からないな…。)
俺は食堂へ向かって、そこの奥にある扉に入った。
シュウキ(…誰もいないか。)
ここは最初の日に探索して以来入ってなかったが、いつ見ても驚くほどの食材の多さだ。
シュウキ(とりあえずこれを貰っていこう。)
俺は一粒一粒冷蔵されていたブドウをとった。どうやらこれが良い保存方法らしい。次の瞬間、何かを思い出した気がした。
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???「いいかシュウキ、ブドウはたくさんの果実がついてるよな?」
そいつは、ブドウを持って言った。
シュウキ「そうだけど…。」
???「じゃあ、ブドウの上と下では甘さが違うって知ってたか?」
シュウキ「そうなの?」
???「お前にはまだ早い話だけどな、俺は変えたいんだ。このブドウみたい差別待遇されてる世界を。」
シュウキ「?」
???「ははっ、少し恥ずかしいことを言ったな。」
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シュウキ「今のは…?」
おそらく俺が小さいときの記憶だが、あんな人とは知り合いではなかったはずだ。
シュウキ(少し整理しよう。)
ここに来てから、あまりにもこういうことが多い。他にも欠如している部分は?
まず、俺は今17歳だ。ということは大体高校2、3年生だ。
…待てよ?俺の小学校は覚えているが…
《中学校はどこだ?》《高校は?》《…そもそも、俺は本当に行っていたのか?》
俺は自分に対して恐怖した。俺は、
《小学校卒業後からの記憶がない…。》
それと、
《2人の大事な人を忘れている気がする…。》
シュウキ(俺は一体誰なんだ…?)
…俺は気持ちを落ち着かせるために、個室に戻ろうと2階に上がったとき、トオに話しかけられた。よく見ると、左手に包帯が巻かれている。手当てした後のようだ。
トオ「あっ、えっと、シュウキさん?」
シュウキ「…トオか。どうした?」
トオ「1つだけお願いがあるんだけど…。」
シュウキ「お願い?」
正直、今の状態でされても厳しいが…
トオ「僕を…お、」
シュウキ「お…?」
トオは少しためらったあと、恥ずかしそうな顔で言った。
トオ「…おんぶ…して?」
シュウキ「…!?」
突然のことで驚いた。
シュウキ「…それはいいんだが、おんぶしてどうするんだ?」
トオ「一階に行ってほしいんだ。少し試したいことがあって。」
俺はとりあえずトオをおぶって一階に降りた。
シュウキ「…これでいいのか?」
トオ「うん、ありがとう…。」
少しほっとした声で言った。しかし、次は真面目な声で、
トオ「実は、これ、僕の契約なんだ…。」
と言って、携帯を俺に見せてきた。渡されなかっただけましだった。
シュウキ「えっと…《階段の昇降の禁止》か。」
トオ「うん。でも、僕の足でないなら大丈夫かなって思って。」
そういえば、審議の場所は全て2階で行われていた。そして、ゲームマスターの呼び掛けにトオが応じなかったのもこれが原因かもしれない。
シュウキ「結構な賭けだな。」
トオ「でも、こうして僕は生きている。僕はもう、迷ってなんていられないんだ。」
シュウキ「そうか…。」
トオ「シュウキさん。元気だしてよ。そして、一緒に前に進もうよ。」
シュウキ「…元気なかったの、顔に出てたか?」
トオ「いや。」
首を振って答えた。そして、
トオ「ただ、今、いつも皆を救ってたシュウキさんじゃないなって思っただけだよ。シュウキさんはシュウキさんだからね。」
シュウキ「…ふっ、そうか。ごめんな。」
正直、トオに慰められるとは思わなかったが、心が少し晴れた気がする。
シュウキ(俺は俺のままでいいのか。)
トオ「えっと、もうひとつお願いが…」
シュウキ「…分かってる。」
俺は残ったブドウを渡した。
シュウキ「お腹減ってるんだろ?」
トオ「…ありがとう。驚いたよ。やっぱり推理が得意なんだね。」
シュウキ「あと、どうせなら探索していくか?新しいところもあるしな。」
俺とトオは新しいところへ向かった。
どうやら新しく解放されたのは1階と2階に1つずつみたいだ。俺たちは1階の方の扉に入ってみた。
シュウキ「ここは…?」
トオ「ただの部屋みたいだね。特に何かあるわけでも無さそう。」
ヒカリ「あっ、2人とも!」
ヒカリがこっちに突進してきたので、軽くかわした。ヒカリは後ろの壁に激突した。
シュウキ「どうしたんだ?」
ヒカリ「いたた…メールで呼んでたんだけど全然来なかったじゃん。だから心配で心配で…。」
確認すると、自分の受信フォルダに1件のメールがあった。
シュウキ「あっ、すまない。」
トオ「僕もだ。ごめんなさい。」
メイカ「まあ、良かったっすね。ひと安心っす。」
シュウキ「話を変えるようだが、この部屋は?」
ランコ「どうやら、本当に何もないようですが、防音性能があって、密閉性の高い部屋みたいです。」
シュウキ「また防音か…。」
トオ「まあ、何も無さそうだし、他のところに行ってみよう?」
シュウキ「そうだな。」
俺たちは2階の方へ向かった。道中、
トオ「あっ、ごめん。」
シュウキ「そうか、おぶるんだったな。」
俺はトオをおぶって階段を上がった。
そこの扉の先には…。
シュウキ「…階段があるな。」
トオ「つまり、3階があるみたいだね。行ってみよう。」
…
シュウキ「それって…。」
トオ「まただね…。ごめん。」
シュウキ「まあいいんだが。」
…
イクタ「あっ、シュウキくん。」
サイト「シュウキくん、ここに扉が4つあるんだけど、そのうち2つは開かなかったよ。」
シュウキ「あ、ああ。そうか、ありがとう。」
前のサイトのキャラとはかけ離れて違うことが分かった。
シュウキ「じゃあ、その2ヵ所に行こう。」
まず、1つめの場所は一本道だった。
トオ「特に何もない一本道だね。」
そこを通ると、扉が見えてきた。
中に入ると、はしごがあった。
シュウキ「降りてみよう。」
トオ「多分はしごは大丈夫かな。」
少し長いはしごを降りて出たさきは、
シュウキ「ここは、トレーニングルーム?」
一階のトレーニングルームだった。
トオ「これ、なんのために?」
俺たちはまた、はしごを昇って元の場所に戻った。
シュウキ「じゃあ、もう片方のところに行こう。」
俺たちはもうひとつの方へ向かった。
シュウキ「…何も見えないな。」
中は暗闇だった。だが、
トオ「いや、大丈夫だよ。」
シュウキ「?」
トオ「僕の特技は《暗視》なんだ。ここに来る前、ずっと暗いところにいたからね…。」
シュウキ「…何が見える?」
トオ「いや、ここは何も無さそう。ただ、暗いだけの部屋みたい。」
俺はトオを信じてそこを出た。
突然モニターがついて、ゲームマスターが言った。
ゲームマスター「皆様、一階の何もない部屋にお集まりください。」
と言い残して消えた。
シュウキ「よし、どうせならはしごを使うか。」
トオ「僕をおぶるの疲れた?」
シュウキ(ばれてたか…。)
俺とトオは、はしごを使って一階の部屋に向かった。
ゲームマスター「皆様、お集まくださいまして誠にありがとうございます。」
イクタ「話っていうのは?」
ゲームマスター「今回、私が皆様にゲームを追加したいと思った所存です。」
メイカ「ゲームの追加っすか?」
ゲームマスター「その名も、《報道ゲーム》でございます。」
ヒカリ「報道ゲーム?」
聞いたことのないゲームだ。
ゲームマスター「まず、皆様に職業をメールで送信します。その職業にはそれぞれ効果があります。」
ランコ「効果…ですか?」
ゲームマスター「まず、《殺人鬼》です。これを与えられた人は、3日以内にある職業を殺さないといけません。その役職は《被害者》です。殺せなかった場合は死にます。」
サイト「それをひいたら、もう覚悟を決めろってことだね。」
ゲームマスター「そして《被害者》を与えられた人が誰かに殺されない限り、このゲームは終わりません。自殺や契約で死ぬとこの効果は無効になります。」
シュウキ「つまり、殺人鬼は被害者を殺さないと殺人鬼は3日以内に死んで、ゲームは永遠に終わらないってことか…。」
ゲームマスター「次に《第一発見者》です。これを与えられた人は、職業が被害者の方の死体を、犯人以外で最初に発見しなければ死にます。」
ランコ「少し難しい職業ですね。」
ゲームマスター「次に《リポーター》と《カメラマン》です。この二人はペアとなり、一定距離離れると、2人とも同時に死にます。なので、就寝の際も同じ個室で。」
ヒカリ「男女だったら色々ヤバイね…。」
トオ「?」
ゲームマスター「次に《警察》です。」
サイト「警察…。」
ゲームマスター「これを与えられた人は、殺しを行うと必ず死にます。」
メイカ「つまり、警察はこのゲームに紛れて誰かを殺そうとしたらダメってことっすね。」
ゲームマスター「最後に《野次馬》です。これは特に効果はありません。」
イクタ「効果はないんだ…。」
ゲームマスター「職業は、常に携帯の機能で見れます。」
メイカ「質問っす。もし第一発見者が被害者を殺したら?」
ゲームマスター「第一発見者の効果は無効となります。」
他に質問はなかったが、突然のことで驚いたのは皆同じだった。




