3話:自を生かし、他を殺す
前回のあらすじ
DVDを見てしまったシュウキたちは自由時間を過ごした。
…久々にゲームをしようとしたが、やり方が分からなかったためなかなかできなかった。俺は諦めて食堂に向かった。
エマ「ええと…送信ってやつを押すのか?」
ランコ「はい、そうですよ。」
エマ「…どこだっけ。」
ランコ「え…。」
チュウゾウ「おう!シュウキ。」
シュウキ「…どうした?やけに上機嫌だな。」
とチュウゾウさんは小声(?)で話した。
チュウゾウ「ああ、聞いてくれ!なんとな、トオがな、ワシたちが見張りのときに来てくれることになったんじゃ!」
シュウキ「トオが?いったいどうして?」
チュウゾウ「なんかな、ワシがご飯を運ぶ度に、外に出たらどうじゃ?って言ってて、うるさいから一度だけ外に出るらしいんじゃ。」
シュウキ(チュウゾウさんの性格ならあり得ない話じゃないな…。)
エマ「よし、送信できたぞ。」
直後に携帯から音がなり、
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To:最上
From:全員
夜ご飯できたぞ
送,18:55
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と送られてきた。
これを見て全員、食堂に集まってきた。
サイト「エマさん漢字打てたね♪」
エマ「…食事を運ぶとするか。」
イクタ「あっ、ご飯運ぶの手伝うよ。」
そうして全員、食事をとり始めた。
ヒカリ「二人とも、見張りどうだった?」
イクタ「ああ、それが…。」
メイカ「何かあったんすか?」
イクタ「寝ちゃってたみたいで…途中の記憶がないんだよね…。」
シュウキ「寝た?イクタが?」
サイト「そうそう!イクタくんぐっすりお休み状態だったよ!」
エマ「サイト、お前が薬をイクタに使って武器を盗ろうとしたんじゃないのか?」
サイト「うわ!ひどいなぁ。本当に寝てたよ♪」
ランコ「恐らく、イクタさんに疲れが出たんでしょうね。」
イクタ「武器庫の見張りをしようって言ったのは僕なのに…ごめんね。」
チュウゾウ「それは構わんのじゃが…サイトが武器を盗んだ可能性があるのう。」
イクタ「いや、大丈夫だったよ。全てあったから。」
ヒカリ「そういえば、武器庫の中身って全部覚えられるの?」
サイト「うん♪武器庫っていっても、斧、剣、あとは弓矢とそれにつける毒薬2種類だけだからね♪」
メイカ「そういえば、器具室にも武器みたいなのがあったはずっすよね。」
シュウキ「いま確認されたのは飲む毒薬や、ハンマー、砲丸だったな。」
ランコ「ですが器具室が広すぎて発見できないだけで、実はもっとあるかもしれないですね。」
シュウキ「だったらそこにも食事が終わったら見張りをつけるか?」
イクタ「うーん…そうしよう。」
チュウゾウ「わがままをいうようじゃが、ワシは明後日にしてくれんかのう?」
シュウキ(明後日はトオが来るからか。)
エマ「だったら、わたしとランコさんで今日の夜と明日に器具室の見張りをする。いいか?ランコさん。」
ランコ「ええ。大丈夫ですよ。」
チュウゾウ「すまんのう。」
メイカ「じゃあ武器庫は予定通り自分とヒカリさんでいいっすか?」
シュウキ「ああ。宜しく頼む。」
こうして食事は終わった。
イクタ「じゃあ見張りに行こう。」
サイト「はいはーい。」
エマ「ランコさん。」
ランコ「はい!」
メイカ「食事の片付けはお任せあれっす!」
ヒカリ「わたしもやるよ。」
シュウキ「俺もやろうか?」
メイカ「大丈夫っすよ。人数が多いと逆に難しいっすし。」
チュウゾウ「じゃあ、お言葉に甘えさせて貰うとするかのう。ワシは食事をトオにあげてくる。」
かくして俺は自由行動になった。
シュウキ(どうしようか。)
とりあえず俺は器具室に向かった。
ランコ「あっ、シュウキさん。」
シュウキ「ランコさん、エマ、調子はどうだ?」
エマ「調子もなにも…今来たばかりだからな。」
ランコ「そういえば、今ちょうど器具室にどんな危険なものがあるのか、ということを話していました。」
エマ「ああ。だから器具室の中に入って確認してみよう、という話になったな。」
シュウキ「…まさか。」
ランコ「ごめんなさい、シュウキさん。」
エマ「共に行こう、シュウキ。」
シュウキ「…。」
運の悪い俺は、器具室で危険なもの探しをすることになった…。
エマ「これは危険か?」
と、エマは竹串を持って言った。
ランコ「ええと、使い方によっては…ですかね?」
シュウキ「だったら、こんなのも使い方によってはだぞ。」
と、俺は漂白剤と洗剤を持って言った。
エマ「それは塩素系漂白剤と酸性の洗剤か。」
ランコ「何が危険なのでしょうか?」
シュウキ(ランコさんは、普段洗濯とかしないのだろうか?)
エマ「確か混ぜると塩素ガスが発生するんだったか?」
シュウキ「ああ。簡単に言えば、吸うと呼吸困難になる。」
ランコ「な、なるほど。でしたら危険ですね。」
エマ「しかし、きりがないな。どれもこれも危険に見えてくる。」
シュウキ「だからといって、処分することはできないな。後々に必要になってきそうだ。」
ランコ「やはり、見張りをつけるしかないみたいですね。」
俺たちは、すごい発見が特になくて、危険なもの探しを終えた。
その後に、就寝時間になる前に俺たちは個室へ向かった。そして、ゲームマスターの声が聞こえた。
ゲームマスター「皆様、就寝時間15分前となりました。二階にある、それぞれの個室へとお戻りください。」
シュウキ(…もう戻ってる。)
俺は恨みを込めて、心の中で呟いた。
…
今日も食堂に向かった。
食堂には、朝には見慣れない顔がいた。
シュウキ「あれ、ヒカリ?朝早くいるなんて珍しいな。」
ヒカリ「うぅん?シュウキくんかぁ。おはよぉ…。」
と、ヒカリが寝ぼけてそうな声で言った。
メイカ「これは、自分の責任っす。」
シュウキ「一体、何があったんだ?」
イクタ「どうやら、メイカさんが見張りすることを張り切りすぎて朝早くに見張りに行ったみたいだよ。」
ランコ「それで、ヒカリさんを起こしたらしいです。」
シュウキ「メイカもメイカだが、ヒカリもヒカリだな。朝に対して慣れなさすぎだ。」
イクタ「でも、農家さんって朝早いって聞くけど…ヒカリさんは違うの?」
ヒカリ「えぇっとぉ…うぅんとぉ…。」
ランコ「…今質問しても意味がないみたいですね。」
シュウキ「まあ、そこまで見張りは張り切るものじゃないと思うぞ。」
メイカ「本当にヒカリさんに申し訳ないっす…。」
チュウゾウ「おう!みんな、おはよう。」
サイト「みんなー、おはよう♪」
ヒカリ「チュウゾウさんにサイトくんだぁ。」
と、ヒカリがテクテクと歩いてって体当り…いや、ハグしようとしていた。
シュウキ(日本の挨拶ではないな。)
メイカ「ストップストップっす!」
と、メイカが必死に抑えたためなんとかなったが。その声でヒカリが正気に戻った。
ヒカリ「…ん!?…え!!?」
ヒカリからすれば、急にメイカと抱き合うような形になってたため驚いただろう。
メイカ「…あれ、もしかしてとんでもない勘違いされてるっすか?」
エマ「ご飯ができたぞ…?」
タイミング悪くエマが来た。
エマ「…ああ、なるほど。そういう…。」
イクタ「あっ、エマさんも勘違いしたみたいだね…。」
シュウキ「…さて、どう収拾つけようか。」
…
ヒカリ「本っ当にごめん!チュウゾウさん!サイトくん!」
チュウゾウ「がはは!ワシは気にしないがのう。」
サイト「僕はドキドキしちゃった♪嘘だけど。」
ランコ「…一応お伺いしますが、本当はどう思ったのですか?」
サイト「ん?鼻折ってたね♪」
ヒカリ「だ、大丈夫だよね!?わたしの鼻!」
メイカ「えっと、事情は話した通りっすけど、自分も悪かったっす。ごめんなさい。」
チュウゾウ「まあ、朝早く見張りは感心するところじゃのう。よし、明日は早く起きて見張るかのう?シュウキ。」
シュウキ「うっ。」
エマ「わたしも勘違いしてしまってすまなかったな。わたしはてっきり2人が…」
イクタ「それ以上言ったら危険だよ。」
そんな珍事件の後に食事は始まった。
メイカ「…でも、同性でもハグは初めてっすね。」
ヒカリ「その話禁止だよ。もう…。」
と、ヒカリは自責の念でつぶれていた。
イクタ「あっ、そうだ。ヒカリさんは農家だけど、朝早くないの?」
と、イクタは思い出したように言った。
ヒカリ「えっと、朝はお兄ちゃん担当だったからね。お兄ちゃんは、夜はぐっすり寝たいからって。」
エマ「そうか、ヒカリには兄がいたんだったな。」
ランコ「ぐっすり寝たい…その気持ち、とても共感できます!」
イクタ「ランコさんは夜早いんだね。」
ヒカリ「そして、わたしは夜担当。夜更かしは得意だからね。」
シュウキ「誇らしげに言うことじゃないけどな。」
サイト「だから、朝になるとあんな感じになるんだね♪」
ヒカリ「またそうやって、その話するー!」
チュウゾウ「まあ、何事もなくてまだ良かったがのう。」
メイカ「あっ、話変わるっすけどいいっすか?」
ヒカリ「あっ、話変えて!」
メイカ「図書室に皆さんの個人情報が載ってる本があるのって知ってるすか?」
シュウキ「ああ、あれか。」
サイト「へえ、そんなのがあるんだね♪」
メイカ「性格悪いっすけど、皆さんのチラチラってヒカリさんと見ちゃったっす。」
ヒカリ「そうだった、ごめんなさい!」
シュウキ(ヒカリは今日はよく謝るな…。)
エマ「それってプライバシーの侵害だな。ゲームマスターはなぜそれを持っているんだ?」
ランコ「いまだにゲームマスターは謎の存在ですね…。」
メイカ「内容は簡単に、名前、生年月日、出身地、職業、好きなものと嫌いなものだったはずっす。」
ヒカリ「例えば、エマちゃんの嫌いなものはお化けと機械とか。」
エマ「お、おい!」
メイカ「…そういうヒカリさんだってお化けと朝って書いてあったっすよ。」
ヒカリ「ま、まあね。」
そうしてその本についての話題が広がって、食事は終わった。
明日の器具室の見張りはイクタとサイトになったらしい。
俺は食事が終わってもやることがなかったため、時間を適当に潰していた。
昼ご飯が終わっても、夜ご飯が終わっても。
内心、もう探索の必要性なんて考えられなくなってるのかもしれない。
…もし、ここで平和に過ごすことができたら幸せになれるんじゃないか?
なんてことまで考え出しはじめた。
そんな日の就寝時間、俺は個室で目を瞑り、夢を見た。
前と同じ、とても短い夢だ。
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それが許されると思うのか?自を生かし、他を殺す。これがお前の本質だ。
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俺は静かに目をあけた。それと同時に、ドアがノックされて、
チュウゾウ「おい!シュウキ!居ないのか!?」
シュウキ「居ないわけないだろ。どうした?」
チュウゾウ「見張りじゃぞ!気合い入れんか!」
シュウキ「…。」
とりあえず向かった。
…
武器庫の見張りがまさかこんなにも退屈だとは思わなかった。チュウゾウさんも、とても退屈そうだ。
そして、やっと変化があった。
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To:最上
From:全員
ご飯出来たぞ。皆集まってくれ。
送,8:20
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シュウキ「よし、行くか。」
チュウゾウ「そうするかのう。」
俺たちは食堂へ向かった。
イクタ「あっ、見張り大丈夫?」
シュウキ「…暇すぎて死にそうだ。」
サイト「本当に死なないでよ♪」
そして、食事をとり始めた。
チュウゾウさんは、今日トオが来ることを誰にも伝えなかった。恐らく、犯人にとってとても狙いやすい的のため、なるべく言いたくなかったのだろう。
チュウゾウさんと俺はトオの個室へ食事を運ぶことにした。
チュウゾウ「トオ、居るか?」
と、チュウゾウさんがノックしながら呼び掛けた。
少ししてドアが開いて、
トオ「…。」
チュウゾウ「トオ、武器庫の見張りしながらご飯食べるぞ。」
そうすると、トオは個室から出てきた。
俺は少しドキリとしてしまう。なぜなら、トオは審議にしか姿を見せないからだ。
俺たちは、武器庫へと向かった。
見張り途中に俺たちは話した。
チュウゾウ「トオ、なんか話したいことあるか?」
トオ「…ない。」
シュウキ「俺たちのことどう思ってる?」
トオ「…。」
シュウキ(…どうも思ってないってことか。)
チュウゾウ「まあ、あれじゃ。頑張れ。」
シュウキ(何に対してだ?)
トオ「…。」
また沈黙が続いた。が、チュウゾウさんはまた話した。
チュウゾウ「そうじゃ、トオには家族が居るのか?」
トオ「…!」
と、トオの顔がみるみる青くなっていく。
トオ「あ、ああ、ああぁぁぁ…。」
トオは何かに怯えるように後退りして、なんと武器庫の中に入ってしまった。
チュウゾウ「地雷じゃったか!くそ!」
と、チュウゾウさんも入っていく。
俺も後に続こうとしたが、
チュウゾウ「シュウキは入ってくるな!」
と、ドアの隙間から言われて足が一瞬すくんだ。
その後、ドアの鍵が閉められた。
シュウキ「チュウゾウさん、ここで何かあったらどうするんだ!?」
と、聞いてみるが返事はなかった。
シュウキ(サイトを呼ぶか?)
だが、俺はしばらくそこにいた。もし、俺がサイトを呼びにいってる際に2人とも出てきたら、より状況が悪化すると考えた。
…どれほど時間が経ったのだろうか。俺は、サイトを呼べば良かったと後悔していたとき、そのときがやってきた。
鍵が開く音が聞こえて、そこから出てきたのは、
血まみれになったトオだった。
奥には、棚の下敷きになって轢かれたカエルのようになって死んでる、
黒山 柱造の、無残な姿があった。
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死亡者
・チュウゾウ
残り8人…




