送っちゃった
「ん~これは軽いか?けどこだと堅苦しいかな?」
19時頃から考え出したのに、いろいろ考えていると時間はあっという間に過ぎ、現在の時刻は23時。文面を考えるのに4時間もかかってしまった。そしてそれから送るべきかどうかを再び悩み、現在1時。もはや相手が恐らく寝ているだろう時間になってしまった。
送信ボタンの上に指を置いて悩んでいる聖恵はさすがに集中力が切れたのか、突然の睡魔に襲われ眠ってしまった。送信ボタンの上に置いてあった指は見事にボタンに触れ、画面は送信しましたと表示されている。
「あれ、ここは···私寝ちゃったの!送れてるのかな?」
聖恵は、起きた時に自分がピンクの雲の上に居ることで、状況を理解した。ここが自分の夢の中で、寝てしまったということに。
「深く考えずに送っちゃえば良かったのに。」
狐のお面を着けた愛奈がピンクの雲に乗って聖恵の前に現れた。
「私ってちゃんと送れたの?」
「私はあなたなのよ。あなたの知らない事はわからないわ。聖恵が眠れば私も寝ちゃうもの。」
愛奈は立ち上がると、両手を上げて首を横に振る。
「そっか」
少ししょんぼりとした聖恵であるが、目覚めたらすぐに確認しようと、グッと拳を握る。
「ところで、今日は大変だったわね。」
再び雲に座り込みながら愛奈は聖恵をみた。
「そうなの。なんかいろいろあってまた記憶飛んじゃった。愛奈は紅葉さんって知ってる?」
聖恵は今日を振り返り、昔の自分に出会えた喜びとまた記憶を無くしてしまったショックから微妙なテンションで、愛奈の横に座る。
「もちろん知ってるわ。よく一緒に遊んで、お姉ちゃんみたい存在だったわ。」
「愛奈はやっぱり知ってるんだね···」
紅葉はやはり自分の過去を知る人物だったのにも関わらず、思い出せずに意識を失って手掛かりもなくしてしまったショックで再びしょんぼりする。
「何落ち込んでんのよ。今回は紅葉を見て違和感を感じただけじゃなくて、記憶も少しフラッシュバックしたじゃない!少しの記憶だけどあなたの努力の結果だと、私は思うわよ」
「そうなのかな。」
「そうよ。だから笑いなさい」
「ほひゃ」
愛奈は聖恵の頬っぺたを両手で軽くつねる。
「あなたはどんな時でも笑っていられる、明るさが持ち味でしょ。しっかりしなさい。」
ハッと目を開けるとそこは、ピンクの雲は浮かんでおらず、カーテンの隙間から朝日が入る、いつもの部屋の天井だった。
聖恵は自分が目覚めたのだと気づくと、飛び起きてスマホを開いた。
スマホの顔面には、新着メールが一件と表記されていた。聖恵は恐る恐る開くと、影芝からメールが返ってきていた。
内容は無理するなというような、当たり障りのない内容であったが嬉しくてつい、メールを保護してしまっていた。
そのまま聖恵は、気づかってくれたことへのお礼の返信も今度は躊躇うことなく送った。




