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強さ

これだけの期間が空いてしまい申し訳ないです。

もっと短くしなければ。

〜〜七年前・グローセ7歳〜〜


その日の始まりは、最悪な夢から始まった。それまでは生まれ変わる前の記憶が最悪の悪夢だったのに余裕でぶっちぎって最悪になってくれた夢を見たところから始まった。この頃はその夢をたくさん見ていたのでこれを理由に働かないという選択肢は選べない。なので僕はほとんど日課と言っても差し支えがないものを達成するために街へ出ることにした。昨日仕留めたイノシシを引きずって。


ほとんどと言っても日課だ。頻繁に出入りをしていることに変わりはないため門の守衛はスルーで通してくれる。まあ、元々おざなりということは否めないが。


街を歩いているとそこらじゅうから敵意のようなものが飛んでくる。まあ、理由はわかっているのでこちらからは何もしないけれど。


『毎回飽きもせずによくもまあぁ、敵意をこんなに向けられるもんだぜ』


と、突然声が飛んでくる。視線をチラリと上に向け、そこに火の玉があることを確認する。最初の、本当に最初の頃は驚いたものだがもう慣れたものだ。この火の玉は悪神と契約した僕にしか見えない。こいつ自身が悪神の分身だからだ。いや、分身よりもトカゲの尻尾の方が適切なのか?


『お前、俺をそんなチャチなもんと一緒にすんなよ。ぶっ殺すぞ』


また、勝手に人の心を覗く。エチケットというものを大切にしてもらいたい今日この頃だ。


(まあ、それはさておき、話を戻すと敵意というよりどちらかといえば恐怖に近いんだろうね、あれは)


『ふんっ、知ってるよ。そんなことぐらい。まったく理解はできねえがなぁ』


(まあ、それは仕方のないことじゃないかな?それが人間らしさといえるものだとも言えるし)


と、思わずクスッと笑ってしまうとそれに驚いたのか一気に敵意が薄れる。触らぬ神になんとやらと、ここの人たちもそれは理解している。なので遠巻きにしか敵意をぶつけることしかできない。自分の近くに来るとその限りでもないのだろうけれど。


そうこうしているうちに、目的の建物に近づく。外見はボロっちいが、それでも立派な店と感じるような貫禄を滲ませている店だ。そこに入ろうとしようとしたところで止める。そのことを不思議に思ったのだろう、オクトタが『どうしたぁ?入んねえのかぁ?』と、疑問を投げかけてくる。


それに対して僕は、


(ああ、弱ったな。僕だって入りたいんだけど珍しく今日はディサさんが受付をしているみたいなんだ。流石に入りづらくてね)


『ああぁ、ディサねえ。あいつは他とは違う意味でお前に敵意を持ってるからなぁ。確かにかち合うと面倒なことになるなぁ。別に毎回会う必要もねえんだろ?それ、店の中に置いて今日は帰ったら良いんじゃねえかぁ?』


と、オクトタに言われてしまった。この言葉で僕の気持ちは今日は店に入らない、にかなり傾いてしまった。どうしようか?と悩む僕。ディサさんはここに来る途中の有象無象どもとは違う明確な敵意を僕に持っていた。その理由を痛いほど僕は知っているし解決しようと思えばすぐに解決することもできる。ただ、それは今の生活を続ける中で絶対に解決することは無いと言える。それは、|僕という存在を保つために(・・・・・・・・・・・・)必要なことだからだ。まあ、つまりこの関係を直すことはぶっちゃけ無理ということで、そして、そんな選択をする僕はあの人の敵意を甘んじて受ける必要があるということで。結論として今日はもう帰ろう、とでたわけだ。


その答えに行き着いた後の行動は迅速だ。持っていた猪を店の中に放り込んでダッシュで逃げる。店の中から「うおおっ!いきなり何だ⁉︎」と、いうような悲鳴とついでにそのあとの怒号を背中に受け取りつつ僕は店から離れていった。


店から結構離れたところで走るのを止め歩き始める。僕の今の顔はとてもやりきった感が滲んでいるのだろう。そう確信できる。


『ダメだなこいつ。どう考えても今のは、迷惑行為以外の何物でもなかっただろうがぁ。何でそんな目標達成!みたいな顔ができんだよ』


と、オクトタから呆れを含んだ言葉をもらう。だが、店の中に放り込めと言ったのはオクトタの方だ。なぜそこまで呆れられなければならないのか。意味がわからない。


『何言ってんだお前、俺は置いてこいとは言ったが放り込め何ぞ一言も言ってないぞ。そもそも常識的に考えてあのサイズの猪を店に放り込むなんざありえねえだろうがぁ』


(・・・・・あれ?そうだったっけ?もしかしなくてもこれは失敗したやつかな?)


『ああぁ、もしかしなくても確実にお前への評価は上から下に流れる水のごとく下がっただろうなぁ。あんなことする奴はお前ぐらいしかいないだろうし、すぐにバレるだろうなぁ』


希望も何もないと言わんばかりにグザグサと辛辣な言葉をどんどんと投げかけてくるオクトタ。もう、やめて欲しい。俺の精神はそんなに強く無いんだから。てゆうか、ぶっちゃけ弱い方だと思う。そんな僕に精神攻撃は効果抜群過ぎるんだけど。


オクトタに無慈悲な言葉をいただき、その事について悶々としたり唸ったり、注意が疎かになっていたことは否めない。だから普段は会わないようにしている奴等にぶつかってしまった。


肩に何かが当たる軽い衝撃を身体に感じる。注意が疎かになっていたことをすぐに理解した僕はすぐに謝ろうとする。


「注意が疎かになっていました。ぶつかってしまってすいませ・・・」


はたと気づく。さっきも話したがここの人達は基本的に僕に敵意又は恐怖を抱いている。つまり僕の周りを歩く人はいないということだ。ここは田舎と言っても過言で無い場所だが、旅人や、冒険者が来たりはする。だがそういう人達はこことは違う通り、宿や、冒険者組合などがある方にいく。こんな場所には滅多に来ないだろう。そして、明確に感じられた悪意。これらから導き出せることは・・・


「おお、いてえじゃねえか。なんか詫びでもしてもらわないと気が済まねえなぁ、こりゃあよぉ」


この街で一番の冒険者。Cランクのスリーワーズ、ということだ。そして、俺にぶつかって声を出したのはビッグという男だ。名前の通りムチャクチャ大きい。縦にも横にも。7歳の子供の僕から見ると肉壁が動いてるようにしか見えない。上を見上げたら、顔よりお腹に視線がまずいく。そんな大きさだ。

それにしても痛いとはこれ如何様に。身長差があり恐らくそのふくよかな腹に肩で当たっというのに、本当なら吹き飛ばされて泣きわめいてるところだ。当たったのが僕で良かったと思う。そんなことに思考がとられていると今度は別の方向から声がかかる。


「おいおい、話聞こえてんのかよ。詫びでもして貰わなくちゃな、って言ってんだよ。それに対する誠意はなんかねえのか?ああっ?」


今度はホースという男だ。馬面の顔を醜悪に歪めてこちらに話しかけてくる。この一連の流れを見てわかると思うが、こいつらは僕のことを嫌っている。僕はこいつらのことなんか何とも思ってないがそんな態度がさらにこいつらをイライラさせるようだ。


そもそもこいつらが僕を嫌っている理由は冒険者ランクで僕が一つ下まで追いついてしまったためだ。つまり僕はDランクということになる。冒険者はEランクから始まるので一つ上がっただけだ。こんな田舎じゃ凄いのだろうが、都市の方に行けばそんなやつ結構いる。実際前世で7歳ですでにCランクになっているやつを見たこともある。しかもDランクに上がったのも目立ちたいからじゃなくて母さんのためにやったことだ。正直関わってこられるのも鬱陶しくて仕方なかった。


「僕みたいな普通の子供に一体何をしろとゆうのですか?」


だから無難な返答を返す。『無難な返答で、僕みたいな普通の子供、なんて言葉は使わねえだろ普通』

・・・どうやら失敗したようだ。実際相手の眉もピクピクしているように思える。


「お前みたいな野郎が普通の子供だぁ〜っ。巫山戯んのも大概にしろよな。どれだけ俺たちをコケにしたら気がすむんだ」


今度はこのチームの中で一番小柄なディアーが僕に怒りをぶつけてくる。まあ、他のメンバーの顔を見る限りチームの総意と捉えて良さそうだが。


「え、ですが本当に僕は何をすれば良いんですか?そこのところをしっかりと言ってもらは無いと無茶ですよ。返答も何もないじゃないですか。僕はあなた達みたいに天才じゃないんですし」


今度は上手くいっただろう。相手をさりげなく褒めつつ要求をしっかりと求めている。完璧ではないだろうか。『お前、本当にコッチだとポンコツさが増すよなぁ』

・・・どうやら今回も失敗してしまったらしい。オクトタからため息までもらってしまった。


「「「どれだけ俺たちを馬鹿にすれば気がすむんだ!お前はぁ!」」」


「おおー凄いですね。3人とも同じ言葉を同時に言ってますね。凄いチームワークです」


その言葉と同時にとうとう武器に手をかけられてしまった。こりゃ本当にまずい。逃げなければ。でも、最後は確実に褒めていたのになぜ怒りが増したのだろう。


そんなことを考えつつ僕は追ってくる3人から逃げるのだった。



○○○



この街の人達はほとんどの人が僕と関わりるのを避けようとしたり、悪意ある行動をしようとしてくる。ただそれはほとんど、と言った通り全員ではない。この街に住んでいる8・・・サバを読むのはやめよう。9割以上、10割未満の人達は確かにそういう人達だ。だがそれ以外の人達は僕とちゃんと接してくれる。それが金をたかるための行動だとしても。


「兄ちゃん!あの怖いおじさん達からかくまってあげたんだからお金ちょうだい!」


「そうだよ。そうだよ。いつもみたいにちょうだいちょうだい。お金ちょうだい」


「お金じゃなくても良いけど何かお腹のふくれるものちょうだいー」


さっきから喚いているこの小さな子供達。小さいと言っても3歳から5歳で編成されているため、僕から見るとあまり変わらない。


正直7歳の僕が小さい子供とか意味がわからないが、そしてなおかつお金をたかられるというのもさらに意味がわからないが、喚いている言葉の中から聞こえる通りこの子達にはさっきの3人組から匿ってもらった。


その報酬は払うべきなのは納得するしかない。まあ、母さんが続けていたことを引き継いで普段からお金を与えていたのでいつもと変わらないといえば変わらない。強いてゆうなら少し普段より色をつけないと納得してもらえないぐらいだ。


「分かった分かった分かりましたよ。お金を渡すので少し離れてください」


そう言うとワアッと、慣れたもので一列に並んでいく。もちろん並ぶのは押し合いへし合いだ。どんな順番でも同じだけ渡すつもりなのにいつもこんな感じだ。まあ、気持ちはわからないでもないので怪我をしないようにとだけ言いどんどんと渡していく。


「今日は助けてもらったので、銅貨5枚づつ渡しますね。大事に使うんですよ」


その言葉を聞いてさらにはしゃいで喜ぶ子供達。現金なものでもらったら礼も言わずに一目散に出店が出ている通りの方に向かっていく。子供の人数は10人を超えるため結構な出費になるがまあ、構わない。これも、僕を保つために(・・・・・・・)必要なことに変わりないからだ。


全員渡し終えて元の道に戻って歩いていると後ろから強い衝撃が来る。何事かと思い後ろを振り向くとそこにはさっきお金を渡したはずの子がいた。さっきよりも身体はボロボロになっている。


そして、その子は他の子達より見覚えがある。それもなぜかというと、お金を渡す時いつも最後に貰っていくからだ。つまりあの中で一番非力である。そして、最近はとうとうお金を奪われてしまっていた。


「ウィーク、また奪われたんですか」その言葉に小さくコクンと頷くウィーク。「まったくそろそろストロ達にもお灸をすえないといけないかもしれないですね」その言葉にはフルフルと小さく顔を横に振る。


「そうですか。それは望まないですか。でも、そうしないと君が痛い目を見ますよ。それでも嫌ですか?・・・そうですか。分かりました。君は僕が思っているよりずっと強いみたいですね」


そう言って頭を撫でるとくすぐったそうに身体をよじらせる。そして、手を開かせるとそこに銀貨を1枚おいた。銀貨1枚は銅貨10枚分だ。これは人間の3大国が決めたことなので人間が王の国では全部この比率だ。ちなみに銀貨100枚で金貨1枚だ。それより下の貨幣はまた、国それぞれなのだが。


それはさておき、銀貨を置いてやると顔をパアッと輝かせて「ありがとう!」と言ってから走って行ってしまった。その背に「大事に使うんですよ」と投げかけてやると、こちらに振り向いて手を振って応えてくれる。


『あのガキ、前もああやって金をもらったから味をしめたんじゃねえのかぁ?』


「オクトタはわざとやられてるんじゃないかって言いたいんですか?」


『まあぁ、なぁ。そう言うことになるなぁ』


「ハハッ、なんですかその煮え切らない返事。まあ、別にわざとでも良いいんじゃないですか」


『ああぁ、何でだぁ?』


「それもまた(したた)かって言うでしょう。じゃあ強い子じゃないですか。強いものが他より多くもらうのは別に変な事でもないですし」


『ああぁ、確かに、なるほどなぁ。その通りだよ』


「うん。その通りですよ」

ここまで言ってから思わず声に出してしまっている事に気づいた。これじゃあ不審者だ。気をつけないと。『すでに手遅れだと思うがなぁ』うるさいな。まだそうと決まったわけじゃないだろうに。決まってはないはずだ。決まってないよね。




ここまでは良かった。そう、ここまでならいつも通りと言っても良かった。だが違った。あの少年は強かった。本当に強い子だった。その強さゆえに。


翌日、少年は死んでいた。

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