第57話 お見舞い (生後82日目)
前回のあらすじ
平賀と戦い、大勝利となりました。取り憑かれてた舞さんも無事成仏することが出来ました。初めての幽霊退治の依頼、完遂です。
☆☆☆
翌日、俺は日常をまったり堪能していた。レオ・リルとも一緒に遊んで、現在お昼寝中だ。あの後、明希さんに来てもらい、有希をおんぶして車に連れて行った。明希さんも【放出】を使った時の霊力に驚いたらしく、貫かれた木々を見て唖然としていた。有希は家に到着すると、舞さん達の最後を伝えた後、すぐに眠ってしまった。家には、征次郎さんもいて、2人にお礼を言われた。今回の依頼、有希のような実戦経験の乏しい陰陽師が行う場合、危険なため断るものだけど、俺の言霊で有希の成長を促すことが出来ないかに賭けたらしい。かなり危険な賭けだなと俺も思った。もちろん、征次郎さんは、俺達に気付かれないよう、影ながら見守っていたそうだ。俺、早い段階で気付いてたけどね。俺自身も、元々有希を成長させたかったから、これまで有希と開発した数少ない念珠玉を早速使わせてもらった。
ただ、2人にも誤算があったらしい。それは、俺達が平賀を討伐したことだ。いくら言霊があっても、霊力に限りがあるから討伐は無理だろうと思っていたそうだ。ふふふ、それは使い方次第だよ。有希の成長を促しつつ、平賀の身体と心を弱らせて、俺が止めに消滅させる、このプランを実行させるための計画を考えに考えた。もちろん有希と相談してだ。まあ、消滅に関しては、戦う直前に有希に知らせたけどね。そして、計画通り討伐に成功した。有希も平賀の持つ技術を吸収したのは良いけど、現状、有希の身体能力と霊力だけでは全体の精々30%、言霊の補助があっても短時間なら120%出せるけど、平均80%てところかな。これから要修行だね。この事も、2人には伝えてある。ただ、物凄く驚いてたけどね。
さて、今日は、学校に行けたのかな。遠方憑依して聞いてみよう。
(有希、今、遠方憑依しても大丈夫かな?)
(ええ、ラッキー、大丈夫よ。今から、連絡しようと思っていたところよ。丁度、良かったわ。)
遠方憑依すると、有希ちゃんはベッドにいた。
(ああ、やっぱり学校休んだんだね。身体は大丈夫なの?)
「大丈夫---とは言えないわね。筋肉痛が酷いわ。さっき、楓ちゃんと琴美ちゃんから電話があって、宿題のプリントを持って来てくれるそうよ。ラッキーは来れる?」
(いや無理だよ。一応、学校では風邪で欠席になっているんだろう。そこに、子犬を連れて行ける訳がない。精神体で我慢してよ。あと20日程度で引っ越すから、その時に風邪を引いていれば、フィリカになって看病してあげるよ。)
「引っ越してきたら、すぐに風邪を引こうかしら。」
こらこら、何を言ってるんだ。
(駄目に決まってるだろ。征次郎さんと明希さんはどうしたの?)
「2人一緒に、陰陽師協会に平賀を退治した報告に行ったわ。怨霊リスト10位に位置する者を退治したんだから、報告しないとね。」
(陰陽師協会か、俺の事も報告するのかな?)
それは勘弁して欲しいな。
「いいえ、報告しないわ。ラッキーの事を言ってしまうと、自動的に前世の事や言霊の件も言わないといけないから。霊符における新術を考案したという形にしたわ。」
(え、新術?それで納得出来るの?)
「昨日、お祖父様とお祖母様がラッキーの言霊を基に、霊符で応用出来るかやってみたのよ。一部可能だったわ。まず、【吸収】、相手の攻撃を霊符に吸収するのは、闇属性を使えば可能だったわ。ただ、それを光に変換して放出する事は出来なかった。吸収した霊符は、一定量を超えると消滅したわ。闇属性だから、爆発の危険性はなかった。次に【放出】、これは前もって自分の霊力を光属性の霊符に一定量込めれることがわかったわ。何枚か重ね合わせる事で、通常の数倍以上の術を放てることもわかった。ただし、込め過ぎると爆発する危険性があるから、扱いには注意が必要ね。現在、わかっているのはここまでね。」
うわー、俺の為に凄くフォローしてくれてる。
(あとで、お礼を言っておくよ。なんか、かなり迷惑かけてるみたいだ。)
「そんな事ないわよ。むしろ、感謝してたわよ。霊符での新たな新術が考案されたんだから。しかも、これらの術は比較的扱いやすい。多くの陰陽師が修得すれば、悪霊・怨霊による年間の死亡者数が減少するはず、ラッキーは陰陽道において、新たな一歩を作り出したのよ。」
実感湧かねー。そこまでの事をしたのか、俺。
(まあ、役に立てたのなら嬉しいよ。ところで、昼ご飯は大丈夫なの?)
「なんとか起きて作れたわ。正直、ここまで筋肉痛になるとは思わなかった。」
(うーん、やはり縮地とか使ったからだろうね。言霊の補助があったとはいえ、本来縮地は、長年の修行を重ねた陰陽師だけが使用可能となる大技なんだろ。)
「ええ、私も技術を吸収したとはいえ、使えるとは思わなかった。」
(しかも最後あたり、平賀の動きを完全に超えてたからね。おまけに【神炎】だっけ?凄かったよ。あれがなかったら、あの黒炎吸収しきれなかったかもしれない。)
「2人とも驚いてたわ。【神炎】を使えるのは、全陰陽師の中でも10人だけなんですって。」
(おー、凄いな、有希。そんな術を使えるなんて!)
「私としては複雑ね。。平賀はこれまでに戦ってきた陰陽師の技術を盗んで強くなった。そして私も平賀の技術つまり長年修行を重ねてきた陰陽師達の技術をあの戦いで全部吸収してしまったのよ。」
(こればかりは仕方ない。そうでもしないと勝てなかったからね。)
「そうね。これからは、この技術を全て扱えるように、身体を鍛えていかないとね。今の私の霊力だと、言霊の補助があっても神炎2回しか使えないわ。」
あ、スマホが鳴ってる。楓ちゃん達かな?
「はい、うんわかった。玄関に着いたら、インターホンを鳴らした後、入って来ていいわよ。」
やはり、楓ちゃん達かな?
(2人は、何時頃になりそう?)
「16時頃になるって。まさか、筋肉痛で休んでるとは言えないわ。」
そりゃそうだ。
(じゃあ俺も、それに合わせて、また、レオと・リルで遊んでおく事にするよ。)
☆☆☆
時間は16時30分、楓ちゃんと琴美ちゃんが有希のお見舞いにやって来た。
「有希ちゃん、風邪大丈夫。」
「有希が風邪を引くて珍しいね。大丈夫なの?」
「心配かけてごめんね。熱はもうないから、明日か明後日には学校に行けると思うわ。」
本当に大丈夫かな?ちょっと心配だ。昨日は激闘だったからな。
「有希、今週木曜日、遠足でしょ。これプリントだよ。」
「ありがとう。そっか、木曜日遠足だった。体調悪いから、すっかり忘れてた。」
「有希ちゃん、木曜日までには完治しないとね。遠足の行き先は、アスレチックやポニーや馬の乗馬体験出来る所だから楽しみだよ。」
へー、そんな場所があったのか、俺も行ってみたい。遠方憑依して行ってやろうかな。
「アスレチックか、やってみたい!絶対それまでに完治させるわ。」
「そうそう、有希、早く元気になってね。木曜日、楽しもう。」
あー、俺もフィリカの姿になって、アスレチックで動き回りたい。引越しが待ち遠しいぜ。
「あ、有希ちゃん、もう1つお知らせがあったの。学校近くに古民家があったでしょ。あそこの林道、通り抜け禁止になったんだ。」
「え、禁止!どうして?」
なんか、嫌な予感がする。
「なんでも、多くの木に大きい風穴が突如出来て、今でも倒れそうなんだって。危ないから通り抜け禁止になったんだ。有希ちゃんも気をつけてね。」
やっぱそうなるよね。ちなみに、風穴を開けたのは有希だよ。俺は有希をじ〜と見つめた。
「-----風穴ね、怖いわね。誰がやったのかしら?」
「有希の家は、そこから逆方向だから心配ないだろうけど、今、マスコミが殺到してるから古民家には行かない方がいい。風穴だけじゃなく、古民家周辺が物凄い荒らされてるから。」
ごめんね、それ全部俺達がやったの。言えるわけね〜〜。
まあ、平賀の件は、最後やたらとマスコミに騒がれたが、俺達に被害はなく、数日で落ち着くこととなった。
今回の件で、有希は大きく成長した。
そして、俺自身も有希との絆が深まったはずだ。眷属化をするかどうかは、まだわからないけど、有希とは今後も陰陽師のパートナーとして、悪霊・怨霊退治、浮遊霊達の成仏のお手伝いをやっていきたいと思う。
俺の新しい生は、まだ始まったばかりだ。
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ここで、一旦、休載とさせて頂きます。




