第51話 初めての幽霊退治-1 (生後80日目)
前回のあらすじ
鳥達と一緒に密猟者共を懲らしめました。久しぶりにスッキリしました。
☆☆☆
俺は、今、有希の家にいる。遠方憑依ではない、しかもラッキーの姿でもない、フィリカの姿でいる。何故こうなっているかというと、時は1時間前に遡る。
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有希が学校帰りに楓ちゃんの家へやって来た。あれ、有希の家に遊びに行くのは明日じゃなかったか?
「楓ちゃん、急にごめんね。」
「私は構わないよ。でも、有希ちゃん、本当にラッキー好きなんだね。」
「だって、明日は凄く楽しみにしてたのよ。それなのに、こういう時に限ってどうしても外せない用事が出来たの。来週までフィ、ラッキーを見れないなら、今日連れて行くしかないわ。お祖母様がもう少しで来ると思う。」
有希、今、ちょっと本音が出たろ。そんなにフィリカを見たいのか?あと1ヶ月くらいで嫌でも見れるのに。俺としては、なんか複雑だよ。あと、なんか性格が変わってないか?
(有希、そんなにフィリカを見たいのか?写真があるじゃないか。)
(誤解よ、ラッキー。今日と明日で、陰陽師の依頼が入ったの。今回、私とラッキーで対応する事になったのよ。それで、話をするために連れて行くのよ。)
(それって、遠方憑依して聞いて良かったのでは?)
(ま、まあいいじゃない。)
半分は依頼の話、もう半分はフィリカを見たいんだろうな。
☆☆☆
そして、現在、俺フィリカは有希の家で、明希さんが戻ってくるのを待っている。
隣にいる有希は、常に笑顔だ。相当機嫌がいいな。なんか逆に怖いよ。
「なあ、有希、依頼てどんな内容なんだ?」
話し方を意識しろと言われても、やはり急には無理だな。せめて、言葉の「俺」を「私」に変えておくか。話す時だけな!眷属者は主人によって戸惑う時がある----か。前世の記憶を持つ俺とニュアンスが違うな、絶対!
「それはお祖母様が戻ってから聞きましょう。私も、詳しくは知らないのよ。」
「じゃあ、私の写真、友達に見せてないよな。」
「もちろんよ。見せたら大変な事になるわ。」
大袈裟だな。見せてないならいいか。今は、まだ外に出られないからな。
あ、明希さんが戻ってきた。
「明希さん、有希から依頼の事聞きました。詳しい内容を聞いてもいいですか?」
「ええ、今回は有希にとっても、初めての幽霊退治になるわね。場所はここから近いわ。有希の通う学校から徒歩で20分ぐらいかしら。」
近すぎるぞ!そんな所に、悪霊がいるのか。あれ、幽霊と言ったから悪霊じゃないのかな?
「お祖母様、それって学校でも話題になっている例の古民家ですか?」
古民家?この近くにそんな家があったんだな。
「ええ、そうよ。幽霊が住みだしたのは1ヶ月程前ね。その頃から、誰もいない家の窓に人影を見た、近道で古民家を通ろうとしたら腕を掴まれた、夜な夜な女性のすすり泣く声が聞こえるとか、色々な噂が広がっているわ。今では、子供達が興味本位で近づいたり、中には勝手に入って探検している子もいるみたいね。大きな騒ぎが起こる前に、その幽霊が何者かを突き止め退治することが今回の依頼ね。ただし、退治はあくまで最終手段、話し合いで成仏出来るようなら、それに越したことはないわ。」
退治は最終手段か。退治、陰陽師の力で強制的に成仏させること。
やはり、話し合いを行い、幽霊が納得した状態で成仏させたいよな。
今までに出会った幽霊は、みんな自我を持っていて優しそうな人達ばかりだった。あとは、思念集合体とか精霊だもんな。ちょっと楽しみだ。
「お祖母様、わかりました。道具を用意しておきます。」
「今日の夜、行きますからね。今日は下見、明日が本番よ。私も行きますが、頼らないように。」
今回の幽霊は、比較的夜に出やすいのか。幽霊も色々と事情があるのかもしれないな。有希は、陰陽師の霊具を取りに行ったみたいだ。霊具か、後で見せてもらおう。
「明希さん、私は有希に遠方憑依して、フォローに徹すれば良いんでしょうか?」
「そうよ。いつどこで何が起こるかわからない以上、フィリカは有希を護ってちょうだい。今回は、簡単な依頼だから問題ないとは思いますが、油断しなように。」
「はい、わかりました。」
☆☆☆
今、俺の下には、木剣や多くの霊符が並べられている。お札は7色あり、各々宿る属性が異なっている。
「有希、この霊符で術を使うのか?」
「ええ、そうよ。どの霊符が必要になるのかわからない以上、全て持っておかないといけないわ。」
「うーん、これって使い難くないか?霊符を間違える危険性があるんじゃないか?」
「それは大丈夫よ。これらの霊符は、この専用の霊具に入れておくの。これをズボンに取り付けて、霊力を送り込めば直接触らなくても術は発動するのよ。精霊から頂いた霊具を基に陰陽師達が改良したものなの。」
「そうなんだ。ちなみに、霊符がなければ術は発動しないのかな?」
「発動しないわ。この霊符が精霊の代わりなの。」
そうか、今はこのやり方が主流なのか。
「じゃあ、術を発動する時は、○ラとか、ベギ○マとか、ヒャダ○コとか言うのかな。」
「フィリカ、そこは最強呪文で言わないと、メラ○—マ、ベギラ○ンとかあるでしょ。」
何それ?知らないんだけど!
「え、何だそれ!知らない、初めて聞いたぞ。そうか、私がレベル30ぐらいで死んだからだ。その上があるんだな。」
「そうそう、そのゲーム続編がかなりでていて、今ではメラ○—マより強い呪文があるそうよ。私は知らないけどね。」
「えー、有希、今言うなよ。あー、無性にゲームの続きをやりたくなってきた。あれ、そういえば有希、何気にゲームに詳しいな。」
「少しぐらい私もやります。あと雑誌を読んで情報収集しないと、1人だけ話題についていけなくなる。」
なんか世知辛いな〜。子供でも、そういう事思うんだな。
「ふふ、そうそう、術の話だったわね。術名が確かにあるけど、実戦では名前を呼ばないわ。」
「え、どうして?」
「今、世の中には、あらゆるゲームが広がっているわ。そのどれもが、凄くリアルなの。呪文を唱えると、それに対応するものが出現して、臨場感も凄い。でもね、陰陽師にとって、それがデメリットなの。例えば炎術の名前を決めて発動すると、発動時間は極めて短いけど、ある一定の威力で決められた行動しかできないの。要領が悪過ぎるわ。だから、術を使う時は、【炎よ、悪霊を包み込め】という感じで、明確にイメージを行い、それを言葉に現すことで発動するようになっているの。」
「それって、私の言霊と似てないか?」
「そりゃ似るわよ。昔から言霊使いは神の使いと呼ばれていて、精霊と協力することで、理論上あらゆる事が可能だった。でも、陰陽師の場合、決められた術だけで悪霊や怨霊と戦っていたけど、それだけだと心許なかった。だから、昔の陰陽師達は術を見直し改良していき、言霊に近いレベルでの術の発動が可能になったの。」
へー、言霊を使えない陰陽師は、そうやって術を改良していったのか。
「悪霊退治に関しては、言霊に近いレベルで対応出来るんだな。」
「フィリカみたいなレベルは不可能よ。あくまで、火・水・地・風・光・闇がベースとなる退魔術だけは言霊に近いわね。」
なるほど、勉強になるな。
「これで準備終了ね。夜に行くから、それまでゲームでもしましょう。」
「やる!ラッキーの姿じゃ、操作出来なかったからな。久しぶりにゲームが出来る。」
こうして出掛けるまで、有希とゲームを堪能した。
久しぶりに遊んだ、楽しかった!
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