第50話 鳥達が抱える難問-3 (生後77〜78日目)
前回のあらすじ
鳥達が帰ってこない原因は、人間の罠に掛かっていたためでした。対処方法を教えましたが、完全ではありません。ここは有希と明希さんに頼るしかありません。
☆☆☆
その日の夜、有希に遠方憑依し、今日あった出来事を2人に話した。明希さんは、内容を聞くと顔を歪めた。
(ラッキーの話から推測すると、それはかすみ網ね。この網は特別な許可を得たもの以外、使用は禁止されているの。今回は恐らく、密猟ね。)
密猟!なんか、大事になってきたぞ。
(密猟ですか。あの罠は大型で、色々な小鳥が絡んでました。)
(かすみ網は、比較的簡単に野鳥を捕獲出来る。ただ、あまりに簡単なため、渡り鳥などの乱獲に繋がり、種の存続を脅かす程危険なため、現在殆ど使用されていないわ。)
(今回は、俺の言霊で対処しました。あと、網に絡んでいない場合の対処方法も教えました。これなら、多くの鳥達に教えられると喜んでいました。)
(ねえ、ラッキー、その対処方法だけど、どんな事を教えたの?)
有希はその方法が気になるみたいだな。
(簡単な事だよ。野鳥は本能が強いから、網に掴んでる状態で飛び立とうとするんだ。だから、身体が網に絡んでなければ足を離すだけでいい。そしたら落下するから、そこで羽ばたけば、飛べはしないかもしれないが、落下の衝撃が和らぐ。)
(確かに簡単だけど、みんな出来たの?)
(多少時間はかかったけど、出来るようになった。凄く感謝されたよ。)
明希さんも、これには驚いたようだ。
(ラッキーのおかげね。あなたが指摘したことで、鳥達が認識し足を離すことが出来たのでしょう。普通はありえないわ。野鳥は本能に従うもの。)
(それで明希さん、網に絡んでしまった場合なんですが、野鳥にカッターナイフを使わせるのはどうでしょうか?)
(駄目ね。持つことは出来ても切ることは無理よ。)
(それじゃあ、念珠玉を使うのは?)
(それも却下。鳥は日本全国にいるのよ。対処出来ないわ。さっき言った対処方法だけで十分よ。全てを救う事は出来ないわ。それはあなた自身、よくわかっているでしょう。)
そうだよな、全てを救うのは不可能だ。目の前だけの者に集中しないとな。そうしないと、救える者も救えなくなる。
(わかりました。明日にでも、鳥達にも伝えておきます。ただ、今回、かすみ網を使った密猟者達を懲らしめたいんですけど、いいですか?)
これには、有希から待ったがかかった。
(ラッキー、何をするつもりなの?誘拐事件のような末路にするの。さすがに、それは許可できないわよ。)
(大丈夫、今回はそこまでしないよ。鳥達も、自分達が捕食される側というのを理解しているんだ。それでも、かすみ網のような密猟はやり過ぎだから、罰を与えないとね。彼奴ら、数日の内に罠を仕掛けた場所に戻ってくるだろうから、その時にね。楽しみにしておいてよ。
(はあー、程々にね。)
☆☆☆
翌日、昨日と同じ雀さんに遠方憑依し、東の山の鳥達にカッターナイフの対処は許可されなかった事を伝えた。
(みんな、ごめんね。あの罠の対処方法は、初めに言った事だけでなんとかして欲しい。)
すると、メジロさんがフォローを入れてくれた。
(何言ってるんだ、ラッキー。あれで十分だよ。簡単だし、多くの鳥達に教えられる。)
他の鳥達も皆納得し、俺にお礼を言ってくれた。ただ、これで終わりというわけにはいかない。罠を仕掛けた密猟者に罰を与えないとね。
(みんな、この罠を仕掛けた人間達に罰を与えたいんだけど、どう思う?)
メジロさんが、この意見に賛成してくれた。他の鳥達も概ね賛成のようだ。
(罰と言っても、実際に動くのは俺だけ。これから毎日ここに来るから、密猟者が来たら罰を与えよう。多分、数日中に来ると思う。)
(構わないが、ラッキー、どんな罰を与えるんだ。)
メジロさんも、やはり気になるか。
俺は鳥達に罰の内容を伝えた。聞いた瞬間、皆笑い出した。
(あははは〜、そりゃいい。あの罠は、俺達にとって危険なものだからな。人間達も、その身をもって味わうという事か。)
☆☆☆
翌日、雀さんに遠方憑依し、山の様子を伺ったところ、密猟者らしき人間が現れた。その人間達は罠の設置場所に行き驚いていたので、間違いなく密猟者であることがわかった。メジロさんに鳥達を集めてもらうように連絡し、しばらく様子を伺った。数十分してから、今度はかすみ網を持って来て、再び罠を設置しようとしていた。そこで俺が動いた。
(みんな、今から密猟者に罰を与える。一斉に鳴いてくれ。)
鳥達全員(((わかった!)))
密猟者1 「おい、なんだ!鳥達が一斉に鳴き出したぞ。」
密猟者2 「おい、ここやばいんじゃないか。なんか雰囲気が変わったぞ。」
密猟者3 「早く罠を設置して帰ろうぜ。」
(帰らせるか。お前らはやり過ぎだ。そこまでして金が欲しいのか!網に絡まった鳥達の辛さ、身をもって味わうがいい。)
密猟者1 「おい、誰だ!出てきやがれ。」
密猟者2 「嘘だろ、かすみ網が勝手に動いてるぞ。」
密猟者3 「俺らの真上に上がっていってる。え、落ちてきたぞ、逃げろー!」
【金縛り】
逃すわけないだろうが!
絡まった時の辛さを味わうがいい。
---------数時間後、
密猟者1 「誰か助けてくれ〜。」
密猟者2 「無駄だよ。この周辺は、誰もいないぞ。」
密猟者3
「勘弁してくれよ。ずっと絡まれた状態は嫌だぞ。鳥達に祟られたんだ。そうとしか言えない。あのゾッとする声、お前らも聞いただろう。」
密猟者1
「今も鳥達が俺らをじっと見てるぞ。おい、まさか、あの事件の犯人のようになるんじゃないだろうな?」
密猟者2 「やめてくれよ。あんな悲惨な状態は嫌だ。絶対に逃げるぞ!」
無駄無駄無駄無駄!
そこまで絡まれば、逃げれないよ。
それにかすみ網自体も少し強化しておいたから、絶対に千切れないよ。
安心しろ、さっき明希さんに連絡して、明日通報してくれるよう言っておいたから。
あ、メジロさんが隣にきた。
(いやースッキリしたぜ。これで少しは憂さ晴らしになったよ。他の鳥達も感謝してたぞ。)
(そう言ってもらえると助かります。自分の独りよがりではないかと思っていたんで。)
(あはは、そんな事はないさ。まあ、こういった連中はどこにでもいるから、今後も注意しないといけないな。まあ、罠の対処方法もわかったから少しずつ広がっていくだろう。)
(それじゃあ、俺は遠方憑依を切りますね。雀さん、ありがとう。)
(ラッキー、仲間を助けてくれてありがとう。じゃあね。)
---------翌日、例の密猟者達は警察に捕まった。どうも、あの事件の顛末のようになるのではないかと思い、かなり怯えていたらしい。今までの悪行を洗いざらい話したそうだ。全国ネットに流れたことで、少しは密猟も減少したらいいけど、そんな都合よくいかないだろうな。まあ、俺はこれからも目の前で助けを求める動物がいたら、どんどん助けていこう。
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