第43話 ワクチン接種2回目―1 (生後70日目)
第2章開始です。
前回のあらすじ
もう1つの掘り出し物もなんとか解決しました。これで、全ての事が終わりました。久々に日常を満喫したいと思います。
☆☆☆
すべての件が解決してから、11日が経過した。この間、俺は久々に日常生活を満喫したかというと、実はそうではない。始めの数日間は、日常生活を堪能した。しかし、征次郎さんから呼び出しがあり、俺自身の事や言霊に関することを有希ちゃんと2人で勉強することになった。そのおかげもあって、言霊の危険性を十分に認識することが出来た。
また、勉強のない時は、これまでに関わった動物達(と言っても殆ど鳥か犬)に、目的が達成できたことを報告し、そのお礼を言いに行った。皆、喜んでくれていた。そして、なぜか俺がお礼を言われた。
1)食料確保の際、人間に追い払われることが減少した。
2)ビルへの衝突(鳥)や車による事故が減少した。
など、俺の言ったことが、かなり役に立っているそうだ。
久しぶりにジェフに遠方憑依をして近況を聞いたけど、山路家を中心にして縄張りを広げてるらしい。当然、和葉・依澄・カイも大きく関わっている。山路家は、カラスを使って情報収集でもするつもりなのかな?
そして、今、俺は久しぶりにカーくんに遠方憑依し、久々の日常生活を満喫している。
(そうか、日常生活を満喫か。なあ、ラッキー、1ついいか。)
(カーくん、どうしたの?)
(俺からして見れば、ラッキー自体が非日常的な存在なんだがな。今も、俺に憑依してるしな。)
(あはは、それは俺自身、良くわかってるよ。せっかく、こうやって産まれてきたんだから、活かさないとね。そうそう、今日の夕方、ワクチン接種2回目があるんだ、楽しみだよ。これが終われば、綺麗な場所だったら散歩出来るらしいんだ。)
(そうか、それでも気をつけろよ。外の世界は、ラッキーが思ってる以上に厳しいからな。)
(カーくん、ありがとう。さて、それじゃあ、ワクチン接種に行ってくるよ。)
☆☆☆
病院に行くため、桜さんが準備し始めました。レオがソワソワしています。やはり、病院は怖いか。アリー母さんも心配している
『レオ、どうしたの?』
『お母さん今から、病院に行くんだよね?』
リルも落ち着きがない。
『行きたくない。お兄ちゃん、黒部先生いるかな?』
やはり、そこか!仕方ないな。
『仕方ない。俺が黒部先生に遠方念話してみるよ。』
その言葉を聞いた瞬間、レオ・リル、アリー母さんがこちらを向いた。
『兄ちゃん、黒部先生と念話していいの?』
『黒部先生は、霊力を制御出来るから、念話のことは教えているんだ。ただ、遠方念話は今回が初めてだから驚くと思う。』
『お兄ちゃん、今すぐやって。黒部先生がいたら病院に行きたい。』
リルは、黒部先生の事、相当気に入ってるんだな。
『ああ、わかった。今からやってみるよ。』
とりあえず、あの病院付近に索敵を絞ろう。ここからの位置は大体覚えてるしね。---------お、この波長は!
黒部先生、あの病院にいるな。よし、遠方念話だ。
(黒部先生、聞こえますか。お久しぶりです、ラッキーです。)
(この声、ラッキーか!久しぶりだな。でも、どこにいるんだ?)
(今は、まだ高梨家にいます。俺は遠くからでも念話が出来るんですよ。今、お話しは大丈夫なんですか?)
(ああ、今は、休憩中だ。あと、1時間すれば、診察室に戻るよ。)
(それは良かった。実は、今日、2回目のワクチン接種なんですが、あ、ちょっと待って下さい。レオとリルがお話ししたいと言ってます。)
(ああ、構わないよ。というか、なんでも出来るんだな、ラッキー。)
(黒部先生、こんにちは、レオです!今日、病院にいるんですか?)
(レオ、こんにちは。ああ、今日というか、この病院に就職出来たんだよ。ラッキーと出会ってから、霊力の制御訓練を始めてね。今では、色々な動物達とお話ししているよ。)
(黒部先生、こんにちは、リルです。それじゃあ、今から病院に行けば、黒部先生とお話し出来ますか?)
(ああ、出来るよ。ただ、他の患者さんもいるから、長くお話しは出来ないよ。)
(やった!今日、2回目のワクチン接種だから、黒部先生にお願いします。)
(わかった、待っているよ。)
(レオ・リル良かったな。黒部先生、俺達も診察開始時刻に行けると思うので、宜しくお願いします。)
念話を切った。黒部先生、あの病院に就職出来たんだな。これなら、皆んな安心して行けるな。レオ・リルを見ると、案の定、喜んでるよ。
『まだ、安心しては駄目だ。あの病院の診察室は3つある。混雑してたら、黒部先生の部屋に行けないかもしれない。』
そう言った瞬間、レオ・リルが顔面蒼白になった。
『兄ちゃん、早く言ってよ。忘れてた!桜さん、早く行こうよー。』
『準備、まだ終わらないの?早く終わらせてー。』
レオ・リルが桜さんに催促してるよ。
「レオ・リルどうしたの?前回と何か違うわね。怯えてるというより、何か催促している様な気がするけど。」
おお、そうだよ。そこまでは合ってるよ。
「もしかして、さっきアリーにあげたお菓子が欲しいの?あれは駄目よ、成犬用だから、もう少し大きくなったらあげるわね。」
違う、違うよ、桜さん。正解は、病院に早く行こうだよ。
前回、散々怯えていたからな。今回は真逆の反応だから、わかるわけないか。
まあ、準備が整うまで気長に待とう。
☆☆☆ 黒部京介 視点
ラッキーは、遠くからでも念話が出来るのか、凄いな。それにしても、あれから1ヶ月も経ってないのか。人生、わからないもんだな。少し前まで、仲間からは「ヘタレの黒部」と蔑まれていたからな。獣医になるため猛勉強し、大学合格後、尊敬する先生に出会い、知識を十分に身に付けることができた。だが、研修獣医師となり、1人で動物を診た時、恐怖に襲われた。動物は言葉を喋らない。血液検査やレントゲンなどの多くの検査結果で、病気を判断しなければならない。触診を行っても、反応が薄い動物もいる。俺は、徐々に自身を失っていき、動物を診るのが怖くなり、ああいうアダ名も付けられた。研修期間が終わり、今いる病院に初めて来た時、ラッキーと出会った。
ラッキーから話しかけられた瞬間は驚いたな。つい、飼い主さんに聞き返してしまった。ラッキーに説教されて、今迄の事を思い返し、獣医師となるための猛勉強・恩師からのアドバイス・診察室での失敗、ここまでの経験を糧に今、頑張るしかないと思った。そして、ラッキーが動物達と話す際の霊力の制御方法を教えてくれた。その日以降、霊力の制御は毎日行っている。ここ最近では、動物自身が気がついていない不調がわかる様になってきた。そのせいか、ここに来る動物の殆どが、俺のいる診察室に入ろうとするらしい。同僚も
「どうしたら、そこまで好かれるんだ!アドバイスしてくれ!」
と懇願してきた。まさか動物達と話せる事を言うわけにはいかないから、何とか説得力のあるアドバイスをしたと思う。あの時は、院長も困った顔をしていたな。
さあ、ラッキーが来るんだ。驕らず、気を引き締めてやっていこう。
約4週間くらいか、今の俺を見てもらおう。
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