第29話 カイ・ランド・タロウ、商店街の英雄となる-2 (生後48日目)
前回のあらすじ
カイに遠方憑依しました。なんということでしょう!カイ・ランド・タロウが、どういうわけ商店街の人間から英雄視されています。たった1日会わなかっただけで、一体何が起こったのでしょうか?
☆☆☆ カイ視点
『ランド、タロウ、準備は出来たか?』
『『ああ、大丈夫!!』』
火事の現場まで戻ってくると、たった数分の間で炎の勢いが増していた。まだ、2人とも生きているな。くそ、野次馬がさらに増えている。これだけいて、なぜ気づかないんだ。
「炎の勢いが強くなってきるな。誰か消防車を呼んだの?」
「先程、電話で伝えたみたいです。到着まで、しばらくかかると思いますよ。」
しばらくだろ、そんな悠長なことを言ってる場合か。
『ランド、タロウ突っ込むぞ!』
「あ、犬3頭が家の中に突っ込んだぞ。あいつら何考えてるんだ。」
「人なんかいないのに、あの3頭のことは諦めるしかないわね。」
-------中は予想以上に炎の勢いがある。
(ランド、タロウ、俺に付いて来い。索敵で人間の位置は把握済、家の通路もほぼ把握した。最短距離で行くぞ!。)
((おー!))
ひとつ気がかりなことがある。俺は、ラッキーのように正確な索敵は出来ない。倒れている人間が子供か大人か、どちらかわからん。子供であって欲しい。見つけた!
(どうやら、2人とも子供のようだな。意識は----、かろうじてあるか。やもえん念話で話すぞ。)
ランド (おい、いいのか、後で厄介な事になるぞ。)
(この状況だ、おそらく大丈夫だろう。それに背中に乗せるには、話すしかない。)
2人の子供は、ずっと泣いているな。無理もないか。
(おい、そこの子供達、聞こえるか。聞こえたら、。心の中で返事をしてくれ。)
「ゴホゴホ」 (誰、どこにいるの?)
「ゴホゴホ、え」 (え、声がした。誰?)
(よし、それでいい。今からそちらに行く。少し待ってろ。)
(うん、わかった。)
「あ、ワン、ゴホゴホ」
(喋るな、煙を吸い込むぞ。ここにタオルがあるから、これを口につけて呼吸しろ。少しはマシになるはずだ。)
(うん、わかった。ほんとだ、少し楽になった。ほら、健ちゃん。)
(ほんとだ、楽になった。)
(お前達、名前は?)
(小橋優子です。)
(高木健一です。)
(よし、良い子だ。優子は俺の背中に乗れ。健一は、俺の右隣にいるランドの背中に乗れ。いいか、時間がない。話をしている余裕がないから、このまま脱出するぞ。ランド、乗せたか?)
(ああ、大丈夫だ。)
(よし、タロウ、先導してくれ。いいか、焦らず進んでいくんだ。)
(ああ、わかった。かなり炎がきついな。俺達も、暑くなってきたぞ。急ごう!)
炎の周りが早い。く、急がないと。まずは階段、子供とはいえ、さすがに重いな。
(熱いよ、熱いよ~)
(しっかりしろ、もう少しで出口だ。)
ギシギシ、む、何か聞こえる。階段を降りたところで、柱が崩れてきた。
(タロウ大丈夫か?)
(ああ、大丈夫だが、通路を塞がれた。どうする?)
(なんだと!く、------)
ここまでか?
(ここは俺に任せてくれないか?いい手を思い付いた。)
(タロウ、どうする気だ?)
(大丈夫だ。一か八か、柱、目掛けて突っ込む。炎のせいで、脆くなっているはずだ。)
(なんだと!!そんなことをしたら、下手すると大怪我をするぞ。)
(わかってるよ。だが、これしか手はない。時期にここも崩れる。神にでも祈っといてくれ。うおー!!)
タロウが突っ込んだが、柱は崩れなかった。だが、あいつは諦めず何度も突っ込んで、5回目程で柱が崩れた。
(よし、カイ・ランド脱出しよう。)
私もランドも、驚いていた。あのタロウが、最後まで諦めず、ここまでの頑張りを見せるとは。
そして、私達は家を脱出した。その直後、炎は勢いをまし、1階を覆い尽くした。
「おい、犬が子供を抱えて出てきたぞ。」
「大変だわ。救急車を呼ばないと!」
「空き家の中で、遊んでいたのか、気づかなかった。」
子供達を人間に渡したところで、ランドの様子が妙だった。
『ランド、どうかしたのか?』
『いや、あの眼鏡をかけた人間、妙な感じがするんだ。他の人間と雰囲気が違う。』
眼鏡をかけた人間、あいつか!む、この悪意、そうか!この火事は、こいつが起こしたのか。
『ランド、タロウ、あの眼鏡の男を捕らえるぞ!この火事を起こしたのは、あいつだ!』
『『なんだって!』』
眼鏡の男は立ち去ろうとしたので、俺達は手や足に噛み付き、動きを封じた。
野次馬の人間達が、ここで騒ぎ出した。
「痛えー、助けてくれ~~!」
「おい、ワンコ、何やってるんだ!噛んだらダメじゃないか。」
その時、眼鏡の男のバッグから色々な物が外に投げ出された。
「おい!これって、まさか、こいつが犯人か!みんな、こいつを捕まえろ。」
その後、周りの人間が眼鏡の男を問い詰めると、男はすぐに自供した。
俺達は人間達に「よくやった!」と言われ揉みくちゃにされたが、救急車や消防車が来て、ようやく解放された。
『ふー、やっと解放されたな。タロウ、怪我はないか?』
『大丈夫だ。少し毛が焦げた程度だ。水を被ってて良かったよ。』
『カイ、今回はタロウが大活躍だったな。』
『え、俺、そうかな?カイの索敵がなかったら駄目だったと思うけど。』
『確かにカイの索敵がなければ、救出自体無理だったかもしれない。でも最後の突撃がなければ、俺達は死んでたぞ。助かったよ、ありがとうな。』
『あー、ランドの言う通りだ。柱が崩れた時、もう駄目かと思ったからな。タロウが最後まで諦めず、柱に突撃してくれたおかげで、全員助かったんだ、ありがとう。』
『よせよ!照れるじゃねーか。全員無事脱出出来たんだから、それでいいじゃないか。』
ふ、今回の一件で、タロウも成長したな。最後まで諦めず立ち向かうか、私もタロウを見習わないとな。さて、周りが騒がしくならないうちに立ち去ろう。
☆☆☆ ラッキー視点
そんなことがあったのか。空き家で放火があり、野次馬全員誰も気付かなかった2人の子供を犬が救出し放火犯も捕まえた。そりゃ、騒がれるわけだ。
(あれ、でも商店街の人達は、なんでここまで喜んでいるんだ。殆どの人が店放っぽり出して、カイ達を見に来てるぞ。)
(ああ、助けた子供が商店街の子供達だったからだ。今日の朝から、商店街に来て偵察に来た途端、ずっとこんな調子だ。まあ、そのおかげで、子供達も軽く煙を吸った程度で、怪我もないことがわかった。あと、ドッグフード、カンズメ、コロッケを貰って、今は腹一杯だ。)
だからか、タロウが幸せそうな顔をずっとしている。まあ、今回大活躍だったらしいからいいか。
(人命救助をしたんだから、仕方ないんじゃないかな。)
(そうだ、ラッキー、周りの人間が警察、テレビ、取材とかなんとか言ってたんだが、なんのことかわかるか?)
(取材!!!あー多分、テレビ局の人間が来て、カイ達を日本の全国民に紹介したいんじゃないかな。犬が人命救助というのは凄いことなんだ。しかも、内容が火事の家から2人の子供を救出したというものなら、注目度が凄く大きい。これは大事になる前に、和葉ちゃん達に来てもらった方がいい。)
(すまんな、手間をかける。)
さて、遠方念話をしますか。そういえば、依澄ちゃんが遠方憑依してみたいて言ってたな。じゃあ、依澄ちゃんに連絡してみよう。
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