第16話 術の修得とはじめての離乳食 (生後43日目)
前回のあらすじ
ワクチン接種1回目が終わりました。ちょっとしたトラブルがあったけど、無事乗り越えました。けど、なんかやっちゃったみたいです。
☆☆☆
ワクチン接種1回目が終わり、家でレオ・リルと一緒に遊んでしばらくしてから身体が怠くなった。結局、レオ・リルと一緒に眠ってしまい、その日はそこで終わった。翌日、有希ちゃんに念話で昨日の出来事を話した。
(ラッキー、あなたはまたやらかしたのね。)
(え、なんで。黒部先生は霊力を持ってたし、動物達と話せた方が仕事の都合上いいのでは?)
すると、話を聞いていた明希さんが話しかけてきた。
(確かに、教えた方が都合がいいわね。でもね、その黒部先生が悪人だったらどうするの?例えば、動物と話が出来るのなら、密輸に利用される可能性もある。)
(あ、そこまで考えてなかった。俺は良ければと思って。)
(次からは、例え霊力を持っていたとしても、うかつに念話を教えてはだめよ。黒部先生に関しては、こちらで調査しておくわ。)
(すいません明希さん、御迷惑をおかけします。)
(反省してるみたいだから、これ以上は言わないでおきましょう。)
(有希ちゃん、これからは気をつけるよ。ワクチン接種2回目は1ヶ月後だから、今度黒部先生に会ったら、俺も言っておくよ。)
(今度から周辺で霊力を持った人がいたなら、私かお祖母様に言ってね。)
(はい、そうします。)
うーん、前世では大学生だったのに、これではどちらが年上かわからん、気をつけねば。
(あと2回のワクチン接種が終われば、有希ちゃんの家に行けるんだよね。どんな家なのか、楽しみだよ。)
(ふふ、まだ2ヶ月もあるんだから、今はレオ・リルと一杯遊んであげてね。じゃあ、私は今から宿題するから切るわね。)
少し叱られたけど、あまり怒ってなくてよかった。
☆☆☆
さて、俺も霊力に大分慣れてきた。練習を重ねた結果、第3段階のマーキング、第4段階の遠方憑依も修得出来た。そうそう練習中、不思議に思ったことがある。憑依や遠方憑依している時は、霊力がほんの少しずつ消耗しているにも関わらず、不思議と身体に負担がかからないことが判明した。憑依している俺の精神体が仕事をしていて、身体はただ寝ているだけみたいだ。これはいい事だ!
これで、本格的に有希ちゃんの両親を捜索できる。行方不明場所は、明希さんから聞いているから、あとはそこまで行くだけだ。かなりの長距離だから、少しずつ進めていこう。これまでに、カラスのカーくんを起点に飛び回って周辺の動物達(ほとんど犬と猫)と触れ合い、人間の常識と食料の確保方法を教え、それと引き換えにマーキングを施してもらった。ただ、誰1人(カーくんを除く)、俺の姿を知らないんだよな。まあ、現在位置を把握できたからいいか。さあ、今から憑依を利用した旅行だ。桜さん達やアリー母さん達に怪しまれないようにしないといけないから、1回の憑依は2時間にしておこう。不思議と憑依している間、都合が良いことに身体は寝ている状態なんだけど、それでも2時間だ。
(カーくん、今日は宜しく頼むよ。)
(あー、けど途中までだぞ。縄張りがあるからな。)
(うん、次の縄張りが来たら、そこを治める鳥達と相談して移動していくよ。目的地は、遥か先だし遠足のつもりで少しずつ進めていくよ。)
(お前のおかげで、この周辺は大分住みやすくなったからな。協力するぜ!)
そう、カーくんと俺は周辺のカラスと話し合い、この地域の人間の常識を教えたことで、カラスは余計な争いをしなくなったそうだ。例えば、畑にある果物を無闇やたりに食べるのではなく、一区画の各畑から一部分だけをもらい、それを各カラスに配分することで、人間の被害を最小限に抑えることができた。お互い共存していくのが一番だからな。
(ありがとう、これから憑依していく鳥達にも教えていくよ。)
(ああ、そうしてくれ。余計な争いはお互いしたくないからな。おっと、俺はここまでだ。次の奴に代わってくれ。)
(ありがとう。)
俺は、カーくんと別れ、別のカラスに憑依し移動を開始した。
☆☆☆
今日はここまでか。観光気分で飛んでもらってるから、あまり進んでないな。場所を確認したら、楓ちゃんの家から10km程てところか。
(今日はここまででいいよ。明日、また念話するね、ありがとう雀さん。)
(良いってことよ。ラッキーに教えて貰ったことは、この程度の恩じゃ返せそうにないからな。いつでも、連絡してくれ。)
念話を切って、時間は17時になっていた。
『ラッキー、よく寝てたわね。レオ、リルがすぐ横で暴れたのに。』
『そうなの、気付かなったよ。』
横を見ると、2匹はぐっすり寝ていた。
『夕飯は離乳食になるわ。気づいてる?あなた達、歯が生え始めたのよ。』
『本当!離乳食か、どんな味がするのかな、楽しみ〜。』
そんな時、桜さんがテレビをつけると、ニュース番組が始まっていた。キャスターが最新のニュースを言うみたいだな聞いておこう。
「それでは、次のニュースです。N県K市で羽田京子さんが誘拐されてから丸4日経ちましたが、犯人からの連絡は2日目以降ありません。身代金1000万の受け渡しは昨日終了しており、犯人が受け取ったかどうかは依然として不明です。----」
おいおい、誘拐かよ。犯人は捕まっていないか。最悪な結果になってなければいいけど、桜さんも気にしているみたいだ。
「怖いわね。最近は物騒だから、楓にも気をつけるように言っておかないと。」
陰陽師の術が使えてたら一発で解決なのに、無い物ねだり言ってても仕方ないな。無事を祈っておこう。
----待てよ。俺だって、初心者だけど一応霊能力者だ。何か役に立てないだろうか?[索敵]はスマホの電波を利用して波長を覚えた人間やマーキングしたもの(動物)の現在位置を把握する術だが、誘拐された女性の波長を知らない。うん、テレビにその女性の動画がでてる。よし、波長がわかるか試してやる。---やってみるもんだな、分かっちゃたよ!でも、俺が出来るのは、憑依していく鳥達を借りて索敵を繰り返していくだけか。N県なら俺の目的地でもあるし、探してみるか。
☆☆☆
さて、夕食の時間がやってきました。犬用の離乳食、どんなのだろう?桜さんが持ってきてくれたぞ。
「みんな、お待たせ。餌の時間よ。ラッキー、レオ、リル来なさい。待て!」
レオ、リルも尻尾を振りまくってるな。初めての離乳食だからな。
レオ『早く食べようよ。』 リル『早く早く』
『待てだ、2匹とも。動いたら、量を減らされるぞ。』
『『う〜〜』』
「よし、食べよて良いわよ。」
『『やった〜〜、美味しい〜〜!』』
おいおい、2匹ともがっつき過ぎだろ。俺も食べよう。
う、うまい!!!マジで美味いぞ!がぶがぶがぶ------。
横から直哉さんが覗いてきた。
「凄い、がっついてるな。余程、美味しいんだろうな。」
「初めての離乳食だもの、当然よ。楓はカメラ撮ってる?」
「ばっちり撮ってるよ〜。みんな可愛いよ〜。」
あー、結構な量あったのにもう食べ終わってしまった。美味しい物は、すぐ無くなるな。でも、お腹一杯だ、満足だ。なんだか眠くなってきたな。レオ、リルも同じみたいだ。
「あらあら、3匹とも、お腹一杯だから眠くなってきたのかな。ケージの中に行きましょうね。」
俺は、そのままケージの中に入れられ眠ってしまった。お休み〜。
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