prologue
prologue
「……熱い。」
真夏の日差しが俺の体と喉を日上がらせていく。
時間はもう12時を回ったところだろうか・・・
太陽があざ笑うかのように俺の上で輝いている。
「・・・・・なんか無いかな・・・・」
そう思って、近くに何かないかを探す。
とりあえず自動販売機かコンビニでもあれば幸いなのだが。
「・・・道の端に何やら四角いものが・・・」
俺は目を凝らす。
もしかして……自動販売機!?
「行ってみるか・・・!」
わずかな望みも捨てない。それが俺。
そしてそれが俺の大きな取り柄でもある。
俺は箱を目指して突っ走った。
箱の前にたどり着く。
「・・・なんだ・・・これ・・・」
しかし、そこにあったのは、自動販売機でも、ましてやコンビニでも無い。
近頃あんまり見なくなった「電話ボックス」だった・・・・
「電信オタクならともかく・・・俺じゃぁ腹の足しにも喉の足しにもならねぇ・・・」
電話ボックスが食えたり、たたけば中から水が出てくるならもってのほかだが。
「しゃぁねぇ・・・進むか・・・」
俺は電話ボックスを後にする。
どうして、俺はこんなところにいるのだろうか。
俺はなぜ、水一杯にも困る旅をしているのだろうか・・・・
その原因は特にない。
生まれた時からそうだった。
物心ついた時にはもうすでに歩いていた。
学校なんてもんは行ったことが無い。
両親はこの生活を続けて行くうちに病気になり、名もわからない街で死んだ。
でも、この旅をやめるつもりは毛頭ない。
両親が見たことのない世界を見てみたいからだ。
しばらく歩くと街が見えてくる。
ここまで来ると自動販売機もコンビニも見えてくるはずだ。
しばらくはここで何か仕事を探そう・・・
街のはずれに大きな看板が。
『ようこそ。自然と風合い漂う街、沖の浦へ。』
沖の浦か・・・地名から察するに、漁業が盛んそうだ。
・・・・あくまで、俺の感でしかないが・・・・
「・・・・・ん?」
看板の下に何かいることに気付く。
さっ。
俺がそっちを見ると、すぐ隠れてしまう。
(なんなんだ・・・?)
俺は看板の所まで近づいてみることにした。
「おい。」
俺は看板の後ろにいる奴に声をかける。
「はい!?・・・あだっ!!」
そいつはびっくりして上にあった何かに頭をぶつける。
それにしても・・・・高い声だな・・・・
「大丈夫か?」
俺はそいつの腕を引く。
軽い。そして細い。
まるで素麺のゆで前の固い麺を触るかのように細い。
「わっ・・・・」
そいつは、長い髪を揺らしながら、俺の前に現れる。
「・・・・・女の子だったのか・・・」
遠目では気付かなかった。
「ひどいなぁ~第一町人に対してそれはないよぅ~。」
そいつは、頭をぶつけたところを両手で押さえている。
「第一町人?」
俺は聞き返す。
「そうそう。旅番組で何かあるじゃん!第一町人はっけ~ん!とかさ~!」
別にそう言うのに興味は無い。
「あっ・・・別に楽しくなかった?」
うんうんとうなづいてやる。
「そっか・・・・・・それは残念。」
なんだか、不思議な子だ・・・
「とりあえず、名前を教えてくれないですか?」
そして、唐突な子でもあった。
まぁ減るもんでもないし、答えてやろう・・・
「雄人。・・・・八島雄人。」
「ゆうと・・・さんですか!!へへっ。」
そう言って彼女は何かに書き込んでいる。
気にしないでおくか・・・
「お前はなんていう名前なんだ?」
俺も名乗ったから、あっちも名乗る権利がある。
「わたしですか・・・・?私は愛美。川島愛美です。あいみじゃないです。えみです。」
そう言って彼女は笑う。まるで心の底から嬉しいと思っているかのように。
「愛美か。よろしくな。」
俺はその時、その女の子をただの知り合った、ただの人だと思っていた。
――――まさか、その少女との出会いが俺を変えていくなんて、この時は思いもしていなかった・・・。
prologue、いかがだったでしょうか?
この話は全五章で構成される物語です。
波の町で起こる恋愛ストーリー、気に行っていただけたら幸いです。