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寵姫と王の夜の営み②

小話みたいなものなので、①よりはR15的表現はありませんが、一応サブタイトルに関するような内容です。

 初夜を過ごした次の夜も、仕事を終えてまっすぐ寝室に戻って来た王は、一足先に横になった寝台で本を読んでいた女に遠慮なく伸し掛かった。

 裾から手を入れ、服を脱がせにかかったところで、きょとんとした何か言いたげな女と目が合う。


「……嫌がるわけでもない、その驚いただけの顔はなんだ?」

「いえ、てっきり三ヶ月くらいに一度おやりになるのかと」

「数は打った方が当たるであろう。そのための同室だ」


「はぁ……」

 打算のみで閨を共にする妃なら、泣いて喜ぶだろう言葉にもたいして感銘を受けた様子もなく、女はぱたんと閉じた本をベッド脇の机に置き、少しぎこちないながらもまだ硬さの残る身体を仰向きにして寝転がる。


 王はそんな女の身体に手を回すと、少し背を浮かさせ、バンザイをさせる恰好で捲り上げた服を頭から引き抜いた。

 そのまま両手首を女の頭上でベッドに縫い付けた王はふと意地悪気に笑う。


「ああ、それと俺の身体に爪痕でも歯型でも、好きに残す権利をやろう。俺がお前の身体を好き勝手に弄るのだから、お前も好きに仕返しするがいい」

 しかし、そう言う王は抵抗できないようにした女の耳を思う存分舌で嬲り始めた。


*****


「誰か信頼できる方を、毎晩王がお帰りになる少し前に、私の元に寄越せませんか?」


 脱がせた王服の代わりにシルクの寝間着を着せようとする手を止められた、今や寵姫と呼ばれるようになった女が咎めるような表情をその腕の主に向けた。

 首筋を甘噛みされながらもそれを無視して王の寝支度を整え、大人しく夢の世界へ旅立とうと意思表示をした女の腕を解かず、濃いブラウンの瞳を無言で覗き込めば、出て来たのが先ほどの脈絡などまったくない言葉。


「何のためにだ?」

「王がお帰りになるまでに、その方に私の準備をしてもらえば、睦事での王の負担が減るでしょう?」


 一瞬過ぎった嫌な考えから逃避するためか、未だにお前は自分で自分の準備をするという発想はないのかと、王の思考は突拍子もなく脇道に逸れた。

 獅子王の意地とプライドで何とかその嫌な可能性に向き合おうとした王は、そこらの臣下なら震えあがるだろう怖い顔で、至近距離の寵姫に直球で訊ねる。


「…………それは俺に触れられるのは我慢ならんという意味か?」

「いいえ、私にとっては相手が王であっても他の方でも大差ありませんから、王の手間を省こうかと。過去にはそのようにして血筋を残された王もおりますし」


 血筋に重きが置かれ過ぎるウォガールでは、確かに同性にしか役立たずだった王の時には、女の挿入準備を自身の好みの男にさせることで、少しでも萎えないようにして結合に至ったという。

 他にも気に入らない女でも初夜だけは義務と、後は男が挿れるだけという状態になった女を機械的に抱いた王もいるらしい。

 そう考えれば、別段、寵姫の提案も珍しいことではないかもしれない。


 しかし大っぴらな返答に思いがけずこめかみを横殴りにされたような、あるはずもない衝撃を受けた王はぐらつく頭で何とか踏みとどまり、さも不機嫌そうに寵姫の後頭部で掴んだ髪を引っ張り、反らせた細い喉に齧り付いた。


「何を好き好んで、誰かの手垢まみれの女を抱かねばならない? お前はそんなことを気にせずともよい」

「でも……」

「うるさい」


 王が胸に這わせた手で片方のふくらみを握ったところで、きっ、と目を細めた寵姫はありったけの力を込めた両腕で逞しい胸板を押し返した。


「やっぱり、今夜は駄目です。生気を欠いた土気色の顔で帰って来たと思ったら、今度は青くなってますもの。さあ、お疲れでしょうからもう寝ますよ」


 あっという間にベッドに横になった寵姫がぽかんとする王に向かって、まるで遊び足りない子供を誘うように隣のスペースをポンポンと叩く。

 苛立たしげに鼻を鳴らし、上半身裸のままでベッドに入った王が「では朝一で倍抱いてやろう」などと思っていたとは、腕枕の根元に引き寄せられ、すぐに安らかな寝息を立て始めた寵姫はもちろん気づいていない。


*****


「い、いたい、イタイ、痛いっ!!」


 前触れもなく無防備な急所に忍び寄って来た繊手に、飛び上がりそうになった心境の王はなんとかがっつり握られる前に、そこから引き剥がすことに成功した。

 ただ思わず力の限り握り締めてしまったため、手を握り潰されかねなかった寵姫は涙目だ。


「誰の入れ知恵だ、お前はいつも通りでかまわんっ」

「今更ですが、王とは奉仕される側でしょう?」


「変なことを言うな。必要だからしているだけであって、決して俺がお前に奉仕しているわけではない」

 照れ隠しなのかなんなのか、自分でもわからずに早口になってしまった王の真向いに座る寵姫は、真剣な表情で小首を傾げた。

「ですが、あのように口でする必要はないと聞き及びました。むしろ王が側妃にそのようにさせていたのでしょう」


 本当にどこから仕入れてきた情報なのかと、王は頭痛のし出した額を押さえた。

 確かに口で奉仕させた妃もいるが、それは王が気乗りせず、また妊娠の恐れがないから女の好きにさせていただけで、別段寵姫に同じ行為をさせようとは思わない。

 王と寵姫の間では子作りが第一目的なわけだが、そうでなくともいつも冷静沈着な寵姫を翻弄し、我を忘れて乱れる姿を眺めるのは、それこそ傾国の美女に閨で尽くされるよりもずっと満足するものだ。


「妃とのことはお前が知る必要はないし、お前とのやり方に関しては、それこそ今更だ。行為に慣れてきても、舐めた方がお前は濡れるではないか」

「そ、そんな、ことは……」

冗談でもなくそう言えば、羞恥のためかしどろもどろな寵姫の頬がかっと赤らんだ。


「ほう、違うのか、では今夜はじっくりと一から十まで実況解説してやろう」

 にやりと、獲物を見つけた猛獣のように唇の端を吊り上げ、舌なめずりした王は改めて肌に馴染んだ肢体を組み敷く。

 抵抗を試みて寵姫が上げる悲鳴と非難の声など、まるで千切った綿菓子のように容易く飲みこんだ。

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