ポーン
掲載日:2026/07/05
突然、パソコンが動かなくなった。
どこを押しても、ポーンとしか音がならない。
「どうなってんだよ。システム部を呼ばないとダメかな」
隣の同僚に話しかけると、同僚は表情のない顔をこちらに向けて、口を開けた。
ポーン、という音がする。
「おい、ふざけてるのか?」
すると、また口が開く。
ポーン。
まさかと思って、シャープペンシルの芯を出すと、ポーンと音がする。
「おれは頭がおかしくなったのか?」
早退したいと部長に言うが、部長はポーンとしか鳴かない。
会社を出る。自動ドアからポーンと音がした。
町はポーンの音であふれていた。
自動車、信号、スマホのながら歩き。
ポーン、ポーン、ポーン。
家に帰るんだ。そして、布団をかぶって寝ればいい。明日になったら、全部元通りだ。そうだ、夢だ。
定期を改札に読み取らせると、ポーン。
プラットフォームの全ての人間が開けた口からポーン。
「やめろ! おれはもう、ポーンなんてききたくない!」
男は両腕をふりまわしながら、暴れる。
線路へ落ちる。
男の体をやってきた特急列車がバラバラにする。
首がまりのように飛んでいく。
ポーン。




