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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

この物語はエピローグである【黒涙と紫石】

作者: 狐塚 キキ
掲載日:2026/03/09


 俺は、一人ボーっとブランコに腰を掛けながら、アイスを吸っていた。


 俺、朝倉(あさくら)(りょう)は、つい先日、会社をクビになったばかりだった。

 高校のころから勉強を頑張って、大学でも勉強一筋。合コンも飲みも遊びも行かなかった。そうしてようやく夢だった会社に入って、頑張って働いてたのに……。


 原因もよく分からないままクビになって、夢のようにふわふわした気分で帰宅。


 よく眠れなくて、こんなに早く起きてしまった。

 適当にコンビニに来て、アイスを買って、近くに会った公園のブランコでボーっとしてる……。


「大の大人が明け方にブランコ……ワンチャン職質……」


 フッと笑いが浮かんできて、軽く笑った。

 ハハハハハハハ……と笑っていると、ふいに悲しくなって、顔を伏せて覆う。


「……やっぱ青春、楽しんどけばよかったなぁ……」


 軽く鼻をすすった時、「あれ?」と声をかけられた。


「オニーさん、こんな時間にブランコで遊んでるの?」


 明るい声だ。指のすき間から目の前の子どもを見上げる。

 十……一、二歳くらいの……少年。


「楽しそうだね!」


 こいつ、どこに目ぇついてんだよ。

 少年は俺の隣のブランコに腰を掛ける。鎖が音を鳴らした。


 するとジーッと、俺が持っている袋を見つめてきた。


「……食いたい?」


「いーの!? やたー!」


 少年はバッと両手を広げて喜んだ。バランスを崩して落ちかけたのか、「おわ」と声を漏らしていた。

 その姿を見て、心の暗い部分……というか、悪いことをしたくなってきた。


「ダメ」


 ニヤリと笑って見せると、少年は頬を膨らませた。


「いいって言ったじゃん、ケチ」


「言ってない。お前が勝手に勘違いしたんだ」


 少年の髪に朝日がかかった。彼の前髪についてるヘアピンが光を反射する。


「大体、こんな時間にアイスなんか食べたら、お母さんに叱られるぞ」


「んー……」


 そう呟き、彼はブランコに座りなおす。

 少し上を向いて考えると、ニパッと笑った。


「それはないよ。だって俺、親、いないし」


 は? と言いかけた。

 親がいないからなんだ。親がいなくても、保護者に叱られるだろう。


 というか、何でこんな時間に子どもが?


 そんなことをグルグル考えていると、いつの間にか少年は俺の目の前にいた。

 今まで気づかなかった。彼の目が、なぜか一般人にないものを感じさせていることに。


 少年は俺の手を取り、顔を覗き込むようにしゃがんだ。


「おい、な――」

「朝倉凌さん、27歳。つい先日、入ったばかりの会社をクビになり、無職。中高大と勉強一筋だったため頼れる友人もおらず、コミュニケーションが苦手。――過去の自分の行動が、今になって”悪夢”として降りかかってきたこと……どう思っていますか? 朝倉凌さんっ」


 彼の目は――全く笑っていなかった。

 それどころか、黒い光を放っている。


「……え」

「ああ、いいんです。わかっていますから。貴方の考えも――原因も。ね?」


 原因、そう聞いた時、思わず反応してしまった。

 ……いや、どうせ自分が悪いとか言うんだろ? と、首を横に振る。期待するな。


「あなた……疫病神ついてますよ」


 どこで憑いたのか――それは、小学生のころ出来心で古い神社に忍び込んだこと。

 神社にあった紫色の石を持ち帰り、部屋に飾っていた。それは上京する際に実家に置いて来たようですが……随分気に入られちゃったみたいですね。


 言葉を発する間もなく笑顔でそう続けられ、何も言えなくなった。


「……なんで」

 数秒待ってもらって、ようやく絞り出した一言がそれだ。


 少年は立ち上がり、「うーん」とわざとらしく考えるふりをした。


「そうですねぇ、まず誤解しないでいただきたいのが、僕とあなたは本当に初対面ということです。僕はあなたを監視していないし、ましてやストーカーなんて被害妄想もいいところだ」


 目を伏せ、やれやれと言うように首を横に振る少年。

 俺は、藁にも縋る思いで言った。


「この先も……っ同じようなことが起きるのか? 不幸ばっかりで……こんな――」


 言葉に詰まって下を向く。

 少年は憐れむような顔をした。その表情が「yes」を物語っていた。


「でも、疫病神とはいえ神です。その石の所に戻らなければならない。その手伝いをしてあげます」


 ハッと顔を上げた。

 少年が、今度こそ本当に笑っていた。


 ありがとう――と、言おうとしたとき、少年の笑みが意地の悪いものに変わった。


「まあでも、僕だけ働くのじゃフェアじゃない。僕の願いも――叶えてくれません?」


 返事は一つだった。

 ああ、もちろん! それで少しでも生きやすくなるなら!





















 ああ、やっぱり、人間は扱いやすい。

 ()はゆっくりと笑顔を作って、目の前の男に手を差し出した。


「僕は星野(ほしの)(あお)。よろしくね」


「……もう分かってると思うけど、俺は朝倉凌。こちらこそ、よろしく」


 口から動かして、少し遅れて目が細まる。

 作り笑顔じゃない笑顔を演出するために。


 おい、もっと頑張って疫病神を演じろよ。


 朝倉の後ろで黒い涙を流している着物の少年――本物の星野蒼を睨んだ。

 元からこの体を返す気なんてないが、百年使い続ければ体も心も慣れるというものだ。余計に返すつもりはない。


 だからこれは脅し。

 星野蒼が勝手に力を付けて反撃してこないようにするための。


 我らは人間の体を借りている間は、成長できないのだから。


あっはは、続きはないよ(笑)こういう短編だからね

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