第4夢「チスイネコ」
辺りを見渡すと数人の気配を感じた
木の上、生い茂った草の中
そして川の中からも殺気を感じた
するとどこからか声が聞こえた
「お久しぶりですねリュムールさん、メアナイト様からこちらに来ていると伺いまして動向を観察させて頂いてましたが、やはりあなたは裏切り者でしたか、これだから猫は信用出来ないんですよ!」
声と共に隠れていた影が一斉にこっちへ飛び出してきた手には刀を持っている
そしてそのまま斬りかかってきた
俺はその一撃をかわし
腹に拳を一撃食らわせる
後ろを振り返るとリュムールが3人の影に囲まれていたがリュムールは両手の刃であっけなくその影を切り裂いた
「やだなぁドリメア、ボクの邪魔しないでくれる?いくらキミでも邪魔するなら遠慮無く切り刻んじゃうよ?」
「おー怖い怖い、ですがちょうど良い。実は猫は嫌いでして、ここであなたを始末してついでに夢想水晶も頂いて帰りましょうか」
そう言うと川の中からドリメアが姿を現した
トカゲのような顔
そしてヘビのような尻尾
そして特徴的な4本の腕
リュムールがドリメアに飛びかかる
俺はその隙に懐に入れていた夢想水晶が変化したオカリナ
スレアリーバーを構えて叫ぶ
「レイブテクター!夢装!!」
スレアリーバーから無数の青い粒子が放たれ俺を包みレイブテクターへと変化する
そしてスレアリーバーは夢奏剣へと姿を変える
そして俺はその場で夢奏剣にエネルギーを集中させる
そしてリュムールに声をかける
「一応警告しとくぞ!巻き添えくらいたくなかったらそこをどけ!」
振り返ったリュムールは察したのか後方へ飛び退き
「仕方無いなぁ、だったらボクも合わせてあげるよ!!」
俺は夢奏剣を左上に構え右下に振り下ろす
そして右上から左下へと振り下ろす
斬撃がXに重なりドリメアに向かって放たれる
その途中リュムールが両手の6本の刃を振りかざす
左手に雷、右手に炎
6本の斬撃が重なり8本の斬撃となりドリメアの体を貫いた
だがドリメアの体は堅く背中にある2本の腕を切り落としはしたが完全に倒せはしなかった
トドメをさそうと俺は最後の力を振り絞り必殺の構えを取る
リュムールも合わせようと力を溜めているようだった
だがドリメアは逃げた
「やはりあなたは裏切り者、良いですかコシュマールメアはあなたを追い続けますよ
今日の所は退かせて頂きましょう。
お二人ともその首しっかりと洗っておいて下さいね、次に会う時がお二人の死の時ですよフフフフフ………」
ドリメアの気配が消えた
辺りはもう日も落ちて暗くなっていた
俺はレイブテクターを解除して
しばらく座り込んだ
今日は何回戦ったっけ?
そんな事を考えていると
「ねぇねぇ、キミの作戦使えなくなっちゃったね?ボク裏切り者になっちゃったよ?どうする?」
「うるさい、どうせお前乗る気じゃなかっただろ」
「えぇー?返事聞いてないのに決めつけるの良くないよー?面白そうだから乗ってやっても良いかな?って思ったのに。
でも結局使えなくなっちゃったけどねー」
どこか嬉しそうに話すリュムールの言葉を聞き流しながら
本当に今後どうするかを考えていた
すると
「そこで1つ提案があるんだけど聞いてくれない?」
「嫌だって言ってもどうせ聞かねーんだろ、聞くだけ聞いてやるよ」
「そんな言い方ないじゃん?でもボクの事わかってるじゃん、そんなにボクの事理解してくれるなんて嬉しなー」
ふざけたように言うリュムール
「あのね、ボクもうコシュマールメアとは敵対しちゃったでしょ?だからメアナイトはあてになんないわけ、だったら夢想水晶持ってるキミと組むべきなんじゃないかなって思うんだよね、まぁ別に夢想水晶を力ずくで奪っても良いけどさ、ボクなるべくならキミを殺したくは無いんだよね。
だってキミ面白いし、だからね?キミに協力してあげるから夢想水晶の使い方がわかったらボクの願いも叶えてよ。それからボクさ定期的に血を飲まないと暴走しちゃうからついでにキミの血も飲ませてよ、そしたらボクは願いも叶うし血も飲めるし、キミと遊べるし一石三鳥じゃん」
おいおいおいさっきは殺しても良いみたいな事言ってなかったか?
まぁそれはさておき
「お前血を吸うのか、それは知らなかった」
そこで俺はふと思い出した
そういえばいつだったか
コイツ自分の種族の事言ってたよな
「お前⁉そういえばチスイネコとか言ってたか⁉⁉」
「へぇ、覚えてくれてたんだ?なになになに?やっぱボクの事気になってたの?」
「うるせー茶化すな、わかった。その条件飲んでやる、代わりに俺の条件も聞け」
「良いよ?なに?」
「夢想水晶の使い方がわかったらお前の望みは可能な願いなら何でも叶えてやる、だが誰かを不幸にする願いは却下、それからもう誰も襲わない、暴れたいなら俺が相手になる、血が欲しいならいくらでもくれてやるが他の人間は巻き込むな。
それが俺の条件だ」
「ふーん、つまりはキミ以外の人間は相手にするな、って事?独占欲強すぎ、そこまでボクの事好きなの?」
「茶化すならこの話は無しだ」
「わかったよ、ゴメン。
怒らないでよ、良いよボクはそれで」
とりあえずは交渉成立、かな?
「お前の事を知ってるかどうかは知らないがチスイネコならお前以外に1人知っている、会ってみるか?」
リュムールは驚いた顔で
「え?嘘?なんでそれを先に言わないのさ!」
「悪い悪いお前が血を飲ませろって言ったから思い出したんだわ」
するとリュムールは俺に近づき
「そういえばキミから猫の臭いがするな、とは思ってたんだよね」
と俺の首筋あたりの匂いを嗅いでいる
「ねぇそのチスイネコってどこにいるの?」
「会わせてやるから一緒に来い、だけど良いか?寄り道はするなよ
途中で居なければ置いてくからな」
「はぐれても結局は追ってくるくせに」
「何か言ったか?」
何も言ってませーん
ふてくされた様に舌を出すリュムールをよそ目に俺は家へと向かった
玄関を開けると
主が出迎えてくれた
出迎えたと言うより帰りが遅くなったから抗議をする為だ
「おい!遅いぞ!オイラ様をどれだけ待たせるんだ早くご飯を用意するのだ!」
と言うなり俺の後ろに居たリュムールを見つめ
「驚いたぞ………お前、チスイネコなのか?」
「こんばんわ可愛い猫ちゃん、もしかしてキミがチスイネコ?」
どうやらこの様子じゃ主はリュムールを知らないらしい
「ここで話す事でも無いから2人共リビングで話そう」
俺はそういって2人をリビングへ行かせると主の食事を用意して、その後にコーヒーを2つ用意した
俺は主にリュムールの事を説明した
記憶を失っている事、自分の記憶を探している事、一通り話し終えた後、主は
「話はわかったよ、でもオイラ様はリュムールに会った事は無い。
だけど名前は聞いたことがあるよ」
リュムールは驚いていた
自分の存在を同族が名前だけでも知っていたのだから驚くのも無理はないか
「まずはオイラ様の事から教えてあげる。
オイラ様の名前はキュラウィン。
カロタッス王国の王子で次期国王様なのだ。
今はネギって名前で呼ばれているぞ、理由は後で一斗に聞けば良いよ。
オイラ様はカロタッス王国の式典に出席するために夢芽香と一緒に出掛けてたんだ、そこで突然大きな地震が起きたんだ
あ、夢芽香っていうのはオイラ様のお嫁さんになる人間なのだ。
そこで逃げるときに夢芽香とはぐれちゃって
探してたら突然目の前に変な光が現れて気付いたらこっちに来てたのだ
そこで迷子になってる時に紫苑さんに助けて貰ってから一斗と出会って今ここにいる。
ここまでで何か聞き覚えのある名前あった?」
リュムールは首を横に振る
「そっか、それじゃ続けるけれど、オイラ様のママ様の名前はリュッカ、カースマイス王国って国の王女だったんだけど、この名前に聞き覚えは無い?」
リュムールは少し考えた後
首を横に振る
やはり思い出せないらしい
「そうか、それでママ様には妹がいて、子供の頃に誘拐されてしまったらしいんだ。
その妹の名前がリュムール。
ママ様はいつもオイラ様に話してくれたよ
リュムールは勇敢でいつも自分を守ってくれてたって
でも誘拐された時自分は何もしてあげられなかった。
ママ様はそれからずっとリュムールを探してるんだって言ってた。
オイラ様が知ってるのはここまで」
話を聞き終えたリュムールは
少し考えた後
どこか寂しそうな顔で
「すごいね、ボク王女様かも知れないんだって?でも同じ名前の別人って可能性は無い?」
主はリュムールの膝のうえに乗り匂いを嗅ぐ
「多分その可能性は無いと思う、だってママ様の匂いに似てるから多分本人だと思う、オイラ様のおば様じゃないかな」
「キュラウィンくんだっけ、キミ失礼だな、ボクはオバサンじゃないよ?お姉さんにしてくれない?」
ツッコむとこはそこなのかって思いつつ2人のやり取りに耳を傾ける
「それじゃリュム姉様!それなら良い?」
「ハイ良く出来ました」
そう言いながらリュムールは主の喉元を撫でる
主は嬉しそうだった
だが気持ちは何となくわかる
知らない世界に来て会った事は無いにしても自分と同胞
ましてや親族かも知れない人が現れたんだから嬉しくもなるよな
きっとリュムールも似たような感じかも知れない
ずっと探してた自分の記憶に繋がる手がかりを見つけたんだから
そんな事を考えながら2人を見ていると
主がリュムールに
「リュム姉様、しばらくここにいたら?帰る所無いんでしょ?」
リュムールは少し考えて
「うーん、そうしたいけれどボクがここにいるとキミに迷惑かけちゃうかも知れないから辞めておくよ」
その表情はどこか暗くいつものリュムールとは違う雰囲気だった
そこで俺は
「仕方無い、約束だからな。お前が知らない間に他の人間に迷惑かけても困るし、手伝って欲しい時にいないのは困るしな。手伝うって言ったのお前だろ?だったら約束は守れよ」
「いいの?知らないよ?夢想水晶盗んで逃げちゃうかもだよ?」
確かにその可能性はゼロでは無いが
主と接していたリュムールからはそんな気配は全く感じられ無かった
自分でも甘すぎるなとは思ったが主の為にもなるかも、と思い決断した
「まぁお前が裏切ったらその時はその時だ、それにお前の為じゃ無い、そこにいる主の為だ」
「本当にバカだなぁキミは……昔から思ってたけれどお人好しにも程があるでしょ、ボク達さっきまで敵だったんだよ?でも…………ありがとね」
最後の言葉は聞き取れなかったが
リュムールの目にはうっすらと涙が浮かんでいるように思えた
明日から騒がしくなりそうだなぁ
そう思いながら俺はソファに座ったままいつの間にか眠りに落ちていた
それから俺が目を覚ましたのは深夜だった
主は自分のベッドて眠っている
リュムールはどこにもいなかった
ふとベランダの方に気配を感じたのでベランダに出るとリュムールが外を見ていた
「あ、起きた?キミ無防備だよねボクの前で寝ちゃうなんて。
顔に落書きされてても起きなかったよ」
「は?お前マジかよ⁉」
俺は慌てて窓ガラスに映る自分の顔を確認するが暗くてよくわからない
「冗談だよ、やっぱキミって楽しいね、からかい甲斐がある」
「ったくお前って奴は……
で?少しは落ち着いたか?」
「正直まだ戸惑ってる、いきなり王女様かも知れないってなっちゃうとボクって何なんだろって考えちゃって………ほらボクって強くて可愛いじゃない?こんなボクが本当に王女様だったのかな?って」
「可愛いかどうかは置いといて強くて厄介で面倒ってのは認める」
俺は少しイタズラっぽく言ってやった
「うわぁひどいなぁ、でもキミみたいにバカでチョロくて何でも信じちゃう奴に言われてもなぁ」
リュムールが笑顔で返す
「そうそうそれそれ、お前はそれくらいの方がお前らしいわ、まぁ俺としてはお前と戦わずに済むならその方が楽だ、お前1番厄介だからな。お前がいないコシュマールメアは多分チョロい」
俺は少しおおげさに話す
「やっぱキミもそう思う?バカだよねコシュマールメアってボクがいなきゃ全然弱っちぃくせに」
まさかコイツとこんな風に話す日が来るなんて思わなかったな
なんて思いながら空を見上げる
「ねぇねぇ、キミの血を飲ませてよ。
約束でしょ?」
そうだったなそういう約束か
「わかった、どうすれば良い?」
「本当は首筋からって言いたいけど、腕からで我慢しといてあげるから腕出して」
言われるままに右腕を差し出した
するとリュムールはそのまま手首に噛み付いた
思ったほど痛みは無くそれが意外だった
しばらくすると口を離し
「ごちそうさまでした、また飲ませてね」
ニヤッとイタズラっぽく笑うリュムール
それから俺は
「あ、明日色々用意するから今日は俺のベッド使って寝ろ。
俺はソファで寝るから気にするな」
そう言うとリュムールはいつもの様にふざけながら
「えー?ボクは一緒に寝ても良いんだけど?」
と俺をからかうと
「でも、本当にありがとね。
あ、もしボクが本当に王女様だったらキミの事特別に大臣にしてあげても良いよ」
「あぁ楽しみにしておくよ」
そういってリュムールは部屋に戻っていった
そして俺は風を感じながらしばらく夜の景色を楽しむ事にした
この風がどこへ向かうのかわからないのと同じで
俺の明日はどこへ向かうのか
そんな事をぼんやりと考えながら夜は終わりへ向けて進んでいくのであった……




