第3夢「リュムール」
「ハァハァ…………
ったく今日これで何回目だよ………」
マスクを脱いで
その場にバタンと仰向けに倒れ込む
視界に映る空は青く太陽が眩しかった
今日は朝からコシュマールメアの送り込んで来た怪人共が街で大暴れしていた
他の組織の怪人を連れてきたり
人質を取ったり
その度に俺はレイブテクターを装着し戦った
そして今また新しく出て来た相手を倒したところだった
今日は明らかに違っていた
いつもなら1人づつやってきて
負ければまた違う日に新しい奴が来る
その繰り返しだった
だが今日は明らかに連携を取り作戦を練ってきているような攻め方だった
他の組織とでも手を組んだかな?
そんな事を考えていると
また新たな怪人が現れた
「いやぁ………そろそろマジで勘弁して欲しいんですけどー!!!」
泣き言を言いつつもマスクを被り戦闘態勢を取る
右手にエネルギーを集約させ
エネルギーで出来た手裏剣レイブスピナーを複数生成する
そして相手に向かって一気に放つ
レイブスピナーを弾幕代わりにして
相手の意識を逸らし
超速で残像を発生させつつ
相手の隙を伺い夢奏剣で斬りかかる
「夢創流忍術桜花疾風一閃(むそうりゅうにんじゅつ おうかしっぷういっせん)」
これが決まり相手の態勢を崩す事に成功
更に追撃をかける
夢奏剣に全エネルギーを集中させる
すると夢奏剣の刀身が青く輝く
剣を右手で逆手に持ち右から左へ
そして左下から右上に
そのまま剣を順手に持ち替え右上から左下へ
そして左から右へ
最後に相手の胴体に剣を当てエネルギーを放出させながら斬る
「夢奏剣レイブスラッシュ!!」
断末魔の叫びをあげながら怪人は消滅した
「終わった………かな?」
怪人が消えたのを確認してレイブテクターを解除しようとしたその時
突然背後から凄まじい殺気を感じた
「ダメだよ?ちゃーんと集中してなきゃ?こんな風に簡単に背後取られちゃうじゃない、油断しちゃった?ほら斬らないであげるからこっち向いて顔見せてよ」
聞き覚えのある低い女性の声と共に首筋にひんやりと刃の感触が伝わる
俺はゆっくりと振り返る
目の前に居たのはコシュマールメアの幹部リュムール
着物のような服に特徴的な猫耳
両手は猫の手で手の甲からは猫の爪のような3本の刃が伸びている
「久しぶり、やっと会えたね、夢創忍軍127代目当主、夢創一斗くーん。
あ、今はヴォルスレイバー?って言うんだっけ?かれこれ10年ぶりくらい?どう?ボクに会いたくてたまらなかったんじゃない?」
笑みを浮かべながらも鋭い目つきで俺を睨みつける
「出来ればお前には1番会いたく無かったわ……だけどいつかはこういう日が来るとは思ってたけどな」
「またまた照れちゃって……素直じゃ無いのはモテないよ?
でもまぁ昔からそうだから仕方無いね。
ねぇねぇ所でそれが夢想水晶の力で得た君の鎧?けっこーイケメンじゃん、ボクの超好みなんだけど……
んー、でもボクはやっぱり君の素顔の方が好きだな
だからボクがそれ壊してあげるね
さぁ、いーっぱい遊ぼう」
そう言うと突然襲いかかってきた
猫のように素早い攻撃
だが1発が重い
それを軽々と何発も繰り出してくる
1発でも食らえば確実に致命傷になる攻撃をかろうじて防ぐ
何とか隙を突いて後ろに下がり距離を取る
「ふーん、そう来るんだ。
だったらこれはどう?」
右手には炎を、左手には雷をまとった爪を振りかざしながらこちらへと突進してくる
俺は夢奏剣にエネルギーを集め居合い斬りの要領で一気にエネルギーを開放しその攻撃を受ける
互いの刃が重なり力と力がぶつかり合う
俺は力に押されぬように渾身の力で踏ん張りながら夢奏剣へエネルギーを送り続ける
どちらの力が先に尽きるかの勝負になった時
リュムールは突然攻撃を止めた
「なんだけっこーやるじゃん
やっぱ怪人10人くらいじゃダメか」
笑顔で話すリュムールに
いや、あの怪人達送り込んできたのお前かよ!
って思いながらも突如攻撃を止めたリュムールに対し戸惑いを覚えていた
「本当はね今日20人連れてきたんだけど、ボクがちょーっと目を離した隙に何か他の人にやられちゃってたみたいで君の所に辿り着けたのは10人くらいだったんだ、この世界凄いね他にも君みたいな人達があっと言う間に怪人倒しちゃった」
他のヒーローさん達ゴメン
心の中で謝りながら
「お喋りは良い、さっさと決着つけようぜ?その為に来たんだろ?」
体力的に限界が近そうだが
俺は一撃に全てを賭けるつもりで
必殺の構えを取る
「やだなー、そうムキになんないでよ。
ちょーっと腕試ししただけじゃん
今日はもう戦わないよ
ボク今日こっちに来たばかりでまだこの世界の事なんにも知らないんだ
だから色々教えてよ」
無邪気に笑うリュムール
そういえばコイツいつもこんな感じだったわ
元の世界にいた頃も
戦いを仕掛けてきては
飽きたとか腹減ったとかそんな理由で急に帰ってたっけか
なんだかんだで調子狂わされるから苦手だったんだ
だけど戦わないならちょうど良い
色々聞きたいこともあるし
聞いてみるか
「わかったよ、とりあえず今日は休戦な、だったら場所を変えようか。
俺もお前に聞きたいことがある」
「え?なになに?もしかしてボクの事そんなに気になっちゃってるの?」
茶化してくるリュムールを放っといて俺はレイブテクターを解除して移動した
途中リュムールが着いて来てるか確認したが
色んな店を見つけては興味深そうに覗いたり食べ物をねだられたり
あぁやっぱこうなるのか、と俺は疲れ果てた
そして周りに人も少ない河川敷にリュムールを連れてきた
ここなら万が一の時でも人質を取られる可能性は少ないし
いざ戦いになっても周りを気にせず戦える
「へぇ綺麗な場所知ってるんだ、なになに?ボクに愛の告白しちゃったりする?」
「誰がするか!単刀直入に聞く、お前どうやってこっちに来た?来たなら帰る方法もあるはずだ、教えろ」
「ふーん、やっぱそれが気になる?どうしよっかなぁ?」
イタズラっぽく笑うリュムール
やっぱ簡単には教えねーわな
だったら力ずくで吐かせるしか
そう思った時
「その前にいくつか聞かせてよ、言ったでしょ?ボク今日来たばかりでまだこの世界の事知らないんだ、色々知っとかなきゃこの先も面倒だし。
あ、でもさっきのケーキは美味しかったよごちそうさま、それはわかったから他の事教えてよ」
「何が知りたいんだ?言っておくが仲間の情報とかなら教えねーぞ」
「そんな事に興味は無いよ、それより仲間なんていたんだ?いつも1人ぼっちだったじゃん?だから構ってあげてたのにー何か妬けちゃうなぁ?」
クソ………やっぱり調子を狂わされる
困惑していると
「ゴメンゴメン怒んないでね、ほらいつもの冗談じゃないの」
にやりと笑みを浮かべると
次の瞬間真剣な顔で
「ねぇ、ボクが記憶が無いこと知ってるよね?メアナイトに拾われる前の記憶が無いこと、ボクはずっと探してるんだよ自分自身の事を、正直メアナイトとかコシュマールメアとかどうでも良いんだ、ボクにとってはただの暇つぶしだし、だからこの世界だともしかしたら何か見つかるんじゃ無いかなって、だからこの世界の事教えてよ、ボクより長いんでしょ?」
そういえば前にそんな事言ってたっけか
名前と種族以外の事は覚えてないって
仕方無いから俺の見てきたこの世界の事を教えてやった
元の世界との違いやらこの世界の情勢など
「ふーん、だいたいわかったよ、あともう1つ聞いて良い?夢想水晶の力で何とかなんないの?だってそれ持ってる人の願いを叶えてくれるんでしょ?メアナイトに協力してるのって夢想水晶が何でも願い叶えてくれるって言うから協力してるだけであって、そうじゃ無かったら本当にどうでも良いんだよね」
「悪いな俺も正直わかんねーんだわ、こいつにどんな力があってどうやって使うのかって」
「でも実際使ってるじゃん」
「いや確かに戦う時に使ってはいるがそれは戦う時だけで普段は使えねーの、俺も何回か試したんだけどな、元の世界に帰れないかとか、ってか使えてるならとっくに元の世界に帰ってるわ」
「ふーん、そっかぁ持ってる一族が本当に知らないなら無理矢理奪っても仕方無いか………」
色々思う事はあったが俺はリュムールに聞いた
「悪いな、期待に応えてやれなくて。
で、俺の質問なんだが、お前どうやってこっちに来た?どうやって帰る?」
リュムールは表情を変えずに答えた
「ゴメンね、ボクにもわからないんだ、実はボクさ君が消えた後コシュマールメア辞めちゃったんだ。
だって君が1番遊んでて楽しかったし他の奴等って全然遊んでも楽しくなかったし、だったら辞めちゃおって
それでねあちこち旅してたらメアナイトに見つかっちゃったんだ」
「ちょっと待て、お前メアナイトに会ったのか⁉⁉⁉」
「うん、フード被ってたから顔は見えなかったけれど声はメアナイトだったよ、それがどうかした?」
コシュマールメアの中でメアナイトに会った事がある奴は今まで居なかったはずだ
誰に聞いても会った事は無いと言う
「そもそもお前、俺から夢想水晶奪ってどうする気だった?」
「どうするも何もメアナイトが夢想水晶奪ってくればボクの願いを叶えてくれるって言うから話に乗っただけだよ、君と遊べるし願いも叶うし一石二鳥じゃん?そしたらメアナイトが何かウニョウニョ言ってそしたら目の前に怪人いっぱい出てきてその後何かバーンってなってピカーってしたらこっちに来ちゃってたわけ」
最後は何を言ってるかわからなかったが
つまりはコイツは帰る方法は知らないがメアナイトなら知ってる可能性があるって事か
そして夢想水晶をコイツが俺から奪えばメアナイトが出てくる可能性はある、と
そこで俺は作戦を思いついた
だがそれにはリュムールと協力する必要がある
リュムールが全部真実を言ってる保証が無い以上この作戦の成功率は限りなくゼロに近い
だがリュムールの性格上嘘を言ってるとは思えなかった
どんな時でも自分の感情で動くコイツが嘘をつく理由がわからない
信用しても良いかも知れない、と思っていた
だが失敗すれば失う物が多過ぎる
そんな事をゴチャゴチャ考えていると
「ねぇ、もしかして今ボクの事を利用しようとか考えてない?」
イタズラな笑みを浮かべながら図星を突かれた
「やっぱり?キミってすぐ顔に出るからバレバレだよ?だけどキミのそういう所嫌いじゃないな」
「バレたなら仕方無い、お察しの通り今俺はものすごーく悪い事を思い付いた」
「ハハハ何それ悪者のつもり?キミって本当に面白いね、そういう所全然変わってないから安心したよ、まだまだ遊んでくれそうだね。
それじゃ聞いてあげるから言ってみなよ、まぁボクが乗るかどうかはわからないけれどね」
「わかったよ、まずお前が俺を倒した事にする、それでメアナイトが来るのを待つ、メアナイトが来たらお前は願いを叶えてもらい、その後に俺がメアナイトを倒して元の世界に帰る方法を聞く、そうすればお前は願いが叶うし俺も元の世界に帰れるかも知れないし悪い話じゃ無いと思うんだが?それに俺が生きてればまた俺と遊べるんじゃないか?退屈させないように努力はしてやる」
一か八か、俺は賭けに出てみる事にした
こっちの世界に来て10数年何も手ががりが無かったが、もしかしたらこれがチャンスなのかも知れない
そう思ったからだ
するとリュムールはしばらく笑っていた
え?俺なんか笑わせるような事言ったか?
困惑していると
ひとしきり笑い転げてたリュムールがこう言った
「キミって本当にバカなの?うん、バカなのはだいたいわかってたけれど本当にここまでバカだとは思わなかった。何かもの凄いドヤ顔して言ったけれど全然お話になってないからね、本当にバカだなぁ」
ゲラゲラ笑うリュムールにイラつきを覚えながら
この提案をした事に後悔した
冷静に考えてみればコイツは敵だ
仮に乗ってきたとしても裏切らない保証がない
少しでも信じて見ても良いか、と思った自分に腹が立った
「そもそもその作戦にボクに何のメリットがあるのさ?夢想水晶奪うだけならキミを倒せば良いだけなんだし、別にキミが生きてようが死んでようがボクには関係無いのに、それに遊び相手ならキミじゃなくても他に探せば良いだけだよ?ほらボクに何のメリットも無いじゃん、後ねボクが裏切ったらどうするのさ?ボクにはメリットもリスクも無いけれど、キミにはリスクしか無いじゃん、本当にバカだなぁ、ボクはキミの敵なんだよ?もしかしてボクがキミを殺さないとでも思っちゃってた?だったら本当に本当にバカなんだね。
そんな幼稚な作戦でメアナイトが出て来るとは思えないし、そんな簡単な事もわからないんだね?
それにものすごーく悪い事だってさ、全然悪い事じゃないし、もうダメ本当にお腹痛い」
そう言ってずっと笑い転げてやがる………
確かに思い付きで閃いたようなものだから甘いのは認めるが
そこまで笑わなくても良くないか?
あーやっぱコイツ本当に苦手だわ
というか何で俺、敵のコイツとこんな話してんだろ
あーぁ、はやく帰りてー
しばらくそう思っていたら
ようやく落ち着いたリュムールが
「あー笑った笑った、こんなに笑ったの初めてだよ。
キミはボクを笑わせる才能あるんじゃない?」
「うるせー悪かったなバカで、笑いたければ好きなだけ笑えよ。
さてと俺はもう帰るぞ」
「待ちなよ、まだ乗るとも乗らないとも言ってないよ?本当にせっかちだなぁ、だからモテないんだよ?」
余計なお世話だ
無視して帰ろうと思った時
周りに殺気を感じた
数人は居る
俺はとっさに構えて戦闘態勢を取る
「多分信じて貰えないかもだけど、一応言っておくね。
これはボクじゃないよボクは何も知らない」
そう言うとリュムールも戦闘態勢に入った
…………続く




