元ヒロインの、憧れ
「貴女は、悪役令嬢なんかではないわ!!」
「ぅわっ!ど、どうしました?ダリア様...!」
「貴女は...リリィ・ホランドは、悪役令嬢なんかではないの!悪いのはあの偽物だけのはずでしょう!?」
「それは、そうなんですけど...でも、それは私達が真実を知ってるから言えることで...。」
「みんなにも知らせればいい!!あれは、本当のリリィ・ホランドではないって、偽物が悪さをしていただけって...じゃないと、そうじゃないと...貴女が、報われないじゃない...。」
あの、大人っぽくて、聡明なことで有名なダリア・アームストロングが、まるで子どものようにポロポロと涙を溢している。私を、想って。
今日何度目か分からない感情が、私の胸をかけめぐる。
誰かと話すこと、誰かと笑い合えること、家族と共に過ごすこと、愛する人と幸せになること。それら全てを、人生を、諦めていた。
でも、この人の瞳が、諦めるなと訴える。
「私は、昨日のお告げが、貴女を救うためのものだと信じているわ。そして私は、その救済の駒としてもう動いたの。ならば、最後まで動いて見せるのが私の矜持だわ。」
あの運命の日。この人に会いたいと心から思った日。その思いは、もう叶わないと思っていた。叶っても、願った形にはならないだろうと思っていたのに。
「...ダリア様。私、やりたいことがたくさんあります。諦めきれない願いが、たくさんあるのです。
それらをまだ、まだ、願ってもよいのでしょうか。」
「当たり前でしょう!」
ダリア様と仲良くなりたいという幼い私の願いを、この人は、叶えてくれた。
「私は、アームストロング公爵家が長女、ダリア・アームストロングです。始めたら必ず最後までやり遂げる、それが私の信条。中途半端なんて、大嫌いよ。」
その、燃えるように真っ赤な髪が、瞳が、私の心を奮い立たせる。
「リリィ・ホランド。私が必ず、貴女を救い出す。」
これが私の、二度目の運命の日。
私の願い事が、ひとつ、増えた日。




