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元ヒロインの、独白

 

 私は、あの日、階段から落ちた日。夜に目を覚ましました。

 でも、私が目を覚ました時には、私の身体は私のものではなくなっていました。まぁるい縁取りの向こうに、泣いている母と母を慰めている私の姿が見えて、何が何だか分かりませんでした。


 身体を奪われてすぐは、「奪われた」なんて思っていなかったんです。彼女にはどうしても私の身体を使わなければならない事情があって、一時的に「貸している」だけ。きっと彼女の望みを果たした時、快く身体を返してくれるだろうと思っていたんです。



 でも、違いました。

 まず違和感を感じたのは、ダリア様の兄上であるダンテ様との婚約を不当に断った日。あれほどいい縁談はなかったのに、彼女は最悪の形で断った。公爵様の善意を利用して。


 小さな違和感が少しずつ、少しずつ溜まっていって…そして中等部に入ってやっと、彼女の真意に気が付けたのです。ああ、この子は王太子殿下と出会いたかっただけだったんだ、って。


 そこからは、ただただ彼女の…リリィ・ホランドの悪行を鏡越しに見ているだけでした。



 こちらの世界がどうなっているのか...ですか。ふふ、気になりますよね。

 身体を奪われてすぐは、自室の大きな丸い鏡に繋がる丸い縁だけでした。あとは、真っ暗な空間。でも、彼女が日々を過ごすことで、連動するようにこちらの世界も広がりました。数日で家の敷地が出来上がって、その後もどんどん広がって。彼女が行ったことあるところには、徒歩ならどこでも行けます。...まあ、今日徒歩以外でも移動できることが分かったんですけど。ダリア様のおかげですね!



 こちらの世界は、現実とリンクしてます。彼女が新しいドレスを買えば、こちらの私の部屋にその新しいドレスが増える。今、私はダリア様の部屋にいるから、ダリア様の衣装棚を自由に漁れる...その衣装棚には当然、現実と同じようにドレスがしまわれているため、私はダリア様の素敵なドレスを着ることができているんです!

 ふふ、身体を奪われた日のドレスしか着れないとかではなかったのが、不幸中の幸いですね。ダリア様の前に、裸で現れないといけないところでした。

 ...はしたないですね、ごめんなさい!人に見られない生活を送ってると、どうしても言葉遣いとか諸々、気を遣わなくなっちゃって...。



 はい。こちらの世界にも本はあります。基本暇なのもあって、本を読むことで色々な知識をつけました。あと、鏡からだいたい彼女の授業を見ることができたので、そういう点ではあまり困っていません。社交ダンスを練習する相手がいない、というだけですね。

 社交ダンス...夢だったんです。デビュタントで...お父さんと踊ろうねって、約束してたんですけど。本当は...お母様だけにしか教えてなかったんですけど、初めての正式な社交ダンスは...素敵な婚約者と、踊ってみたかった...。

 ...あは、湿っぽくなっちゃいました、すみません。...無理しないでって、そんなぁ...私、無理なんかしてないです。本当に。

 もう、自分の身体を取り戻したいとか思ってないんです。取り戻せるとも思ってない。だって...ね?戻れたところで、私は「嘘つきのリリィ・ホランド」のままですから。

 鏡の中に閉じ込められてました、なんて、きっと誰にも信じてもらえない。私の悪評は、もう両親にも受け入れられつつあります。ずっと信じてくれてたのに...さすがにもう、否定しきれない状況ですから。学園を卒業したら、もう今みたいな好き勝手は許されない。それどころか、過去の好き勝手が原因で追い込まれるに決まってる。彼女だって、それを分かっていると思うんです。なのに、やめてくれない...。



 巷の演劇、見たことありますか?私、稽古場に忍び込んで見ちゃいました。最後、悪役令嬢は、父親に修道女として生涯働くように命じられるんです。その結末を知って、やっと身体を取り戻した後のことが考えられました。

 来るかどうか分からない未来の話なんですけどね。私、もし身体が返ってきたら、修道女になろうと思ってるんです。家族とは縁を切って、私の悪評から少しでも守りたいんです。



 私も、悪役令嬢だから。


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