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元悪役令嬢は、決意する


「修道院…その考えは、ありかもしれない。」



「ダリア様!?そ、それは確かに、処刑などに比べたら幾分マシではありますが…私に修道院に入れと仰るのですか?きっとユリ―は修道院に入れられたら、私に身体を返してきます!それはなんとなく分かるのです!」



「だからこそ、よ。処罰の一環として修道院に入れられる貴族は、監視と制約のもと生活することになる。ユリ―はもう、好き勝手することはできなくなる。今一番の問題は、あの偽物が、リスクを踏まえたうえで行動をしている可能性があるということ。ただの考え無しだと思っていたけれど、今日の様子から見るとそうも思えない。…リリィ・ホランドがどんな結末を迎えることを、彼女は望んでいるのか…それが分からない今、最も避けるべきは今朝述べたような重罰よ。」



「でも、それでも私は、修道院には行きたくありません…!だって私、今まで何も楽しい生活を送れていない。女の子たちの楽しみを、私は全く知らないまま修道女になるなんて…それならもういっそ、処刑のほうがマシだわ…。」



「元気を出して、リリィ。このままいけば、私は未来の王妃。修道院にいる貴女を、侍女として召喚させることだってできる。でも、処刑や無期懲役なんて大きな処罰の結果を覆すことはできないわ。だからお願い、処刑の方がいいなんて言わないで。」



「ダリア様を貶めた女が、ダリア様の侍女に?そんなの、周囲が許すはずありません。…私だって、許せません。罪人を許す王妃だと、ダリア様の評判に差しさわりが出るかもしれないのに……もし叶うなら、私だって、本当は…。」




 手で顔を覆い、項垂れるリリィ。彼女の柔らかな雰囲気とぴったりなアイボリーの髪が、ハラハラと肩から垂れている。綺麗にまっすぐ切りそろえられているように見える、ストレートで滑らかなその髪は、よく見ると毛先がばらばらだ。きっと、自分で髪を切ってきたのだろう。

 でも私には、プロによって切られた現実のリリィ・ホランドの髪より、この不器用ながらに切りそろえられたアイボリーの方が、とても美しく思えるのだ。




「ねぇ、リリィ。ごめんなさい。貴女の気持ちをちゃんと考えられていなかった。そうよね、ずっと縛られて生きてきたのだもの。鎖が絡んだまま生きる、その苦しみを私はちゃんと分かってあげられていなかったわ。私、約束するわ。パーティーの日、必ずその日に全て終わらせる。」



「でも、ユリ―が何かをやらかすと踏んで、パーティーで解決できるかもしれないという話でしたよね?ユリ―が今のように大人しいままなら、私たちはユリ―に何もできない。それこそ、今までのダリア様に行ったことに対しての処罰くらいです。それでは結局、修道院に私の身体は送られる…。」



「いいえ、リリィ・ホランドは処罰させないわ。私、ちゃんと策を練っているの。だから、信じてほしい。」



「ダリア様…ダリア様、私、貴女と出会って新しい願いができたのです。さっきダリア様が仰っていたように、私はダリア様の侍女になりたいのです。私を救おうとしてくださった貴女に、私の心はすでに救われたのです。だから私は、正々堂々と貴女を支えられる立場になりたい…。」



「そうよ、貴女を救うと決めたのは私。私自身が決めたのだから、必ず救いきってみせる。貴女とともに王城で過ごせる日を、私は必ず掴んで見せるわ。言ったでしょう?私、中途半端が大嫌いなの。」




 まるで、子供の用に泣きじゃくるリリィの頭を撫でてあげられないことが、とてももどかしかった。せめてこの気持ちが届いてほしいと、鏡に手を添える。

 この子を救う。神様はきっと、その役割を担えるのは私だけだと思ったからあのお告げをくれたのだ。偽物が固執しているであろう対象は、この私。つまり、偽物を一番動揺させることができるのは私。神様はきっとそれを分かっている。

 ならば、利用してやろう。偽物が抱える私への感情を、すべて。



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