おしゃべりという名の質疑応答
「確かにここは人が来なさそうな場所だね」
「...」
「そんなに警戒しないでよ。あ、いや人がいないとこに二人きりは警戒したほうがいいのか。ごめんごめん」
一人で勝手に色々話している紅前を前に、私は一言も発せられずに居た。
聞きたいことが多すぎて何から聞けばいいのか分からなくなる、という現象は現実にもあるようだ。
私は紅前が言った通り人が滅多に来ない教室に案内した。
この教室には使われなくなったイスや机が無造作に置かれている。
私は椅子に、紅前は私の正面にある机に座った。
見降ろされているようで少し居心地が悪い。
それでも私は言われた通りにやるしかなかった。まるで紅前の手の上で転がされているように感じてしまう。
「さて。まずは城沢。君の質問に一つ答えるよ。俺はおしゃべりが好きだからね。自分本位の会話はしないようにしてあげるんだ」
ふと気づくと紅前は目をつむっていた。
私が何から聞けばいいのか迷っているのを見破られたようだ。
(何を考えているのかを聴いたんだ)
私は一息おいてゆっくりと口を開いた
「紅前は、目をつむらないと聴くことに関する能力が使えないの?」
私が聞くと紅前は一瞬ぽかんとした後、笑い始めた。
驚いている私をよそに紅前は暫く笑っていた。
そんなにおかしいことを聞いてしまったのだろうか。
「いやあごめんごめん」
しばらく笑った紅前は目元に浮かべていた涙をぬぐった。
(そんなツボに入るようなことを聞いたつもりはないんだけど…)
「まさかそんな質問をされるなんて思っていなくて思わず笑ってしまったんだ」
「聞きたいことを聞いただけなんだけど」
「うん。わかってる。ただ俺は『心の声が聞こえるの?』みたいなことを予想していたんだよ。というか大体がそう聞いてくるからね。俺は城沢をなめていたみたいだ」
「は、はあ」
「で君の質問に対する答えだけど、NOだよ」
「!!」
「さて次は俺から城沢に一つ質問させてもらうね」
(げっ、一つだけ答えてくれるのか有難いとか思ったのに紅前も質問してくるなんて)
「おーい。聞こえてるよ~」
ひらひらと手を振る紅前。
いつの間にか紅前は目を瞑っていた。
また心が読まれた。いや、聞かれたというべきか。
「…いいよ。答えられる範囲でなら答える」
「助かるよ。じゃあ、そうだな…」
紅前は少し考える素振りを見せた。顎に手を添えまるでうーんと言っているかのような姿勢で
所謂考える人のような、そんな姿勢をとった。そして閃いたようで足を組みなおす。
「城沢はなんで視えてるの?」




